COIN~コイン~ 2-3 樹海の船旅
COIN~コイン~ 2-3 樹海の船旅
著:増長 晃
体が揺れていた。体が軽くなったり重くなったりしている。精霊酔いに似た感覚だ。
体を起こそうといたが、うまくいかない。自分の体の輪郭が曖昧だ。
「気が付いたか?」
男の声がする。“他者”だ。他者の存在は自己を明確にし、失った自分の輪郭を取り戻した。体の幹から指先まで、意識が血のように通った。名前はモールス。五体満足。意識も体も問題ない。
モールスは体を起こし、周囲を見た。暗く、何やら揺れている。見渡す限り広大な水面