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想像を超えていく生徒達6

今回の生徒は私にゆったり長い目で接する姿勢を教えてくれた生徒です。
高校3年間ずっと彼女のクラス担任でした。高1の時は、勉強は可もなく不可もなく。明るく交友関係も広く、高校生活を謳歌している感じの生徒でした。進級後も、高3まではそんな感じだったと思います。

ところが、高3の1学期期末考査くらいで、ぷつっと学校に来られなくなりました。朝起きられないとか、人間関係に悩んでいるとか、進路に悩んでいるとか、全然そういうことではなく、ただとにかく学校に行きたくない、そうです。

初めての担任ということもあり、こういう生徒に対してどのように接するべきかわかっておらず、とても困りました。今振り返れば、保護者としか話していなかったので、電話口で彼女に代わってもらって少しでも直接話しておけばよかったです。

当時、お母さんも理由が全くないなかでの登校拒否で、代わりに何か(バイトとか非行とか)をやるわけでもなかったので、娘が何を求めているのかもわからない、という感じでした。
一度、無理やり学校に連れて行こうとしたら、どこかへ行ってしまったこともあり、強く登校を促すことも怖い、という具合。

そうなったら、こちらとしては打つ手なし、と思っていたので「ま、まだしばらく休んでも出席日数は問題ないので、しばらく様子見ましょう。成績は、もう無理でしょうから、とりあえず考えないことにしましょう。ひとまず、生きてますし笑」とお母さんの不安を少しでも軽減することがせいぜいでした。

その後、出席日数ぎりっぎりになって、もうこれ以上休んだら、本当に打つ手なしです、となったら、ふらーっと学校に来てそこからは休まずに登校しました。成績はもちろん目も当てられませんが、卒業には差し支えない。
高3なので進路選択もあったのですが、行きたい学校もやりたいこともないのに無理に選んでもしょうがないでしょ。ということで、就職関係の予備校に在籍することになったはず。ま、生きていますし笑

その後、1年間の浪人(?)期間を経て、無事に就職。なんかよくわからないけど、英語を使った事務職についているようです。給料もそれなりだし、職場環境や人間関係もいいんだとか。

そんな彼女は卒業後の飲み会などには、わりと頻繁に参加していて、「よく来るねー」というと、「あの時、急かさないでいてくれた先生にはマジで感謝している。飲み会に来るのは当時の恩返しだ。」みたいなことを言ってくれました。飲み会が恩返しってなんだ?とも思いますが、私が唯一選ぶことのできた「先延ばし」という逃げの一手を非常に好意的に解釈してくれています笑

当時の八方ふさがりの状態から、あれよあれよと自分の進路を切り開いていったバイタリティには感服です。
彼女のおかげで、その後の担任業務で行き詰った生徒に出会っても、「まあ、まだ生きてるし、なんとかなるっしょ。いけるいける。ゆっくりあれこれやってこーよ。」という頼りないゆるーい声掛けができる心のゆとりができました。

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