ジグソー法
教科書の内容だけではなんとなく物足りない。関連した最近の話題なども扱いたいけど授業時間に余裕がない。文章を読みっぱなしにさせたくない。などなど、別にこのままでもいいんだけどちょっとパンチが足りないんだよな、という時にもおすすめの教授法。ジグソーパズルのピースを生徒それぞれが持ち寄り、一枚のパズルを完成させるような手法です。
1 目的
私のジグソー法利用の主たる目的は、短時間で複数の情報に取り組んでもらい、生徒が自分の考えを持ったり単純に知識を増やしたりすることです。例えば、バイオミミクリー(生物模倣)を扱う教科書単元があり、教科書には例が3つほど紹介されています(新幹線の鼻先など)。これを読むだけでもまあまあ面白いですが、もっと小さい発明や日常的な発明(ヨーグルトの蓋など)を示すことで、バイオミミクリーをもっと身近なものにしたい。ひいては、事例だけでなくその理念なども理解してもらいたい、という具合です。
2 ジグソー法とは
一つの長い文章を分割し、それぞれの担当者が読み取った情報を持ち寄り、他者と協力することで全体を理解する方法。学びあい・教えあいなどの共同学習を中核に据える。
私が実施したのは「一つの長い文章」ではなく、「複数の短い文章」です。関連する複数の情報を統合することで、自分の理解を深めたり、自分の意見を支える事例を学んでほしいと思ったからです。これは東大が提唱する知識構成型ジグソー法(CoREF)と通ずるところがあるかもしれません(CoREFについては現在勉強中なので詳細は割愛)。
ざっくりいうと、それぞれ違うものを読んで、情報を持ち寄り、みんなで課題解決しよう!という手法です。全員同じ教科書を読み(=同じ情報を持ち)、教師からの説明を聞いたり発問に答えるといった従来のやり方とはかなり違うように感じます。
3 準備
マテリアル(教材)を準備します。教科書マニュアルなどを利用するのもありです。ネット記事やYouTube、TEDなどを一部文字起し(orコピペ)するのもあり。オーセンティックなものは自分の生徒には難しいな、という場合は自分で作成するのもありだし、日本語で作成してDeepLなどの自動翻訳もあり。(ネイティブチェックはALTにお願いしたいところです。)要は生徒に取り組んでもらいたいものならなんでもオッケーというゆるやかな気持ちで選択・作成しています。
実践報告では4種類用意することが多いように感じますが、数も自由。私はほとんどの場合3種類用意します。理由は4種類準備は大変なのと、最終的には全員に全て読んでもらいたいので、4種類だと授業時間も厳しいため。
4 授業実践
ここでは高校2年生に実施した内容を紹介します。英語コミュニケーションの教科書でiPS細胞(というか山中教授中心)を扱いました。せっかくなのでiPS細胞の使用用途(今後の可能性も含む)や倫理的問題について知っておくことは悪くないと思い、ジグソー法を実施しました。
iPS細胞の研究室という本が図書館にあったのでその内容を一部引用しながら3種類の文章を自作しました。内容は①絶滅した生物(マンモスなど)も蘇る?、②絶滅危惧種(サイなど)の遺伝子保護、③移植用の臓器を豚の体内で育てる、といったもので、それぞれ130語程度の短いもの。
授業では生徒を3人一組にします(便宜上A,B,Cさんとします)。Aさんは①、Bさんは②、Cさんは③の文章の概要を残りの2人に極々短い時間(30秒程度)で伝えられるように3分程度読みます。【個別学習①】
個別学習では今一つ自信がない生徒もいるため、残りの2人に伝える前に同じ文章を読んだ人と情報交換を行います。【エキスパート】
その後、自信をもって残りの2人に重要な情報を伝えます。【ジグソー活動】
情報交換後、細部まで自力で読み取るために2分×2セットを別途実施し、まだ読んでいない文章を読みます。この際、事前に概要はわかっているので【個別学習①】よりも気持ち短い時間設定にしました。【個別学習②】
ここで終わっても構わないのですが、せっかくいろいろなiPS細胞の可能性や倫理的問題を把握したので、英作文という形でまとめてもらいました。iPS細胞のことをほとんど知らない人に特徴や問題をまとめて説明しなさい、といった感じです。
5 効果と限界
当初の目的の1つである「関連した最近の話題なども扱いたいけど授業時間に余裕がない。」は十分に達成できました。生徒たちも「マンモスがいけるなら恐竜もいけるんじゃない?」など休み時間まで自分たちの空想の世界に浸っていました。興味関心は十分喚起できたように感じています。
限界として、授業者である私の力量不足や目的意識の希薄さが主たる原因ですが、授業中の発話はほぼ日本語でした。また、英作文は使用用途と倫理的問題が嚙み合わないものが多くあり、情報が結びつかずに「ただ知っているだけ」に留まってしまいました。
6 まとめ
ジグソー法は初見の情報を生徒自身が理解し、その内容を知らない他者に伝えたり、情報を統合した自分の意見を述べることを促しやすい活動です。話題の「主体的・対話的で深い学び」の一歩としていかがでしょうか。
今回紹介したやり方は授業準備が少し大変な面もありますが、工夫次第で軽減することも可能です(私案については別の記事で今後書きたいと思っています)。
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