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ビッグスクーターというガラパゴス現象を振り返る

ハーレーから多頭飼いになりました(笑)なんと…懐かしの初代フォルツァを買ったよ。

西暦2000年前後、かつて日本に存在したビッグスクーターブーム。諸説&複合要因があるが、渋谷や裏原宿系の「早い」お兄さんたちがフュージョンやモタードといったバイクにラフに乗っていたこと。(スケーター系のステッカーが貼ってあったりして、それはそれはクッソカッコよかったのだ)これに全国の若者達が憧れを抱いたのが発端のひとつであると、私は捉えている。当時近郊のベッドタウンから都内の大学に通う貧乏学生だった僕も、渋谷〜三茶から246あたりを爆走するその姿に強烈な憧れを抱いていた。

ブームとその終焉

ビッグスクーターのことを思う時、もうひとつ誰もが頭をよぎるのが「AKIRAのあれ」である。

あのバイク

誰しも一度は憧れたことがある、ネオTOKYOを疾走する真紅の電動バイク。ビッグスクーターの登場で、かのローアンドロングのスタイルを実現できる素体がついに手に入った、と思った若者は多いはずだ。もしくは世田谷ベースで所さんがスクーターをカスタムしたタイミングとも重なる。うむ、これもものすごくカッコいい。

このバイク

元ホンダのデザイナーにしてハイパーデザイナー、PDC_DESIGNWORKSのやまざきたかゆきさんがフュージョンで裏原をかっ飛んでいたのも、この頃だ。

ー当時僕が乗っていたフュージョンが裏原界隈で神と崇められていて、見る人見る人から声を掛けられました。
ーマッドブラックにピンストライプのデザインで、結局この仕様の量産車が出ました。

https://cardesign.jp/magazine/yamazakitakayuki.html


地方出身の僕が憧れた、この感じ

しかし、これは都内で、イメージ的に環七の内側あたりやそれこそ渋谷〜裏原に停まっているからこそ、という側面が多分にあった。ビッグスクーターのムーブメントは環七環八を超え多摩川荒川を超え、都内から距離を遠ざかり日本の地方隅々に伝播するにつれ、元から日本に根付いていたヤンキーカルチャー、バニングカルチャーと結合し化学反応を起こし、独自の方向性へと突き進んでいく。例えば、こうだ。

https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=k6x-qwt1sPw

もう、何が何だか(汗)。決してAIが画像生成を失敗したわけではない。確かに、車高は低く、長くなっている。積載スペースが豊富にあるので何故かカーオーディオを搭載し、ウーファーで浜崎あゆみを盛大に鳴らしてしまうことができる。夜は…LEDで光る(笑)

そして痛感するのだ。ここまでやってしまうと、地元や仲間ウチでは最高にイケてるとイキリ散らしてたはずなのに、あれだけ憧れていた渋谷、裏原宿、表参道あたりにがんばって遠征していったとき、ものすごく居場所なく、ただただ恥ずかしいだけという事実に。有名な曲のフレーズあったなぁ。「地元じゃ負け知らず」。

渋谷の「早い」お兄さん達への憧れから始まったビッグスクーターブームは、このスタイルに行き着いた頃に終焉を迎えたとも言えよう。2024年時点では海外展開仕様を強く意識する150ccのバイクが主流となり、かつての250ccビッグスクーターはガラパゴス化し、その市場にかつての勢いはあまり感じられない。

あれだけ街を走っていたカスタムビッグスクーター、どこに行っちゃったんだろうね。

フォルツァを見ていこう

さて、MF06である。実は今、一時的にハーレーを手放しており「次」を探してもらっている。足がないのも不便なので「安いスクーターでも買うか」と思ってしまったのが運のツキ。ふと浮かんできたのはフォルツァだった。

子供の頃実現できなかった事は、生涯に渡ってその人を縛るという。マイケルジャクソンに於けるネバーランドが、私にとってのそれだ。既に子供ではないものの学生時代、その渋谷〜裏原界隈のお兄さん達に憧れていた僕にとって、ビッグスクーターなるものに一度乗ってみたい想いが燻っていたんだな、と今更ながら実感する。

当時市場的にはYAMAHAのマジェスティが爆発的に売れており、これに追いつけ追い越せと他の2輪メーカーがしのぎを削る現象となっていた。ホンダが市場に投下したのが、このMF06フォルツァである。

ベースとなったのは、「フォーサイト」という極めてプレーンな通勤快速仕様スクーター。これにホンダは…S2000や当時のSS、CBR系のデザインを落とし込んだ「皮」を与えたのである…。

時に、西暦2000年。初代フォルツァ発売。
読み応えのあるプレスリリースをリンクしておきましょう。

ー純粋に『かっこいい』と感じるスポーティーで斬新なスタイルの具現化を目指し、ユーザーが求める新しい250ccスクーターのカタチを模索しながら試行錯誤を繰り返しました。そしてその結果が、昨年開催された東京モーターショーにて、フォルツァのプロトタイプである「NSS250」が、会場内のアンケートにて、圧倒的支持を集めるという事実に集約されましたー

前年1999年のモーターショウのコメントである。この年ホンダは「不夜城」といったぶっとんだコンセプトカーを展示していた記憶が私にもある。そこにフォルツァは居たのだ。小室ファミリーが一世風靡した後。宇多田ヒカルが現れ確実に「次」の世代の息吹が感じられ始めた時代のことだ。

そしてここからは、私が手に入れたフォルツァの写真を交えながら語っていく。写真を見てその美しさを感じて頂きたい。

風を切り裂くような直線的でシャープなボディライン
なだらかに跳ね上がり軽快な走りを表現したリアボディまわり(プレスリリース)
独立したデュアルヘッドライトが個性を主張する
まさにスポーツバイクと見間違う程のフロントフェイス(プレスリリース)

どーよ、この凛々しいお姿。そしてこのグッドコンディション。これが今、底値で買えるのだ。


当時私が惹かれたのは紛れもないこの初代フォルツァだった。唯一無二の顔。遠くから見たら白バイに見えなくもない。他と比べるとやや小ぶりで、適度に引き締まったボディ。いかにもホンダらしい、カッコよさしか存在しない。

フォルツァは2000年のグッドデザイン賞を受賞している。

”デザインを始める当初から様々な方向性のスタイリングを模索していきましたが、最終的に辿り着いた結論は、決して奇をてらわずに純粋にかっこいいと思える形をつくるということでした。そしていままでのスクーターのスタイリングに捕われることなく、まるでフルカウルのスポーツバイクの様なフォルムを表現することに苦心いたしました。これにより、新しい二輪車のスタイリングを創り出すことができたのではないかと自負しております。”
ー開発者のコメントだ。

いざ乗ってみても…素晴らしい。あぁ、ハーレー含む「いわゆるバイク」と比べて、スクーターとはなんと素晴らしい乗り物であろうか。まずその「軽さ」だ。まぁまぁの大きさはあるものの、駐輪場からさっと出してすぐ走り出せる。「ちょっとコンビニに」「ちょっとホームセンターに」気軽に走り出せる軽快感。そして、「モノが積める。」いやまじで笑。OKストアに買い物に行って、キャベツやら牛乳やら、何なら5キロの米だって積んで帰ってくることができる。

しかしながらこの「スクーター」であるが故の特性が実はもろはのつるぎであり…悲しいかな、様々な市場の声に反応した結果、2代目以降のフォルツァは全体的に肥大化してしまう。2代目以降は「ゴルフクラブが積める」「350mlx24本のビールケースが積める」「キーレス」という(…軽自動車かよ)恐ろしいスペックを獲得した代わりに、初代が持っていたシャープな印象は薄れていったと感じる。

故に、手に入れるなら何がなんでも初代と心に決めていた。

当然ながらいい歳でもありますで、カスタムはあまりやりません。純正を基本にしつつ、できるだけ綺麗な状態で乗りたいものです。いじるとしても、いつでも戻そうと思えばフルノーマルに戻せる状態でありたいのです。先のビッグスクーターブームでゴリゴリにいじり倒されてしまった劣悪な個体が圧倒的に多い上、発売から既に24年。そんな中、無改造の箱入り娘な一台を探し出すのは簡単ではなかった。

が。諦めずに探せばご縁というものは出てくるもので…その一台は静岡にあった。新幹線に乗り、待ち合わせ場所で出会ったそれは、とても24年前のプロダクトとは思えない良好なコンディションを保っていた。ワンオーナー、ほぼフルノーマル、メンテナンス記録もきちんとあって、3万5000キロちょい。外装以上に機構系の状態が素晴らしい。フロントフォーク含め3万キロ時点で各種オーバーホールを行ったという、オーナーさんが大切に乗ってきたことが伺える車体だ。今どの中古車サイトに出ている同型機よりもグッドコンディションの1台に違いない。即決。

ぴっかぴか⭐︎

書類を交わし、自走で難なく帰ってくることができた。早速陸運局でナンバーを変更し、正真正銘自分のものとなったときの気持ちはやはり格別だ。近所のバイク屋さんに持ち込み、個人的にやりたいことを相談する。前後タイヤ交換、油脂類全交換、各種調整・点検までをまずは実施して頂く。「この世代のフォルツァはもう部販で純正パーツが出ないものも多いから、せめて数世代新しいのにすればよかったかもですねぇ…。」と、バイクやさんにコメントを頂く。全くその通りだと思うのだが…いやいや!何度も繰り返すが僕はこの初代でなければイヤなのだ。

ブレーキパッド残量十分、プラグもエンジンオイルもベルト〜クラッチまわりも、極めて綺麗。外装だけではない、駆動系、機構コンディションも良好だ。本当に前オーナーさんは大切にされていたのだろう。(というか…静岡の中でもだいぶ車社会なエリアと思しき地域のようで、4輪メインの生活でフォルツァにはそもそもあまり乗っていなかったのかもしれない)

そしてあらかじめ手に入れておいたフロントカウル一式を自力で交換する。恐ろしいほどにツヤッツヤな中古品と、デッドストック新品のスクリーンが手に入ったのだ。そしてバラして骨格まで到達すると分かるのだが、バイクというのはハーレーもスクーターも結局自転車に様々な機構を架装した乗り物なんですよね。面白い。

これからどこまで純正コンディションを復活させていくことができるか楽しみだぜい⭐︎

豪華(!)装備の数々

この時代のビッグスクーターには、昨今主流の150ccスクーターにはあまり存在しない独自の豪華装備が存在する。例えばうちのフォルツァには豪華2連のスピードメーターとタコメーターと、左右には電圧計とガソリン残量計が存在する。通勤・通学に最適な時計までついている。

250ccスクータークラス初のタコメーター

……お分かりいただけただろうか?

そう、「スクーターなのにタコメーターがある」のだ(笑)。

ここ、ホンダの開発技術者の間では絶対に議論になったであろうポイントだ。説明するまでもないが無段階変速のスクーターにはタコメーターなぞ不要。なんなら変速を伴うハーレーだってハナっからタコメーターが存在しないモデルも多数あるのよ。。。しかしながら!ゴージャス感と他社に勝つためには必要なんだ!という営業系メンバーからのゴリ押しで搭載された…のだろうな。

なんなら「サイドブレーキ」まである。

「坂道での停止、信号や料金所などで威力を発揮します(プレスリリース)」
とあるが…果たして…ねぇ?

まとめ

どれだけ精悍なマスクをしていようが、スクーターは生活の「足」でありシティコミューターという側面が強い。ホンダは、こうしたコミューターを「10万キロノーメンテで乗れるクオリティ」を目指して開発・製造しているという。

恥ずかしながら、かくいう私がかつて人生で初めて手に入れた原付バイクは、2ストモデルであったことも逆影響してしまいメンテナンスに持ち込んだことがほぼなかった。2ストオイルさえ定期的に補充していれば、全ての潤滑油が賄えていたと思い込んでいたし、ナンなら2ストオイルを多少欠かしたとして走っちゃうのが日本車なのよね。。。
もちろん大切にメンテして乗っていくつもりだが、ホンダのクオリティを楽しみながら、この辺りの設計理念がどうなっているか?などにも触れて行きたいと思います。

リアライト周りは特にS2000ぽい。んーカッコいい

乞うご期待。








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