見出し画像

俺的パラグライダーのテイクオフの極意

パラグライダーのテイクオフ。
どちらかというと苦手な人の方が多いと思います。
今回はそんなパラグライダーのテイクオフについての自分が普段から気を付けていること、意識していることを話していきたいと思います。

名付けて、
俺的パラグライダーのテイクオフの極意

そう。墜落した私が、自分が考えているテイクオフの大切なことを偉そうに語っていきますw パラのインストラクターがあまり言わないことや、シビアというか厳しい内容も入ってくるかと思います。

あくまで私の考えなので、
「こんな考え方をしている人もいるんだな。この部分は参考にしてみよう。」
くらいに読んでもらえるといいなと思います。

話としては大きく分けて「心構えの話」を2つ、「操作、動作の話」が2つとなります。

心構えの話は
・環境や道具に自分があわせる意識を徹底しよう。
・引き出しを増やしていこう。分析し、改善し、より安全にしていこう。

操作、動作の話は
・頭上安定をしっかり、ちゃんとやろう。
・甘えるな!最後までしっかり走れ!

といった感じです。
それでは話していきますね。



大切な心構え

具体的なテイクオフの話に入る前に。
テイクオフだけに限らず、パラグライダーで飛ぶということ全体を通して常に意識するべきことがあると思っています。

「すべてにおいて、自分が合わせる」

という意識を持つべきだということです。

パラグライダーにおいて、何かうまく行かないことがある時、分析していきましょう。すると大抵、環境や状況に合わせられなくて、うまく行っていないことがほとんどだと気付かされると思います。

「風に合わせろ」ということをインストラクターがよく口にしていますよね。その通りです。でも意識するべきなのは風だけではないんです。風、地形といった自然環境から、キャノピーやハーネス、バリオなど自分の道具の特性にも合わせていくという意識を持つべきだと思います。

どうテイクオフしたいか、どう飛びたいか、どうランディングしたいかを明確にイメージしてみます。そのイメージ通りになるためにはどう操作したらいいのか。その時に環境や状況、道具の特性にどう合わせていくか。といった形で考えていきましょう。

ちなみにパラグライダーの上手な人と下手な人の違いの一つに「どれだけ環境や道具に合わせられているか」があると思います。さらに言うと上手な人は合わせられる幅が広いと思っています。

「合わせられているか」だけでなく、「どこまで合わせられるか」も非常に重要です。「自分が合わせられる範囲」を的確に把握して、その範囲を越えている場合は飛ばない、テイクオフしないといった判断することも大切になってきます。


環境に合わせる

テイクオフでは風に合わせてテイクオフしなければいけませんよね。でも合わせるべき環境はそれだけではありません。テイクオフの傾斜の角度といった地形、テイクオフの広さ、周りの障害物なども考慮すべきです。

まず風についてですが、風が弱ければキャノピーを立ち上げるのも、飛び立つためにもスピードが必要になります。その分、自分が走らなければいけません。逆に強風の時に弱風と同じようなことをすれば後ろにすっ飛ばされます。強風に合った立ち上げ方、飛び立ち方があります。

弱い風〜強い風、それぞれの風に合わせた自分なりのテイクオフのやりかた、つまり「型」を作っていくべきです。そしてさらに対応できる風の範囲も広げていけるようにしましょう。

さて、対応できる風の幅を広げていく、ということについてさらに踏み込んでいきます。多分ここまでの話だと、「強風にどこまで対応できるか」と思ってしまうと思うんですが、その逆も非常に重要です。
パラグライダーってフォロー風の時でもテイクオフできるって知ってますか?
0.5mフォローくらいの風であれば全然余裕でテイクオフできます。0.5mの風は時速に変換すると1.8㎞/hです。つまり自分が1.8㎞/h速く走れば理論上テイクオフできるはずです。そして、実際できます。(私はよくやっています笑)

もちろん翼を立ち上げる瞬間は風のフォロー風の風速以上に不利になります。ですがだからといって不可能というわけではありません。素早く引いてキャノピーが立ち上がれるだけの風を自分がつくればいいのです。
要は「甘ったれたこと言わず本気で走れ!!」ってことです。

立ち上げは風に合わせた立ち上げをしていこう!そして対応できる風の幅も広げていこう!つまり必要な時はしっかり走れ!!
ってことです。対応できる風は広ければ広いほどいいです。

続いて地形の話です。
まず斜面の角度が重要になってきます。角度が浅い場合、その分自分が走ってスピードをつけないと浮きません。飛びたつことはできません。そうですね。その分走れ!って話になります(笑)
逆に傾斜の角度が大きいテイクオフの場合はスピードをつけることよりも、しっかり荷重をかける事が大切になってきます。

テイクオフする場所も重要になってきます。例えばテイクオフが木で囲まれていて、その右端から出る場合は右翼から立ち上がるようにしたほうが安全です。左翼から立ち上がってしまうと下手をすると翼が木の方を向いてしまいます。止まれないと翼を引っ掛けてしまいます。
ライザーの持ち方や立ち上げる時の自分の位置をずらすことで右翼から引かれるようにしましょう。そうすれば右翼から立ち上がり、木の方へ向かうことはなくなります。そうやって引くと翼は斜めに立ち上がってくるので、その分自分も翼の動きに合わせてテイクオフの真ん中へ移動してあげます。(より安全な方向ですよね)そして頭上安定させる→加速してテイクオフ、という流れを作りましょう。

他にもテイクオフした先の木が右側は高い木が多く、左側は低めだとしたら、やはり左側にコースをとっていくべきです。ここで大切なのは足が地面から離れる瞬間から、つまり飛んでから左側を通る意識をするのではなく、立ち上げの時点から意識するのがいいです。左側へコースを取りやすくなるように右翼から立ち上げて、自然と左へ寄っていきやすくしたほうがいいです。

具体的な話を交えたので話が長くなってしまいましたが、風だけでなく、地形に合わせたテイクオフが如何に重要はわかっていただけたのではないでしょうか。

風や地形、環境に合わせてテイクオフをしていこう。そのために自分の中でテイクオフの仕方のパターンを増やしていこう、というお話でした。


グライダーやハーネス、道具にも自分が合わせろ

詳しい内容に入る前に昔話からしていきましょう。私が練習生の時の話です。

当時、私は癖が強めの初級機に乗っていました。その癖のせいでターンが上手く出来ずにいました。「グライダーが曲がらない!」とインストラクターに嘆いたのですが、びっくりな返答が帰ってきました。

「いいか、前島。世に出ているすべてのパラグライダーはお前の何百倍も上手くて、知識をもった人が何百回とテストフライトをしてるんだよ。そんなすごい人たちがテストする中で乗り味とか、操作フィーリングを調整していくんだ。「よし、これでいこう!」ってなるまでチューニングを繰り返してやっと世に出てくるんだよ。だから曲がらないわけがない。グライダーが悪いんじゃない。お前の操作の仕方に問題があるはず。お前がグライダーに合わせろ。」

はい。。。ぐうの音も出ませんでした(笑)
そう。パラグライダーは人間側が合わせるしかないんです。
嘆いても仕方ありません。

立ち上がりが悪いなら、その分自分が走るようにする。立ち上がりが45度を超えたあたりから急激に良くなる特性で、よく翼に追い越されて浮いてしまうのなら、45度あたりから引くテンションを弱くしてあげる。といった感じで自分のグライダーの特性を理解すれば、やれることや対策方法は沢山あるはずです。

翼の特性にあなたが合わせてあげましょう。どう動きたいかをイメージし、そのように動かす為にはどう体を動かせばいいか、どう動作をすればいいかを考えてください。

グライダー、ハーネス、更にはバリオといった物まであなたの使っている道具の特性を理解し、その特性に合わせるようにしてくだい。


「全てにおいて、自分が合わせる」

ここまででテイクオフの風や地形といった環境から、自分の道具に至るまで、パラグライダーはすべてにおいて自分が合わせなければいけないということ、その大切さは十分理解してもらえたのではないでしょうか。

まずしっかりと環境や道具を理解することが大切です。きちんと理解出来ていれば、どうすれば合わせれるかが自ずとわかってくるかと思います。環境や道具のことを考慮して、どういう動きをしたいのかイメージし、その動きをするためにはどう操作するか、どう体を動かせばいいのかわかってきます。

そして、やってみた結果がイメージ通りにならなかったときは何がいけなかったのかをしっかりと分析してください。その原因は環境や道具への理解がたりなかったのかもしれないし、そこを考慮した操作がたりなかったのかもしれない。そういったことを反省し、次に繋げていくことでより安全になっていきます。

「自分が合わせるための引き出しは多ければ多いほどいい」

「全てにおいて自分が合わせていこう」というのはもう十分理解したとおもいます。でも具体的にどうすればいいかが、イメージしにくいかもしれません。なので、私の場合の話をするので参考にしてください。実際の貴方の行動に繋げやすくしていければと思います。

まずは引き出しの数(対応方法)は細かく分けるといっぱいあるよ、という話からしていきます。

突然ですが、皆さん自分の中のテイクオフの仕方のパターンって何通りくらいありますか?
どうやって環境や道具に合わせるかの引き出しをいくつ持っていますか?ということです。

一般的なことで言えば
・風が弱い時はフォワードで立ち上げる
・風が強い時はリバースで立ち上げる
といった話です。

このフォワードで立ち上げるという動作一つをとっても
「微フォローでのフォワードでの立ち上げ」と、「いいアゲスト風が入っている時のフォワードでの立ち上げ」は動き方がかなり違います。
自分の場合、微フォローで立ち上げるなら、1歩か2歩後ろへ下がったところから走り始めて、一気に翼が引かれやすくなるようにします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
追記:微フォローの時は1歩か2歩後ろへ下がった方がいいという話はある方からご連絡を頂きました。話をして「なぜ1,2歩下がったほうがいいのか」は自分の中でも感覚的な話で、明確が根拠がないことに気がつきました。この部分は修正したいと思います。この部分については後日、新たな投稿で話していきたいと思います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そう、少しの違いに対しても対応方法を変えられる、つまり引き出しは細かくある方がいいんです。

さらに具体的な話に入っていきます。風だけでなく、地形などの環境、そして道具の特性にたいしてもどう考え、どう対応しているかを参考にしてください。

~なるべくリバースライズアップ~
テイクオフの広さと風の強さに大きく影響されますが、可能な限りリバースライズアップで出ることを心がけています。やはり、立ち上げの時に翼を確認できたほうが安全です。クラバットしていないかの確認が容易ですし、斜めに上がってきてもすぐ修正できます。なので風の強さとテイクオフの広さから逆算してリバースライズアップできる状況であれば、なるべくリバースで出るようにしています。十分に広いテイクオフなら、無風でもリハースライズアップにするようにしています。もちろんそういう時はしっかり走ることも意識しています。

~超強風の時はわざと翼を斜めに立ち上げたり、コブラランチにする~
海エリアなどでよくやるのですが、強風の時はわざと翼を斜めにあげたり、コブラランチをするようにしています。このやり方は揚力を横に逃がすことで立ち上げ途中に揚力を体にもろに受けて、後ろへすっ飛ばされるのを避けるためです。 風の強さやテイクオフの広さ、サポートの人がいる、いないといった要素を総合的に判断して、斜め立ち上げにするかコブラランチにするかを判断しています。

~ランチャー台の場合は弱風でもリバースライズアップ 無風の時は出ない選択を~
私がよく行くエリアの一つはテイクオフがランチャー台になっています。勾配もかなり急です。風が弱ければフォワードで出たいなという気持ちになりますが、必ずリバースライズアップで出るようにしています。狭いランチャー台で立ち上げに失敗するとランチャー台から落ちてしまう確率がかなり高いです。怪我をする確率も高いですし、幸い怪我をしなかったとしても木に引っかかった機体を回収するのは大変です。なので、ランチャー台ではまっすぐ立ち上げることが第一条件になります。そして少しでも斜めになったら無理に修正しようとしません。すぐに取り止めると決めています。(無理に修正しようとしてランチャー台から落ちた人を何人か見ています)そういう時はフォワードよりリバースライズアップのほうが翼の立ち上がり方を目で見れるので安全です。なので必ずリバースライズアップで出るようにしています。また、そんな面積の限られたランチャー台なので、走力でテイクオフをカバーするスタイルも危険です。なのである程度いい風が入るまでしっかり待ちます。その風が入らない場合は飛ばない判断をします。

~機体特性でリバースライズアップのライザーの持ち方を変える~
私の場合、基本的なリバースライズアップの方法は、左手で左右のAライザーを持ち、右ブレークはトグルに手を通しておき、左ブレークは右手の人差し指と中指に引っ掛けるやり方をしています。左手で立ち上げる→翼が斜めに上がってきた場合、上がった方のブレークを引く、というスタイルです。ですがすべての機体でそうしているわけではありません。あるCCCの機体を立ち上げる時は左右のAライザーを右手と左手、別々で持つようにしています。ちなみにブレークはトグルを手に通し、一周手に巻いた状態にしています。その機体だと翼の左右の空気の入り方というか、微妙な状況の違いで大きく傾きやすいからです。さらに立ち上げ途中はブレークの効きがかなり悪いです。なので微妙な左右の翼の風の入り方の違いで大きく傾いていってしまいます。
その特性に合わせるためにライザーは左右別々に持つようにしています。立ち上げる瞬間、左右が均等に立ち上がるように左右別々でAライザーの引く力を調整できるようしています。立ち上げる瞬間から上がり切るまで均等に上がるように右を多めに引いたり、左を多めに引いたりと、微調整し、ちょっとでも斜めになったらすぐに取りやめれるようにしています。この機体はどうせ斜めになり始めたらほぼ修正不可能なので取りやめるするしかありません。2ライナーの関係でブレークがかなり長いので、手に一周巻いてブレークを効きやすくし、すぐ取りやめができるようにしています。

以上が3つの具体的な環境や道具の特性に合わせた自分の引き出しの話でした。環境や道具の特性をどう考えて、どう合わせるためのアプローチをしているかわかったかと思います。こういった環境や道具に合わせたやり方の多さ、つまり引き出しは多ければ多いほどいいと思います。

どんな状況にも自分なりの適切な方法で対応できるよう、引き出すを増やしていくことを心がけてください。自分のテイクを振り返り、分析して、原因を考え、対策をして改善していってください。より安全にしていきましょう。


まとめ

ということで、

・パラグライダーはすべてにおいて、自分が合わえていこう
・風や地形などの環境に合わせていこう
・道具の特性にも合わせていこう
・環境、道具、どちらもしっかりと理解し、その対応方法の引き出しも増やしていくことを心がけよう

ということでテイクオフの、いや、パラグライダーをやっていく上での大切な心構えの話でした。
続いてはテイクオフの実際の動作の話です。

動作で大切にしていることは2つのこと

私がテイクオフの動作で大切にしていることは主に2つです。
・立ち上げでしっかり頭上安定させること。
・ちゃんと走る。そしてスピードをつけてテイクオフすること。
この2つだけです。

というか、この2つをきちんとやっていればテイクオフで失敗したり、スタチンすることはほぼないと考えています。
それでは2つの動作のコツやしている時に考えるべきことなど細かく話していきましょう。

頭上安定

最も重要なのは
リバーステイクオフの場合は翼を止めて、しっかり頭上安定させてから前を振り向くこと。
フォワードテイクオフの場合は立ち上がりきった所で頭上確認してから加速に移行すること。

つまり、どちらも頭上でグライダーの状態を一呼吸おいてしっかり確認すること、その上で行くか行かないかを判断することが大切です。

頭上安定の大切さはスクールでも散々言われていると思います。今まで耳が痛くなるくらい聞いてきたと思いますが、これがきちんと出来ていない人がとても多いと感じています。


テイクオフを一連の動作でやってしまうと危険

最も多いパターンはリバースで立ち上げた時に頭上安定させる前に振り返ってしまっている人です。こういう人は
「立ち上げ→頭上安定→加速→テイクオフ」
を一つの動きでやってしまっているように見えます。1つの動きでやってしまうデメリットは
・一連の動作でやってしまっているので、テイクオフできるかどうかを、一呼吸おいて確認する余裕を作りにくい。
・そのためグライダーの状態をカラビナやブレークから感じ取る癖がつきにくい。
・たとえ頭上安定が出来ていない状況でも早い段階で体が前を向いてしまっているので「いかなきゃ!」と思ってしまいやすい。

よくあるパターンは翼が斜めに立ち上がってきているのに、翼が上にあがりきる前に前を向く(翼は斜めのまま)→そこから修正しようとするけれど、修正が不十分。。。でも前を向いてしまっているのでそのまま出ようする→翼が斜めのままなので、しっかり加速もできないまま飛び乗ろうとしていまう。。。

結果、グライダーが滑空状態になっていないのに、無理やり出てしまってスタチンしてしまうパターンです。
(スタチン:スタートで沈してしまうこと)

このやり方が癖になっている人は
テイクオフのが上手くできないからと焦る→よりグライダーを感じたり、確認する余裕がなくなる→よりスタチンしやすくなる
という悪循環にハマってしまい、より事故しやすくなっていきます。

もう一度言います。大切なのは、
グライダーを頭上安定させ、グライダーの状態を確認することです。そして行いけるか行けないかを落ち着いてしっかり判断することです。

その上で安全にテイクオフできると判断すれば、走って加速していけばいいのです。上手く立ち上げられなかったり、何かがおかしいと感じたら、一度立ち上げをやめればいいのです。勇気をもって、一度グライダーを下ろしましょう。立ち上げの失敗は、テイクオフ失敗ではありません。

テイクオフの動作を一連の動きで捉えてしまっているから、とりあえずグライダーが上に上がった時点で「行こう!」となってしまうのです。だからグライダーが斜めに立ち上がったり、クラバットした状態でも行こうとしてしまうのです。そしてその状態から無理に修正をして出ようとするから、グライダーが斜めだったり、ピッチ角が悪い状態で飛ぶことになってしまうのです。そしてスタチンしてしまう。それが「失敗」なのです。


テイクオフ動作は2つのステージに分けて考える。
頭上安定後に「確認する間」をつくる。

私はテイクオフの動作を大きく2つに分けて考えています。
「立ち上げ→頭上安定」と「加速→テイクオフ」という形です。そして大切なのはこの2つの動作の間に「翼をしっかり確認をして、判断する間」を作ることです。つまり
頭上安定させた後で、一呼吸おいて、行くか行かないかを判断している」
ということです。

グライダーが頭上に来たら、一呼吸置いて判断することがとても大切です。
・カラビナとブレークテンションからグライダーの状態を感じ取る。
・グライダーを目視して確認する。

この2つをちゃんとやる癖をつけてください。

安心してください。今のグライダーは性能が上がっているので頭上安定させた後、一瞬の間を空けたからといって立ち上がったグライダーが落ちてきたりすることはありません。

ここでグライダーのテンションをカラビナとブレークから感じながら、上を見る癖をつける利点は安全にテイクオフすることだけでは留まりません。普段からグライダーの状態をカラビナやブレークプレッシャーを通して感じ取る癖がついてくるので飛んでいる時にもすごくプラスに働いてくれると私は考えています。

まとめますと、立ち上げてからの頭上確認。一呼吸おいてしっかりするようにしてください。フォワードテイクオフだったら走る足をすこし緩めてもいいのでしっかりと確認する癖をつけてください。リバーステイクオフだったら、頭上確認してから前を向く癖をつけるようにしてください。
頭上確認で問題なければ、あとは荷重をかけて加速し、テイクオフするだけです。

でもこの加速も意外とちゃんとできていない人が多いなと思っています。
続いて加速についてのお話です。


テイクオフはスピードが命

そもそもの話なんですが、パラグライダーがなぜ飛ぶかを理解していますか?
中学生の頃に習ったと思いますが、翼というのは
「前に進むと、翼の上面と下面に分かれて空気の流れが流れていく。この流れ方の差によって揚力を生み出す」仕組みになっています。

わかります?
「前に進むから揚力を生む」わけです。
「スピードがあるから、揚力を生む」わけです。
逆にいうと
「スピードがないと飛ばない」ってことです。

つまり何が言いたいかというと、「ちゃんと走れ!スピードをつけろ!!」ってことです笑

なぜスピードをつけられないのか

そもそも前の章で話した頭上安定がしっかりできていないと、きちんと加速できません。 グライダーが斜めに立ち上がれば体が横に引っ張られるので加速できません。グライダーがピッチアップ状態だと、翼が抵抗になり、加速できません。グライダーがピッチダウン状態だと、大潰れしてしまいます。
つまり、パラグライダーの構造上、ちゃんと頭上安定させて適正なピッチ角ができていないと加速することはできません。だからまずは頭上安定することが何よりも大切なんです。逆に言うと、頭上安定さえしっかりできていれば自然と加速できるのでよっぽどのことがない限りスタチンすることはほぼありません。


それでも加速しろと言う理由

ではなぜこんなにも加速しろと強く言うのか。
それは、もし頭上安定ができていない状態でそのまま「出よう」という判断ミスをしてしまった時に、スタチンする確率をかなり減らすことができるからです。

今まで沢山のスタチンを見てきました。特殊な例を除くと全員に共通していることが「スピード不足」だったなと感じています。ちょっと誤解を招く発言になってしまうかもしれませんが、
頭上安定がちゃんとできていないことがスタチンの直接の原因でも、ちゃんと走ってスピードさてあれば、スタチンを免れただろうな・・・。
という事例をいくつも見てきました。

翼が斜めだったり、ピッチ角度が悪かったとします。その状態でスピードなしでハーネスに飛び乗ってしまうと、次に待っているのは一気にピッチダウンして沈む動きです。その沈みで木や草に引っかかり、スタチンしてしまうのがよくあるパターンです。スピードをつけてテイクオフする癖がついれいれば、沈む量を抑えることができるので、スタチンする確率をより低くすることができます。

もちろん一番大切なのは頭上安定です。頭上安定ができなければ取り止めるべきです。でも判断ミスで出ようとしてしまった時にスピードがあり、荷重もかかっていれば、スタチンしてしまう確率はぐっと下がります。

なのでいつも足が地面から離れるまでなるべくスピードをつけることを意識してください。

ところで、なぜ多くの人が加速する癖がついていないのかと考えた時、一つの大きな理由があるのかなと思います。


いい風でテイクオフすることに慣れすぎていないか

練習生のころを思い出してください。テイクオフに関しては「いい風で出ましょう」「風を選んでください」みたいなことをよく言われていませんでしたか?言っていること自体は正しいのですが、一方でこれによって弊害がうまれている部分もあるのではないかと私は考えています。

いい風のときは向かい風の速度の分だけ自分が走らなくてもテイクオフできてしまいます。そして、そのイメージが強く付きすぎて、「パラグライダーはスピードを付けなくても浮くもの」と思ってしまう部分があると思うんです。風があまり良くない時にテイクオフするときでも、そのイメージがあるせいで本気で走らずに出ようとしてしまう。結果スタチンしてしまう。。。そういう悪循環があるんだと思います。

「マシな風」を選ぶスタイルのススメ

いい風に慣れすぎている問題に派生して、私がいつも心がけていることがあります。それは「マシな風でテイクオフする」というスタイルです。

状況によっては「いい風」がなかなか吹かないことってありますよね。そういう時は「マシな風」を選んでいこうってことです。

・極稀にすごくいい風が入ることがあるけれど、それ以外はすっごい弱いアゲンストが吹いているときだったら、いい風が来るのを待ちすぎず、その弱いアゲンストでテイクオフする。
・弱いフォローが吹いている時であれば、アゲンストが吹くのをずっと待つのではなく、無風になったところでテイクオフする。

いい風になるのをずっと待っているのではなく、風がマシになり、自分が安全にテイクオフできる範囲に入ったら、割り切ってテイクオフしていこう!ということです。

ただこれは自分の限界をしっかり把握している、ある程度経験を積んだパイロットが対象です。。自分の限界範囲に近い状況のテイクオフで何かがおかしいと感じたらすぐに取りやめができることがこのスタイルをやる絶対条件になってきます。

このスタイルは自分的には強くおすすめです。自分の限界をしっかりと把握し、その範囲で的確にテイクオフすること。だめならすぐ取りやめることが必須になります。色々と難しい部分もあるかと思いますが、このスタイルができると、より安全に繋がりますし、何よりサーマルチャンスを逃さなくなります。

あ、あともう一つ大きなメリットがあります。このスタイルが身につくと、周りの人を不必要に待たせなくなります。テイクオフでずーーっと風を待つ人いるじゃないですか。本人はいい風が入らないとでれないのかもしれないので、安全のためにも仕方のない部分もあると思います。そういう場合はしょうがないです。でもテイクオフが混雑することもありますし、なるべくみんなスムーズに出られたほうがやっぱりいいですよね。そんな時にこの「マシ風スタイル」を身に着けていると、すぐテイクオフできるので、テイクオフのスムーズな運用に貢献できます。

「マシな風」でサーマルチャンスを掴んだ話

ここで一つ、自分が経験したストーリーを話していきます。
数年前のクロカンシーズンのことです。場所はクロカンのメッカである茨城県の足尾。私の第2のホームエリアでもあります。

山へ上がり、準備をしてテイクオフ前に行くと、、、なんと誰も翼をひろげていない!時間は11時半過ぎ。クロカンを狙ってフライトするにはそろそろテイクオフしたい時間帯です。

テイクオフには微フォローの風が入っていました。ちょっと前からしばらくそんな風が続いていたらしいです。それで風が悪いと、誰も飛ぼうとしていなかったのです。でも落ち着いて周りを見渡します。上空はいい感じに南風が入っています。そしてテイクオフの2、300m先にはテイクオフと同高度から調子良く上げ始めている機体がありました。予報や現場の状況を考えるとテイクオフには本来いいアゲンストの風が入るはず。ですが明らかにそのサーマルで空気が吸わる影響でテイクオフだけフォロー風になっている感じがします。

全体の風は問題ない。眼の前のにはいいサーマルがあるのは明白。でもその影響でテイクオフは微フォロー。

じゃあどうするか?   出るっしょ!!笑

微フォローの強さとテイクオフの広さから、いつも通りしっかり走れば十分安全に出られると判断したからです。周りの人は「え?本当に出るの?フォローだよ?」という反応でした。

私の返答としては
「この程度のフォロー風なら全然大丈夫!似たような風でもっと狭い烏山のテイクオフから何度も出てるんだよ!こんなに広いテイクオフなら問題ない!」
という感じでしたw

みんな待機状態ですから、準備もいっぱい手伝ってくれます。(ラッキー!)さくっと翼を広げもらえて、フォロー風が弱まった瞬間、すぐにテイクオフ!(もちろんしっかり走りました!)

テイクオフ後はさっき見た調子良く上げている人の下へ一直線に向かいます。そのまま良いサーマルに入ることができました。そのサーマルで上げきって、クロカンにへ出発。80km以上飛ぶことができました。

ちなみにそのサーマルで上げている時に、私の上げる姿を見て誰か出てくるだろうとテイクオフの様子を見ていたですが、誰も出ませんでした。。。眼の前で上げていった人がいても、フォローだから出れないとみんな考えていたそうです。風が良くなった頃にはエリア全体があまり良くない感じになり、余計テイクオフしずらい風になってしまったみたいです。なんとか出れた人も上げることができずにそのままランディングしたそうです。なのでその日同じテイクオフから出た人で自分以外にクロカンに出れた人はいなかったそうです。ショップに戻ってきた時には「しまったー!あの時頑張って出るべきだった。。。」なんて声もありました笑
ということで、

テイクオフするに時、スピードはすごく重要。しっかり走ってスピードをつけよう!
そこ!甘えるな!しっかり走れ!!そうすれば、より安全になるし、いいチャンスをつかめることもあるはず!
という話でした。

まとめ

ということで、動作で大切なことは
・動作を「立ち上げ」と「加速」と2段階に分けること。
・まずは立ち上げたあと、しっかり翼を止める。
・止めた後「確認する間」を作る。
・確認した後、しっかり走ってテイクオフ!

そうすることで安全できれいなテイクオフをできるという話でした。

また、後半は
・いい風で出ることに慣れすぎて走る癖を忘れていないか!?
・中上級者は「いい風を待つ」のではなく、「マシな風で出る」って考え方もあるよ。チャンスをつかみやすくなるよ!

という話でした。


最後に

以上が私がパラグライダーでテイクオフする時に心がけていることです。
なんだか、、、とっても長くなってしまいましたね。具体的な部分も含めて書いたほうがより理解してもらえると書いていたら、、、、とんでもない長さになってしまいました笑
偉そうに語ってしまっている部分も多々あると思いますが、ここまで読んでくれてありがとうございます。

そして最後にまとめとして最も大切なことを。
心構え、実際の操作、どちらにも共通して大切なことです。
それは

理解をより深められるよう、合わせられる幅を広げてられるよう、いつまでも向上し続ける努力をずっと続けていく。

ということです。

結果的になんとかテイクオフ出来たとしても、イメージ通りにいかなかった。思った通りの結果を得られなかった。そういう時はしっかり分析してください。

何がいけなかったのか。
その原因は何か。
今後はどう対策していくか。

そういったことを是非しっかり振り返り、考えてください。
うまくいかなかったのは知識の無さ、経験の無さ、技術の無さといったことが原因のときもあります。はたまた、自分の認識の甘さ、心の甘え、練習不足といった場合もあるかと思います。

そういうことは「まぁいいや」で流さず、向き合ってください。フライト中やランディング時の事故に比べれば、スタチンなどのテイクオフでの失敗や事故が重大な怪我に繋がる確率は低いです。それでも状況によっては大きな怪我に繋がることもありますし、最悪の場合、命を落とす可能性もあります。

実際、私の身近な人でもテイクオフの失敗が原因で骨を折る大怪我をした方が何人かいます。大変な思いをしてまた空へ上がる人もいますが、そのまま辞めてしまった人もいます。どちらにしろ、そういう思いをする人はなるべく少ないほうがいい。

墜落して死にかけた俺が言うんです。間違いありません。大怪我はその瞬間もその後も長い、長い時間影響がでます。めちゃめちゃ辛いし、苦しいことが貴方の想像以上に大きな塊でぶつかって来ます。それも何度も何度もぶつかってきます。

そんな思いをする人はなるべく少ない方がいい。

んー、全体を通して本当に言いたいことをオブラートに包んで話過ぎたかもしれません。。。要は一番言いたいのは

甘えるな!ちゃんとしろ!!
テイクオフに自信がないのなら、しっかり練習しろ!!!
「まあいいや」で終わらせずちゃんと向き合え!!!練習しろ!!!
そうしないと、、、マジで怪我するぞ!!!

ってことです。

テイクオフなんて数秒の動作です。ですが、とても奥が深いです。環境のことを考え、道具の特性を考え、様々な選択肢から自分の思うベストを選択して、そのとおりになるように体を動かし、操作しなければいけません。その数秒のことがきちんとできるように向き合い、考え、練習してください。そうやって身につけた知識、経験、技術はテイクオフだけでなく、フライト中もランディングも時にも貢献して、より安全になるはずです。

だから、一つ一つのテイクオフを振り返って反省をして次に繋げください。
わからないことがあれば恥ずかしがらずにインストラクターに聞いてください。積極的に意見を求めてください。

そして何より!積極的にグラハンをしてください。ただ頭上安定する練習をするだけじゃなくて、わざと斜めに立ち上げて修正する練習をしてください。グラハンもテイクオフを想定した練習する視点になると、やれることが沢山あるはずです。

そうやって分析をして、練習をして、より安全でかっこいいパラフライヤーを是非目指してください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?