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憧れの

 彼と初めて会った日のことはあまり覚えていない。きっと沖縄の話と音楽の話をしたんだと思う。彼と私との歳の差は,おそらく40歳ほど。いつもかっこよくて憧れである。
 彼は三線を弾く人だった。彼のバンドのステージを見た。ギターを弾いていたんだ。なんだか変わった形のギター。いつか私も同じギターが欲しいと思った。ギターの知識なんかないから,きっと高いものなんだと思った。だから,いつかもっと給料が良くなってある程度の余裕ができたら,同じ形のギターを買ってやろうと思った。

 あれから何年経っただろうか。10年は経ってないけど,確実に5年以上は経っている。インスタグラムのサジェスチョンはすごいものである。もう忘れかけていたギターが出てきた。生活も変わり,環境も変わり,彼と最後に会ったのは数年前のことになっていた。色々と思い出が蘇ってくるようだった。
 今は当時とは違う。かといって生活に余裕があるわけではない。でも,そのギターを買えないわけでもなかった。生活に対する打撃であることに変わりはないけど,昔よりはましである。思いの外悩んだ。多分3ヶ月ぐらいは悩んだ。それでも,購入することは決まっていたらしい。

 楽しい。面白い。難しいけど。練習していくしかないな。指が痛い。

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