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新型コロナ療養その後~隔離解除から1カ月

 新型コロナウイルスに感染し、発症から10日間の自宅療養を経て、隔離から解除されてから、約1カ月が過ぎた。自宅療養の時期はまだ冬の寒さだったが、今は春の陽気。関東では既に桜が散っている。

 隔離解除までの振り返りは上記で書いたが、その後はどうなったのか書き記しておきたい。

療養終了4週間後に「就業制限通知書」が届く

 3月25日、藤沢市保健所・南保健センターから封書が届いた。中身は「就業制限通知書」という書類である。「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第18条の規定により、次のとおり就業制限の措置を行います」とある。書類の日付は2021年2月19日。つまり、私がPCR検査を行った翌日、「陽性」と診断が下った日である。

 もうとっくの昔に療養が終わり、隔離が解除されたのに、今さら律儀に書類を送付するところがいかにもお役所らしい。

就業制限(業務の範囲) 病原体を保有しなくなるまでの間、次の業務に従事することができません。(1)飲食物の製造、販売、調製又は取り扱いの際に飲食物に直接接触する業務(2)接客業その他の多数の者に接触する業務
就業制限の期間 就業制限をする感染症に係るその病原体を保有しなくなるまでの期間又はその症状が消失するまでの期間

 もう療養期間が終わったので、就業制限は解除されている。それにしても、就業できる業務の範囲が定められているとは知らなかった。逆に言えば、感染症に罹患しても就業できる仕事もあるということだ。今さらながらに、そんなことに気づく。

 この通知内容に違反すると、法第77条第4項の規定により50万円以下の罰金に処せられる。皆さん、ご存知だっただろうか。

 封筒にはもう1枚、文書が入っていた。「患者様の急増に伴い、書類の送付が遅れました。お詫び申し上げます」と書いてある。2月後半は新規感染者数がかなり減って、PCR検査が当日予約で受けられる状態だった。とはいえ、やはり、現場は形式上の書類を送る暇などなかったのだろう。

 通知書は制限の始まりしか記していない。だから、療養の期間についての証明書が必要な場合には、療養終了後に申し出る必要がある。これがまた面倒で、療養先によって証明書の発行元が変わる。自宅療養は藤沢市保健所保健予防課、施設療養(ホテル等)は神奈川県療養サポート窓口、入院した場合は入院した医療機関である。自宅療養の後に入院した場合は、それぞれの窓口に請求する必要がある。

 行政のデジタル化が叫ばれていても、現場はこんなものだ。神奈川県はLINEを活用した発熱外来の予約システムがうまく機能していると思ったが、元々、法律に基づいてシステム化された業務は相変わらずアナログで、保健所の職員が文書を患者一人ひとりに送るという面倒な作業をさせられている。

 前回も書いたが、接触確認アプリcocoaに陽性情報登録を行う際に必要な処分番号は、今もまだ私の下に届いていない。発症から一月以上過ぎているから、既に登録する意味がなくなってしまった。こういう事例は私だけではないはずだ。その一方で、大規模イベントなどでは主催者側がcocoaのインストールを求めてくる。非常に無意味なアプリの神格化が行われていて、気味が悪い。これでは、ただの〝やってる感〟しか得られない。

コロナ後遺症は療養終了後も続く

 私は味覚障害や臭覚障害がなかったのが幸いだ。食べることには苦労しない。療養期間中に続いた倦怠感は徐々に薄まっていった。問題は咳である。発症からずっと毎日、咳に苦しめられている。療養中に比べれば楽になったが、中途半端に空咳が残り、時折激しく咳き込む。

 療養が解除される際、保健所の職員にも相談したが、「長い人は何週間も、何カ月も続く人がいる」という。本当は咳が消えるまで療養を続けたかったが、「それをやったらずっと家を出られなくなる。感染の危険はなくなったので、普通の生活を送って大丈夫」と言われた。

 電車やレストラン、カフェなど、不特定多数が出入りする場所でも、咳は容赦なく出てしまう。周りからは、まるで歩くウイルス兵器がいるかのような顔をされる。それでも、閉じこもっているわけにはいかないから、外に出る。これはなかなか苦痛だ。

 自分自身もコロナ感染前には誤解していたところがあるが、体調や体質、環境によって咳が出てしまう人はどこにでもいる。そのときに飛沫を飛ばさないためにマスクを着用する。ところが、咳をすること自体が害悪のような空気が巷にはある。マスクの着用を義務付ける一方、咳の症状があると入場お断りの施設やイベントは結構多いが、それは本末転倒ではなかろうか。

 とりあえず、市販の薬を飲んで、咳を抑えている。それでも、咳がなくなるわけではない。コロナ後遺症の特効薬はない。自然に治癒を待つしかないのだ。

既成事実の積み重ねは感染防止に効果があるのか

 今も感染経路は分かっていない。発症日は2月17日だが、15日の段階で軽い倦怠感はあった。独り暮らしなので家族からの感染は考えられない。この数カ月、会食もカラオケも行っていない。外食はアクリル板の仕切りがあるか、なくても隣席との距離が十分空いているカウンターばかりだ。

 ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんが「コロナは既成事実の積み重ねだから」と言っていた。施設の入り口で行う検温や手指消毒、イベント時に1席ずつ空席をつくる、ソーシャルディスタンス、アクリル板……数々の感染防止対策がどのくらいの効果があるのかという検証はほとんど見ない。様々な「対策」を積み重ねた結果として、感染者が減っているだけだ。

 いや、感染者が減っているならともかく、今では増えるばかりではないか。従来型のウイルスが変異株に取って代わられて、都市部の感染状況は大きく変化している。私たちが日々行っている対策に、果たしてどのくらいの意味があるのか。

 トイレの手洗い乾燥機は第1波からずっと停止しているが、あれが感染を広げるというエビデンスなど、どこにあるのだろうか。

 既成事実を積み上げて、結果として感染者数が減っていただけで、私たちはエビデンスに基づいた感染防止対策が本当にできているのか、ちゃんとした検証がなされていないような気がする。その典型的な例は、飲食店の夜だけ時短だ。新型コロナウイルスが夜行性ではないことはご存知のことだろう。今年発出した緊急事態宣言では、飲食店にターゲットを絞った時間短縮要請が行われていた。結果、感染者数は確かに減った。だが、因果関係は明らかなのか。政府や自治体はエビデンスに基づく検証を行っているのか。

 自分自身、思い当たる節のない感染を経験して、当たり前のように言われている社会のルールや規範に疑問を持つことが多くなった。

 何が感染防止に効果があって、何が効果がないのか。そこが明確でないまま、既成事実だけ積み重ねて満足していないだろうか。

社会全体が〝自粛警察〟化していないか

 厚生労働省老健局の職員23人が東京・銀座の居酒屋で深夜まで送別会を開いていた問題で、同省は30日、送別会を主催した同局老人保健課の真鍋馨課長(51)を減給1か月(10分の1)の懲戒処分とし、大臣官房付に異動させた。事実上の更迭とみられる。田村厚労相は閣僚給与2か月分を自主返納する。
 残る参加者22人のうち、自治体からの研修生を除く19人を訓告や注意などの処分とした。監督責任を問い、樽見英樹次官を厳重注意、土生栄二老健局長も訓告の処分とした。

 最近、日本国民がみんな激怒している厚生労働省の役人の宴会、そんなに大騒ぎすることなのか。というか、そこが問題なのか?

 もちろん、東京都が飲食店に対して時間短縮要請を行っているときに、23人もの大人数が深夜までバカ騒ぎすることが良いこととは思えない。しかも、感染症対策の要でもある厚労省なら、なおさら怒られるだろう。

 しかし、懲戒処分だの、更迭だの、給与の自主返納だの、あまりにも極端に反応しているのではないか。仮にこの23人の中から感染クラスターが発生していたとしたら、その原因を究明することは必要だろう。だが、今の今まで、そういう情報も出ていない。

 しかも、野党が政府を追及する材料に使っているというのも、違和感しかない。これは政治マターなのか。

 感染経路が不明だった感染経験者の一人として、こういう社会全体での集団リンチがまるで自分に向けられているような気がするのだ。たまたま私は会食にもカラオケにも参加していないから、安全圏で安心できる。だが、もしも宴会に参加して感染したのだとしたら、周りから石を投げられるのであろう。

 それは、どこかおかしいと思う。

 東京や大阪で新規感染者が増えているのは、夜に宴会をしている人がいるからなのだろうか。

 そもそも、感染した事実が責められる社会は正常な社会なのだろうか。まるで社会全体が〝自粛警察〟になったような気味悪さを感じる。

――お店としての感染対策は?
「通常の店よりは広く、動線も大きく取っているので、例えば20名が入る部屋と、15名が入る部屋の間に2mくらいの通路があるので、特に問題はなかったかと思います」
店としては、検温や消毒など基本的な感染対策を徹底しているといいます。

 基本的な感染対策を徹底しているなら、感染者なんて出ないはずだよね。ならば、なぜ時間短縮を求めるの?

 〝夜の街〟が感染のトリガーになっていると話題になったのは、昨年の5~6月頃。第2波の兆しを察知した東京都と新宿区は、歌舞伎町一体で徹底したPCR検査を実施して、感染者の洗い出しを行った。今、繁華街に広がる変異株ウイルスは第2波よりも感染力が強いはずだが、行政がやっているのは時短要請だけ。そして、宴会をやった人たちをつるし上げるだけ。

 そんなんで、感染が収束するわけないよね。


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