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夢と手帳

あなたのことだけを記した手帳なのでした
まなざしがとても柔らかなあなたについて
夜毎の夢の中で大事にしていたはずだったのに
とうとう失くしてしまったようです

どこで落としたのか見当もつかず
今覚えているのは
天王寺で逢う約束を交わしあった事だけ
けれども、あなたにまた逢える日が思い出せない

曇天からおもたい雪が降ってきました
あなたはどんな顔で、どんな声だったのでしょう
なぜこんなにも過去の幸福感だけがのこされたのか
狂おしいほどに、絶望の涙は溢れてくるのに

手帳はもう二度と見つからないでしょう
だからこそ、潜み続ける夢でもあるのでしょう


初稿:2006/05/27
Ⓒ2022 Akira Yoshiyama and AKIRA

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