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無伴奏ソナタ the Musical

2024/7/27 サンシャイン劇場 

『無伴奏ソナタ』は、キャラメルボックスの演目の中でも、好きな作品のひとつである。1番好きな演目と言ってもいいかもしれない。
 それが、今回はミュージカルとして再演。
 最初に思ったのは、“なんて残酷な”、と。
 だって、そうだろう?それまでの人生において、音楽を作ることしか与えられていなかった男から、音楽を取り上げていく物語なのだから。
 でも、半面、音楽が根本にある物語だから、ミュージカルとも相性がいいのかとも思ったりもした。

 今回の主役・クリスは、平間壮一さん。多田さんじゃないんだとは思ったものの、ミュージカルだしね、世代交代もあるよねと納得。
 そして、ウォッチャー役に多田直人さん!これは、家族と“因果が巡ってるよ!”と配役を見てひとしきり盛り上がりましたですよ。

 で、実際、見てみた感想。今回のミュージカルver.も素晴らしかったです。
 冒頭のクリスのキラッキラな音楽に満ち溢れた空間。ストーリーを知っている身としては、これから先、彼が巡る人生を思うとその落差に、切なくなりもしましたが。
 今までの上演では気にしていなかったけれど(作中で語られてなかったかもだけれど)、そうか、クリス、30歳を超えていたのか。今まで20代前半のつもりで見ていたんだよな。
 30年もの間、自分の音楽を作ることだけのために純粋培養されていた人間から、たった1回の過ちのため、その人生そのものと言っていい音楽を取り上げるなんて、なんて残酷な。
 その後、紆余曲折あって、ウォッチャーとして40年近くを過ごし、お役御免となってから、どことなりと好きなところに行っていいよと言われても、本人も70歳。知人だって生きているかどうか。本当にひどい話だ。

 でもね、クリスが作った“シュガーの歌”は、きっと、人々に歌い継がれていくんだろうね。そして、彼がかつて作った曲を知っている人の中には、この曲の中にクリスの面影を見出す者もいるのかもしれない。

 息子の将来を思って、泣く泣くクリスを手放した彼のお母さん。息子はメイカーとして曲を作り続けていると、最期の瞬間まで、彼女の真実はそうであったらいいなと、ラスト、そんなことを思いました。


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