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夏の宿題

草いきれがする なだらかな参道の途中、
彼女は突然くちぶえを吹きだした。
背中の汗が気になり出していた僕は、
ふいに青空を見上げた。

木々の若葉をそよがせる無数のやさしい指だ。
肌に心地よくなじむ風。
どうしよう、この瞬間を切り取りたい。
くちぶえが夏を連れてきた。

彼女の柔らかな唇が、
くちぶえを吹けない僕のかわりに、
二度とは訪れない景色を連れてきた。

僕が彼女にしてやれることってなんだろう?
途方もない宿題を抱えたくちぶえのやつ、
ふたりのはじめての夏を連れて来た。


初稿:2003/09/15
Ⓒ2022 Akira Yoshiyama and AKIRA


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