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五輪競技に関する雑談 〜バレーボール編〜

先日、男女バレーボール日本代表でオリンピックに向けた中国との強化試合が行われました。
世界ランキング1位の女子中国チームは流石に強く、日本も健闘しましたが正直完敗という感じでした。男子は日本のほうが世界ランキングが上位という実力差通り、2戦して2勝と快勝しました。

スポーツマーケッターの小生としましては、今年も含め今後の日本男子チームに注目していて、その背景と可能性、状況分析を語らせて貰います。


そもそもバレーボールは1949年から世界大会が始まりました。女子は"東洋の魔女"に代表されるように、世界大会や東京オリンピックでの金メダルの獲得など輝かしい成績を上げました。一方の男子はあまり成績も良くなく、東京オリンピック3位、メキシコ2位となかなか世界1位になれませんでした。

しかし1972年、男子バレーに転機が訪れます。「ミュンヘンへの道」と題したアニメがミュンヘンオリンピック前に放送され、「中村のドライブサーブ」「猫田がトス」「森田の1人時間差」など各選手の必殺技をみんなが知っている。それこそ1970年代後半のテレビのモノマネでも演技されたことは、私と同年代の人であれば記憶に残っていることでしょう。
この時に現在のようなスポーツビジネスの概念を用いてマーケティング活動を構築したとしたら、今のサッカー日本代表マーケティングよりも価値創造が容易に組み立てることができます。かつ最終的に金メダルで終わったという点から、カナリのキラーコンテンツになったことでしょう。

考えられるのは
・日本代表のチームスポンサー呼称権
・チーム肖像権
・ウェア契約、用具契約
・マーチャンダイジング

本当に面白い事ができたのではないかと思ってしまいます。

しかし当時、男子バレーは継続して結果を残すことができず、またテレビ放送的にもサイドアウト制で時間が読めないため扱いづらく露出も減少していったため、人気が衰退してしまいました。
一方女子は1984年ロスオリンピックを境に世界の上位から転落してしまいましたが、2012年ロンドンオリンピックで約30年ぶりにメダルを獲得。選手の世代交代も上手くいき、また時間が読みやすく中継と相性の良いラリーポイント制が採用されるルール変更もあり、近年テレビの視聴率は上昇の傾向を示しています。

これは裏話ですが、近年の日本女子バレーの復活劇に、実は広告代理店も一役買っています。
日本バレーボール協会(JVA)と一緒になって、次のような要請を国際バレーボール連盟(FIVB)に対して行い、結果日本に有利な大会方式への変更を実現しました。

・オリンピック世界最終予選(OQT)女子大会の日本単独開催の条件として、アジア最終予選を兼ねることでオリンピック出場権獲得国数を3プラス1としたこと

具体的に説明すると、OQTにはオリンピックの出場権を獲得していない世界から5ヵ国と、アジア最終予選ということでアジアから3ヵ国が出場します。
アジアでは中国はワールドカップ等で出場権を持っているのでOQTには出場しません。当時の日本のライバルは韓国。
OQTでの出場枠は3ヵ国。それにプラスでアジア枠の1つが追加されます。つまり、8カ国中3位に入れば文句無く出場権獲得となりますが、仮に4位になっても韓国が3位以内であればアジア枠での出場権獲得という、日本に超有利な予選になったということです。

日本にとって有利に戦えるようにという意図がある要請でしたが、日本は当時のキーマンであったFIVB会長のルーベン・アコスタ氏と良好な関係を築いていたこともあり、これらの要請が好意的に受け入れられました。そして要望通りの大会方式が実現し、アテネオリンピックの出場から現在まで競技力の向上に繋がっていきました。
もちろん競技者やスタッフの努力があってのことですが、こういった背景があることを知っておいても良いでしょう。

ここで話を戻しますが、今回の強化試合で私が日本男子チームに可能性を感じたところは選手の技能のUPはもちろんのこと、選手個々のビジュアルの良さもあります。

実はOQTを招致した時もそうでしたが、これまではバレーボール界では『日本のバレーボールは視聴率の女子、興行の男子』と言われていました。男子は女子よりも放送される機会が少なかったり、大会自体が海外で開催されていることも多かったため、放送されても深夜、ということもありました。事実、OQTの女子は日本開催でしたが、男子は欧州で人気が高いということもあり日本では開催されませんでした。更に競技面で体格差も甚だしく、日本男子は正直、世界では太刀打ちできない感が否めませんでした。

しかし先日の強化試合、清水選手や柳田選手、石川選手など実績のある選手に加え、西田選手や高橋選手といった20歳前後の若い選手の台頭が目立ちました。若くして代表選手として活躍、かつルックスも良いとしたらもうマーケティング価値が上がるのは間違いなし!と思いながら観戦していました。

とにかく若い!
これは非常に魅力的で、東京ではまだ中心になれずとも次回のパリ五輪では何か起こしてくれるのではないかと期待せずにはいられません。

実はフィギュアスケートの羽生結弦選手の時もそうでした。ソチオリンピックではまだ若いので、上手くいったら銅メダル…まぁ平昌オリンピックを目指してマーケティング価値を上げていこう…なんて当時の電通時代に話しあっていました。事実、ANAとの所属契約の交渉で本人とお母さんを連れてプレゼンした時にも、ソチより平昌を見据えて…といった話をしました。

だからこそ、マン万が一、嬉しい悲鳴で日本男子チームがメダルを獲得することができたら…それこそミュンヘンへの道ではありませんがパリ、ロスに向けてキラーコンテンツになること間違いなし!と考えてしまいます。

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