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ちっぽけな存在

 気がつけば小さなことで,大きなことで,日々悩んでいる。どうせそんな悩みの大小など関係ないぐらい,世界は問題で満ちている。
 成田からニューヨークへ行った時。飛行機に乗っていた時間は13時間。到着してみたら,時計は出発の5分前に戻っていた。
 世界はかなり広い。近所の図書館へ行くのに20分かかる。都内から北海道まではどれぐらいかかるのだろう。海の上も歩けるなら,イギリスまではどれぐらいかかるのだろう。
 飛行機に乗ってしまえば,地球は小さく感じる。13時間は長いけれど,1日の半分ちょっと。それぐらいの時間なら,休まず働き続けたこともある。世界は広くて広大だけど,狭くて小さい。
 ロケットの速度は秒速7kmらしい。家から図書館まで1秒も必要ない。1/7秒ぐらいで行けてしまう。

 人間は生まれて,肺を空気で満たし,臍の緒を切ったらずっと1人だ。受精して着床して,母の体とずっと繋がれていた。1人世界に放たれたら,もう誰かと繋がることはない。
 セックスをして誰かと繋がった気になる。わずかな時間だけど,一つになっているのかもしれない。お互い考えることは違うし,束の間の快楽を味わうだけで,すぐに1人に戻される。
 あえてずっと繋がっているものと言ったら,大地だろうか。飛行機に乗ったら離れるし,泳いでも離れる。タワーマンションの上の方なんて,ずっと離れている。あんなところの何がいいんだか。

 地球規模で考えればぼくの悩みなんて。宇宙規模で考えれば,地球は小さい小さい。ぼくたちの日常生活で細胞が見えないように,宇宙空間で漂う巨大な星々からしたら,地球なんて。人々なんて。
 実は電子はまだ見えていないらしい。でも,そこに電子がないと説明がつかない反応が起きる。だから,ぼくたちは目に見えていなくて,存在を確認していないものを頼りに生きている。きっとそれぞれの人間の存在も,宇宙規模で見たら電子。

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