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辺戸岬へ

 沖縄自動車道北の終点・許田からはずっと一般道が続いている。沖縄県最北端の岬・辺戸岬までは50km以上,約1時間かけて進んでいく。古宇利島へ向かう人たちが島を目指して左折していくと,レンタカーの姿はほぼ見られない。そもそも車の数が減るのだ。制限速度50km/hの道をのんびり進んでいく。

 左側にはずっと海。右側には山,集落。たまにバス停がある。釣りをしている人も見かける。歩いている人はほとんどいない。地元の軽トラックは制限速度よりもかなり遅い。渋滞になる。
 道路の真ん中に何やら赤黒い塊が落ちていた。通過する時にわかった。きっと動物の死骸だ。もう原型がわからない。肉塊と言えるものだった。

 辺土名商店街はいつも寂しい雰囲気がある。それでも人の往来が全くないわけではない。むしろこれだけ空港から離れた場所であるにもかかわらず,元気さが垣間見られる。
 商店街を抜けてしばらくするともう何もない道が続く。左には海,右には山,正面にはたまにトンネル。法定速度をしっかり守って走ってみる。気がついたら後ろが少し詰まっていた。たまにはいいだろう。

 今日はとても天気が良い。与論島がはっきりと見える。あそこは鹿児島県なのだ。
 岸壁に打ち付ける波はいつでも美しい。天候に関わらず美しい。それでも色は違う。海のことはよくわからないけど,波は穏やかな方なのだろう。
 私は岬から眺める海が好きだ。目の前に広がる海は,穏やかに全てを包み込んでくれそうな顔をしている。ふと下を見ると,岸壁に向けてその暴力性をむき出しにした,荒々しい動きが何度も打ちつけている。この2面性が好きなようだ。

 帰り道は少し横にそれて墓地に向かう。人に会ったことはない。不法投棄の間から浜に出られる。あまり知られていない,辺戸岬を下から見られるポイントである。

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