「長唄 勧進帳(前半)」レポート
茶琴神明(ちゃごとしんめい)の店主であり、長唄の師匠でもある杵屋彌十代先生によるレクチャーライブ「音楽で紐とくにほん」シリーズ。6月の演目は、箏曲 「みだれ」、長唄「勧進帳」でした。
今回は、彌十代先生のデビュー演奏会です。十代目家元 杵屋彌十郎先生をお招きして一挺一枚の「勧進帳」で晴れ晴れしく飾りました。
国立劇場の舞台にも立つ超一流の彌十郎先生の演奏をアットホームな雰囲気で、間近で聴く「勧進帳」は何とも贅沢な空間です。彌十郎先生が自ら丁寧に曲の解説をしてくださり、また歌舞伎のセリフも交えて頂き、長唄初心者の私でも分かりやすく、その情景を思い描くことができました。前半は、弁慶の勧進帳問答や、義経の義経打擲(ちょうちゃく)によって難を逃れ、富樫が立ち去るところまで、そして、後半へと続きます。
その昔は娯楽が少なく、庶民たちに大人気の勧進帳だったそうです。何度も繰り返し観て物語は知っているのに、弁慶が義経に泣いて詫びるシーンでは、毎回観客も一緒になって大泣きしている、とまさに弁慶の泣きどころ(?)。
彌十郎先生の唄を通して、勧進帳の物語がすっと身体に浸透してくるような感覚があります。私が習いたての頃に彌十代先生が「長唄を習うと、日本語をよく理解できるようになります」とおっしゃていたことを思い出しました。長唄勧進帳は、いわば歌舞伎のダイジェスト判です。いいとこ取りの聞き応えある唄や三味線のフレーズは、何とも言えないカッコ良さが感じられます。
来月は、勧進帳(後半)も開催予定です。いよいよ弁慶の男泣きが見られるのでしょうか。
いまから楽しみです。
◼️茶琴神明(佐倉・文化芸術教室)
http://www.chagoto-shinmei.jp/
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