僕と午後ティーと、僕の人生
『1986年生まれであること』
実は僕はこれが密かに自慢だったりする。
本当に、こっそりと思っていたことなので、誰にも本気で話したことはない。
しかし、今こそ伝えるべきだと感じたので話しておく。
僕は、午後ティーと同い年なのだ!!
「だからどうした?」と言われるかもしれない。「そうなんだ〜」と流されるかもしれない。
なので僕は今まで我が子に、それも冗談のようにしか話したことがない。
なぜなら、CMなどに採用されているイメージガールな松浦亜弥さんこと『あややと同い年なんだぜぃ』と話す方が面白みがあるというか、理解されやすかったからだ。
今はそれすらもしてないが。
だが、僕の本心はそうじゃない。
なぜなら僕は、午後ティーと同じ年に生まれ、午後ティー好きな母に育てられ、自分も午後ティー好きになり、大人になった今でも午後ティーを愛飲しているからだ。
しかし、僕の家族は僕が単純に〝午後ティーが好き〟ということだけを知っている。まあ、一緒に暮らしていても言わなければそうなるのは当然なんだが。
ちなみに、どれくらい午後ティー好きと認知されているかというと、家族がコンビニに寄り道してから帰宅する際に「なにか買うものある?」と電話で訊かれて「じゃあ、なんか飲み物買ってきて〜」と僕が頼むと、迷わず午後ティーのストレートを買ってきてくれる。
それくらい当たり前のことになっている。
もはや定番のワンシーンであり、僕が言う〝飲み物〟イコール〝午後ティー〟であるかのような、お決まりの台詞となっているかもしれない。
あと、きっと僕の愛するパートナーは〝とりあえず午後ティーにしておけば大丈夫だろう〟と思っている。
僕がとても気分屋で、その日その時で食べたいものや飲みたいものがコロコロ変わったりする人間だからだ。
「昨日これ食べたいって言ってたから買ってきたのに〜」
「だって、これは昨日あの時に食べたかったから言ったんだよ。今じゃない……ごめんね?」
そんなやり取りをしょっちゅうしている。
というか、僕がさせてしまっている。
もしかしなくても苦労しているのだろう。
そんな僕が唯一といっていいほど年中無休で大好きなのが午後ティーなのだ。
だからきっと、午後ティーは僕のパートナーを安心させる役目も担っているのだろう。すごいことだ。
ちなみに、ストレートティーが無ければレモンティーだ。
もしも午後ティー自体が無かったら、他所様メーカーの紅茶を買って来てくれる。
そして、渡されるときには「午後ティーなかったよ、ごめんね?」と言われる。
「別に気にしなくていいよ〜、この紅茶も好きだし。ありがとう」と僕は答える。
それは本心からの言葉だ。
午後ティー好きから始まって、僕は紅茶が好きになっていた。
でも、種類によっては苦手なものもあるし、午後ティーがないときは無難に混ざり物が少ないものを選ぶ。
ハーブティーとかのように、香りの強いものが僕は少し苦手で。紅茶でも、初めて飲むフレーバーティーにはあまり手が出せないのだ。
紅茶はとても好きだけれど、全てが好きなわけじゃい。
それは、僕が〝午後ティーだから好きになった〟からだ。
もう二十年は昔の話だが、僕が小学生の時(つまり午後ティーも小学生な年齢だった時)の寒い夜、自宅近くにある自動販売機で飲み物を買ってきてと母に頼まれることがよくあった。
もちろん買うのは午後ティーだ。
母の好きなストレート味。
その時はホットの午後ティーは缶入りしかなくて、僕は走って1分もかからないくらいのところにある自動販売機にダッシュで向かい、小銭を入れ、ミントグリーンが鮮やかな缶の下にある、赤く光るボタンを押すのだった。
ガタンっと音を立てて缶が落ちてくる。
僕はそれを素早く取り出して、腕を使って胸元に抱える。
缶はホカホカに温まっていて、素手でずっと触っているとかなり熱い。
だから僕は抱きしめるよう腕に抱えるか、上着の裾をめくって包んだり、大きめのセンターポケットにしまったり……エコバッグのような袋を持参することはしない。
服ごしで、カイロ代わりに午後ティーで暖をとりながら帰るためだ。
買ったばかりの午後ティーの温もりを一番に味わえる……
それが真冬の寒さにあってお使いに勤しむ僕の密かな楽しみだった。
午後ティーが僕を温めてくれるから、帰りは走る必要がない。
今、ホットの午後ティーはペットボトルに入っていて便利だし、火傷しそうになることもない。
温かい存在感はそのままだ。
だけど僕はときどき思うのだ。
あの懐かしい、熱々のミントグリーン色した缶入りの午後ティーを、また飲んでみたいなぁ……と。
僕は午後ティーと一緒に育った。
僕の隣にはいつも午後ティーがいた。
今は他にも家族が増えて、最愛のパートナーと子供達と、その真ん中に午後ティーがいる。
僕がストレートで、僕のパートナーは無糖のストレート。
長女はミルクティーで、次女はレモンティー。
そして昨年の春に生まれた長男は、全種類が大好きだ。
一歳半の長男は、言葉はないが食に関する態度だけはハッキリしていて、好きと嫌いの反応が恐ろしく顕著で頑なだ。
その長男が、幼児のくせにジェスチャーで、全て〝美味しい〟と示してくる。
午後ティーの旨味をわかっているヤツなのだ。さすが僕の息子である。
そんな午後ティーを囲む一家。
僕と午後ティーは同じだけ年をとり、学びを重ねて改善を積み重ね、様々な自分を作り上げてきた。
きっと僕の人生は、これからも午後ティーとともに成長し、ファンを増やして行くのだろう。
まあ僕の場合、創作家としての知名度は、午後ティーの足元にも及ばないのだが(笑)
少しでも近づけるよう努力したいものだ。
もちろん、傍にいる午後ティーに支えられながら……
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