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新型コロナ療養戦記~発症前後から療養終了までの振り返り

 週が明けてから、どこか気怠い感覚があった。風邪の予兆だろうかと、不安を感じたものの、発熱も咳もない。ごく普通の生活をおくっていた。それが一変したのは水曜日、2月17日の午後である。午前中はスタバのカウンター席で普通にnoteの原稿を更新していた。やはり気怠さはあった。

LINEで医療機関の受診を予約

 なぜか分からないが、日が傾いてから熱があるような気がした。なんの根拠もない。ふとそう思って、体温を測った。

 午後4時、36.9度である。おや?と思った。

 その日、ランチは味噌ラーメンを食べていた。美味しかった。味覚障害は出ていない。体温を確認して、コンビニで板チョコを買って、欠片を食べてみた。甘い。やはり、味覚障害はない。匂いも感じる。

 風邪だろうか。とりあえず、ドラッグストアで風邪薬を買って、飲んでおくことにした。その夜、体温は37度台前半。時折、板チョコをかじるが、味覚障害はなかった。

 翌18日早朝、目が覚めるとすぐに体温を測る。37.6度である。これで、ただの風邪ではないと悟った。インフルエンザか、新型コロナウイルスか。味覚障害がないのが気になった。午前中は再び体温が37度台前半まで下がったので様子を見ていたが、午後2時の段階で37.4度だったのを確認して、医者に診てもらうことにした。

 ところが、木曜日は休診の診療所が多い(なんで?)。私のかかりつけ医も、ご多分に漏れずに休診だった。

 そこで、LINEのアプリを通じて「神奈川県発熱等診療予約センター」に診療予約を行った。

 約1時間で、返信があった。少し遠いが、電車で10分程度の場所だ。時間は午後7時。

診療予約した当日にPCR検査

 雑居ビルの3階にある診療所である。1階のエレベーターホールに到着したら窓口に電話する。その上で、エレベーターで3階に上がった。

 診療所の入り口には、既に完全防護の医師が待っていた。靴底を消毒液で浸し、手指を消毒し、医師の後ろをついて、検査室に通される。医師以外、誰にも接触しない。医師から「会食に参加したとか、心当たりはありますか」と聞かれるが、「ない」と答えた。

 そもそも、複数で酒の席に参加するなど、もう何カ月も記憶にない。外食はほとんど単独で、しかも周りに人がいなかったり、アクリル板の仕切りがある場所ばかりだ。

 医師があきらめ顔で「まあ、心当たりなんてありませんよね」とため息をついた。

 まずはインフルエンザの検査を行う。反応がない。これである程度、覚悟はした。

 新型コロナウイルスの検査を行う。こちらはすぐには結果が分からない。

 どちらも鼻咽頭拭い。鼻の穴をぐりぐりとほじくって、検体を採取する検査法だ。

 その日、当面の処方箋のみ受け取り、帰宅した。もちろん、新型コロナウイルスの処方があるわけではないので、対処療法の薬でしかない。

 検査結果の連絡が入ったのは、2月19日午後2時20分頃。診療所の医師からだった。「陽性でした」という簡単な電話だった。「そうですか」としか答えようがない。この段階でも味覚障害はなく、陽性と言われてもピンとこなかった。「保健所の指示に従ってください」と言われ、保健所からの連絡を待った。

 この日、早朝のみ体温が37.8度まで上がったが、その後は37度以下に下がった。その代わり、前日には目立たなかった咳が断続的に出るようになった。

 午後6時20分、神奈川県藤沢市保健所から連絡が入った。とはいえ、「明日の午前9時に電話で状況を伺います」というだけの電話だ。既に発症から2日が過ぎていた。ずいぶんのんびりしているなと思ったが、症状が軽いこともあるのだろう。それよりも、LINEで診療予約をお願いした当日にPCR検査を受けることができたことが何より驚きだった。

宿泊療養ではなく自宅療養

 2月20日土曜日午前10時20分頃、藤沢市保健所から電話。具体的な症状と、発症前後の行動について聞き取りがあった。聞き取りと言っても、具体的にどことどこに寄ったのかという聞き取りではなく、漠然と「心当たりはないか」という質問だった。そう聞かれると、「うーん」と唸るしかない。

 前述したように、私は複数で食事することがない。基本的に外食でも一人きりだ。カラオケや会食も、まったく縁がない。

 単独の外食とはいえ、もしかしたらここかも?と思い当たる節がなかったわけではないが、そこまで話題が広がる前に、今後の話に移っていた。

 症状が軽いので、入院ではなく、宿泊療養になることは想像できた。ところが、意外なことに私には「自宅療養」という結論が出た。理由は、一人で生活に支障がないこと、感染させる家族がいないことなど。ニュースや新聞では、患者が宿泊療養を拒んで困っている記事をいくつも見てきたので意外だった。原則「宿泊療養」というわけではないらしい。

 思わず拍子抜けしてしまった。正直、宿泊療養の方が気が楽だった。ホテル療養なら、決まった時間に弁当は出てくるし、症状が急変すれば、すぐに対応してもらえる(ような気がする)。少なくとも、自宅のベッドでいつの間にか冷たくなっていたという事態は避けられる。

 自宅療養の場合、神奈川県が食事などの生活必需品を無料で宅配してもらえる。ところがタイミングが悪かった。

 宅配は平日のみ。自宅療養が決まったのが金曜日の夕方だったので、最初の食糧が届くには3~4日かかるということだった。自宅にいるからといって、外出可能なわけではない。自宅はマンションだが、近隣住民との接触はご法度だ。独り暮らしだから、家族に買い物をしてもらうわけにもいかない。

 幸い、我が家には当面のコメと食材は残っていた。水は蛇口から出てくる。療養期間は発症から10日間。2月27日までとなった。

厚労省のHER-SYSは活用されず

 療養期間中はLINEに登録すると、毎朝8時半過ぎに「本日の体調について回答してください」というメッセージが入る。9時半までに回答しないと、専用の電話番号から電話があり、自動音声で質問に答える。それでも反応がないと、保健所の職員が直接対応するという仕組みだ。

 LINEでの確認事項は、「息が苦しいですか?」「現在の体温」「現在の酸素飽和度(SPO2)」の三つ。

 これとは別にHER-SYS(厚生労働省新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)の登録を求めるメッセージも届く。HER-SYSの記録項目は、体温、酸素飽和度、表情・顔色、咳・鼻水、息苦しさ、全身倦怠感、嘔気・嘔吐、下痢、意識障害、食事困難、排尿がない、その他症状と、多岐にわたる。だが、これらが活用されることは最後までなかった(その旨の説明もなかった)。

 保健所からの電話連絡は自宅療養に入る前の3回と、自宅療養を解除する際の2回のみ。その他は、LINEを通じたやりとりだった。

 酸素飽和度に関しては、LINEでの質問で「パルスオキシメーターはありますか?」というメッセージに「いいえ」と答えると、パルスオキシメーターを自宅に送ってくれる。これは後で気づいたのだが、アップルウォッチの最新版を持っている方は酸素飽和度の計測ができるので、それで対応していいか保健所に聞いてみてもいいかもしれない。実際、はかり比べをしてみたが、ほとんど変わらない。

 療養期間中、体温が37.5度を上回ることは一度もなかった。酸素飽和度が95%を下回ったのは一度だけだった。

 私は独り暮らしが長いからだろうか、10日間という療養期間中、孤独感はほとんどなかった。独りが慣れてしまっている。大学時代、1年生で友だちもいなかった頃の方がはるかに孤独だった気がする。

 一方で、療養期間中に体調が急変したら、誰が気づいてくれるだろうかと思った。一応、体調が急変したら、すぐに保健所に連絡するという建前になってはいるが、例えば深夜に突然息苦しさを感じても、朝まで様子を見ようと思ってしまう気がする。

 大量の新規感染者が出ている中で、保健所の職員が一人ひとりに対してきめ細かなフォローアップができるとは思えない。とはいえ、一人暮らしの自宅療養に関しては、もう少しフォローの工夫が必要な気がする。

食事の宅配は、「ワタミの宅食」だった(笑)

 「(笑)」をつけてしまったのは、まさか、こんなところにワタミが参入しているとは思わなかったからだ。税金が投入されているので文句はなかなか言えないが、お世辞にもうまくはない。2日に一度、冷凍の食品が宅急便で届く。食べる前に冷凍庫から取り出し、電子レンジでチンする。

 前述したが、陽性判定が金曜日の午後で、保健所からの連絡があったのが夕方だったため、食事の宅配は週明けの手続きになってしまった。

 トイレットペーパーやティッシュペーパー、冷凍する必要のないコメ(レンジでチンするやつ)は23日火曜日に到着。おかずなどワタミの宅食(冷凍)が届いたのは、24日水曜日である。なんと、発症から既に1週間が過ぎていた。療養期間は10日間なので、水曜日を入れても4日間しかない。

 繰り返すが、税金を使っているのだから文句は言えない。だが、生活必需品が療養期間の後半にならないと届かないというのは困ったものだ。

 宿泊療養なら、こうはならない。療養初日から弁当や生活必需品は現地で調達できる。

 食事に関しては、症状が軽くて、もしも自炊する能力があるなら、ワタミの宅食ではなく自炊することをオススメしたい。レンジでチンした弁当ほどまずいものはない。毎日なら、なおさらだ。現在はコンビニなどが食材の宅配もしている。玄関前に荷物を置く〝置き配〟を指定すれば、配達員との接触も避けられる。

 ワタミの宅食には、お好み焼きも含まれていた。果たして風邪の症状や味覚・臭覚障害がある人が濃いソースのお好み焼きを好んで食べるのだろうか。そういう食材のセレクトも含めて、ワタミの宅食は避けた方がいいと思った。

 一応、1日3食分の食事が届くが、3食を全て食べることはなかった。倦怠感と咳で、1日の大半はベッドに横になっているだけなので、食欲はさっぱりわかなかった。せいぜい、1日2食が限界だった。

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保健所からの電話で療養終了

 療養期間の最終日、保健所から電話が入った。保健所の職員と直に話せるのは、療養期間の開始前と、最終日のみである。これまでLINEで伝えた体調報告を基に療養期間の終了を決める。問題があれば、延長になる。私の場合、2日前に酸素飽和度が95%まで下がっていたが、体温は36度台を維持していたので、療養の終了を告げられた。

 最終日でも咳き込むことが多かったのだが、既に発症から10日過ぎており、他人に感染させる状況は脱しているという判断だ。療養期間が終わっても咳が長引くケースは多いらしく、まだ数週間、症状が続くことがあるかもしれないということだった。

 発症から10日、医師と直接会ったのは1度切り。療養期間の長さの割には医師が介入するのはPCR検査のみで、療養期間の終了も含めて医師の判断を仰ぐことはなかった。

4日前、民間のPCR検査は「陰性」だった

 実は私は13日土曜日に新橋駅前にある「木下グループ・新型コロナPCR検査センター」でPCR検査を行っていた。結果は翌日、メールで「陰性」と伝えられている。新型コロナウイルスの発症は17日で、翌18日に医療機関で行ったPCR検査は「陽性」である。

 これは、何を意味するのか。

 仮に13日に行ったPCR検査の「陰性」が正しかったとすると、17日の発症までの間にどこかでウイルスに感染したということになる。逆に、13日の検査が「偽陰性」だったという可能性も否定できない。いずれにせよ、無症状の人がPCR検査を行う意味は、ほとんどないということがよく分かった。

接触確認アプリ「cocoa」の陽性登録できず

 厚生労働省が提供している接触確認アプリ「cocoa」は、いまだに「陽性者との接触は確認されませんでした」のままである。新型コロナウイルス陽性と診断された場合、アプリで陽性登録を行うことになっているが、今もまだ登録ができていない。

 このアプリは、保健所や医療機関に伝えた携帯電話番号やメールアドレスが「新型コロナウイルス感染症等情報把握・管理支援システム」に登録されると、その電話番号かメールアドレスに「処理番号」が通知されるという仕組みになっている。患者はその処理番号をアプリに入力すると、症状が始まった日または検査を受けた日の2日前以降に患者と接触した人(概ね1メートル以内で15分以上近接した可能性のあるアプリ使用者)に通知が届く。

 ところが、私の元にはいまだに処理番号が届いていない。したがって、私は陽性者にもかかわらず、cocoaに登録ができていない。よって、発症2日前から私に接触した人には、誰にも通知が行われていないということになる。

「応援スタッフが次々と派遣され、コロナ前から数倍に増員されましたが、特に7月以降は感染者が増え続けており、職員全員が多忙を極めています。陽性者の健康確認、濃厚接触者の追跡、入院・隔離先の調整など、多岐に渡る業務を担っていて、正直、処理番号の発行対応が後回しになったことがあるのは否めません」

 ネットを検索すると、こんな記事が出てきた。そもそも、cocoaへの要請登録に必要な処理番号は、患者本人が保健所に申し出ないと発行されない仕組みだということだ。しかも、保健所の業務がひっ迫していて、事務が滞っているため、処理番号の発行が遅れているというわけだ。

 保健所の職員からcocoaについての説明はなかった。いつ処理番号が届くのだろうかと思っていたら、療養期間が終了してしまった。発症日は2週間近く前で、もうアプリへの陽性登録自体、意味が薄れてしまっている。

 このcocoaというアプリ、なまじ役に立っているかのような妄想を抱いてしまうので、活用するつもりがないなら廃止してはいかがだろうか。

結局、感染経路は分からない

 陽性の診断を受けて、どこが感染経路なのか考えてみたが、いまだに確証が得られていない。私は、よく感染しやすいと言われる会食やカラオケとは縁がない。少なくとも、私は外出時には確実にマスクをつけている。独り暮らしのため外食は他の人よりも多いかもしれない。

 基本的には感染防止対策が行われていない場所には出入りしないようにしている。ただ、13日にPCR検査を行った夜、ある居酒屋で夕食をとっていた。ここは緊急事態宣言中にも時短要請に従わず、営業を続けている店舗だった。いつも午後8時ころに通りかかると、店内は満員で、外にも人があふれている状態だった。

 たまたまその日、時間が早いせいか、その店のカウンター席はガラガラだった。ちょっと早めの夕食くらいの気持ちで、中に入ってみた。どういう人たちが集まっているのだろうかという興味本位の気持ちがあった。

 カウンターは空いていたが、背後のテーブル席はほとんど満席で、誰もマスクはしていない。大声で談笑し、騒いでいた。私はそれらに背を向けてカウンター席に座り、黙々と誰とも会話せずに食事を楽しんだ。外が暗くなってくると、店内はますます混雑してきて、カウンター席も両サイドが埋まってしまった。

 これはいかんなと思い、会計に席を立った。

 ただ、これだけである。ここで感染したという確証はない。

 その後、他の店舗で外食は何度かしているが、いずれも周りに人がいないか、カウンター席にはアクリル板の仕切りがあった。店員と会話を交わしたが、店員はマスクをしていた。つまり、マスクをしていない人と会話をしていない。

 たぶん、考えるだけ無駄なのかもしれない。

 新型コロナウイルスの感染は、注意していれば避けられるというものではないことは、これでお分かりかと思う。

最後に

 巷には「コロナは風邪」みたいな言説がある。正直、殺意しか覚えない。ただの風邪なら市販薬で治せている。コロナが他人事だから、のんきなことを言えるのだ。安全地帯で陰謀ごっこに興じている人たちには不快感しかない。

 神奈川県の感染者数は累計で4万5027人である。神奈川県の人口は905万人。つまり、200人に1人が感染している計算だ。決して、他人事の感染症ではない。それでも、深夜の居酒屋でマスクもしないで大声で騒いでいる人たちにとっては、「コロナは風邪」なのかもしれない。

 不謹慎な言い方をすれば、あなたも一度、かかってみてくださいよと思う。ただの風邪では済まないとよくわかると思う。

 ネットというのは、いとも簡単に世界の「陰謀」に触れることができる。なんらかの「謀略」と戦っている気分に浸れる。だが、コロナを巡る陰謀論には、コロナに感染して苦しんでいる患者という実態が存在しないのだ。

 反ワクチンの言説もしかり。

 私はどちらかというと、反権力であり、現在の政府に批判的な人間だ。noteを読めば、よく分かると思う。だが、新型コロナウイルスに関しては、政府や御用学者が発信する情報を〝鵜呑み〟にしている。そうしなければ、自分の命を守り切れないと思うからだ。政治的スタンスで、科学的な結論をゆがめるべきではない。実際に感染の当事者になってみて、その感覚は間違っていなかったと思っている。

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