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夢日記

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物語な夢のログ。 思い出せるうちに、思い出せるだけ。勿体ないので書いておく…
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無気の夢

 かつて世界は美しく、青と緑の天地が広がっていた。その時代を生きぬいた最後の人々は、沈みゆく世界とともに多くの命と文明を失ったが、神が与えた花光の片鱗を身に取り込んだ者だけは生き残る。水中で生きるために必要な進化の基盤を子孫に引き継ぐことで、どうにか命の連鎖を紡いでいた。  今や世界の全ては深い海の底。僅かに残る陸地は濃厚な毒素が漂う〝死地〟となり果てた。水の星と呼ばれるに相応しい、色濃い水に満たされた世界となっている。  海の底に自然光が届くことは無く、昼でも暗闇が支配す

崩壊の夢

 いつもは慎重派で腰が重く、優柔不断だとか言われている大臣が、この時ばかりは迅速だった。それこそ、決断が早すぎるという珍しい批判があがるほど。大多数の家臣はもう少し様子を見て判断すべきではと提案した。しかし大臣は答える。 「此度の事案は見逃せない。いつものようにしていては国が滅びてしまうのだ。どうやっても隣国との戦争は避けなければならない。そのためには春日の山を取られるわけにはいかない。もしも彼の地が寝返れば、我が国はひとたまりも無い。一刻を争う事態なのだ」と。  そうし

幻想の夢

 物語の舞台となるのは、大樹の幹や根の中にある魔樹学校。ソファーやベッドが生きているかのように喋ったり動いたりできる、精霊の国みたいな世界観だ。暗くて古めかしい反面、幻想的で美しいその世界には、魔法のような精霊エネルギーを使える人がいて、魔樹と呼ばれる大樹はそのために(能力を開花させた年少者が集って制御方法を学ぶために)ある学校であった。  校内における主人公二人の立場は対照的で、旧家と新興貴族のような派閥格差による隔たりがあり、まるで敵対関係にあるかのようにいがみ合っている

復讐の夢

 とあるホテルで紳士が悪人に殺され、運び出されていたことを後に知り、それぞれ復讐のために犯人を殺しにいく若い女性や老婆の物語。  軽犯罪で収容されていた若い女性は、監獄から脱出する。その際、それに巻き込まれる形で(手違いで)高温の檻に閉じ込められた囚人が二人。彼女たちは身体が内側から溶けて苦しみながら死んでいった。  障害があって耳が聞こえない女性だが、なぞの方向感知能力があるらしく、大海原を泳ぎ続けて自力で他国までたどり着き、悪人を殺そうとした。衝動的で短絡的なそれは

夢が見せる物語の記録

 夢のなかで夢だと自覚して身を任せながら見る夢と、夢だと気付かないまま体感するように見る夢と、起きた瞬間に忘れてしまった夢と。  リアルで生々しい感覚のもの、物語を読んでいるような他人感覚のもの、ビデオカメラで追っているような映像体験型のもの……脳が見せるビジュアルは様々だ。  せっかくなので面白いものや記憶に残っているものだけでもと、メモするようになったのは最近になってからのこと。  書いてみると、一日に複数の短い物語(夢)をみることもあれば、映画のように長い長い物

陰謀の夢

 山間にある小国は、麗しき女王の治める国。数年の停戦を経てようやく戦争を終わらせ、敵国と不可侵条約を締結させたばかり。  有名な「砦の戦い」では多くの仲間・家族が生き埋めのようにして死んでいった。そこで生き残ったのは私と妹だけ……だが、失ったものを嘆いても始まらない。守れた命を大切にして、戦ったことを誇りに思おう。これから自分たちは中央の土地を離れ、地方の復興に貢献しながら、2人で生きていくのだ。  半動物の姿になって、久しぶりに冬の川辺で遊んでいた。薄氷をよけて森の奥

司祭の夢

「……あなたがフランネル輔祭?」  シャルティーは密かに驚いた。女性の聖職者は非常に珍しく、それゆえに中央で重用されることが多い。まさかこんな地方に派遣されてくるとは考えもしなかったのである。 「はい。カーター地方の教区より参りました。フランネル・マリーローズと申します。司祭のシャルティー様とお見受けいたします……あの、なにか私に問題がございますでしょうか。もし力不足ということであれば、代わりの者を手配いたしますが、こう見えて私は頑丈でして、僭越ながら体力面でご迷