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抗体カクテル療法とは?

こんにちは、あきのくれです。
いつも記事を読んでいただきありがとうございます
今日は、【抗体カクテル療法】についてお話をします。

抗体カクテル療法ってご存知でしょうか
あのトランプ大統領が行ったことで有名な方法です。
どういうものか、簡単に勉強してみましょう。

抗体カクテル療法とは

まず、名前が気になりますよね
抗体はともかく”カクテル”とはどういうことなのでしょうか?
カクテルといえば、↑の写真のようにお酒を思いつくかと思いますが、この【抗体カクテル療法】というのはお酒に抗体を混ぜるわけでもなく、ドクターがカクテルを作るようにおしゃれに治療するわけでもありません。


「カクテル」の意味に答えがあります。

カクテルは、ベースとなるお酒とそれを割るためのジュースやソーダなどの飲み物や、他にも果物の果汁など色々なものを混ぜ合わせて作ります。そのレシピによっていろいろなカクテルがあります。

同じようにして、複数の抗体をカクテルのように混ぜ合わせて作るから【抗体カクテル療法】なのです。
そうすることで患者さんは、例えばAとBとCなど複数の抗体を持つことになり、ウイルスなどが変異しても免疫力を保つことができます。

変異とは

恐らく、もうみんなの耳にタコができているであろう”変異”という言葉。これはどういうことなのかを考えていきます

病原体が体に侵入してきたとき、免疫細胞の働きにより、時間はかかりますがその病原体にのみ反応する抗体を作り出します。
その抗体ができることにより、他の免疫細胞が活性化したり、抗体自身が武器となって病原体をやっつけたりする効果など強い免疫力を持つことができます。

しかし、この抗体がある病原体だけに反応するというのは、実は病原体すべてを認識するのではなく、病原体の一部にしか反応しません。
この抗体に反応するものを抗原といいます。
つまり、病原体が持つ【A】という抗原に対して、体の免疫は【A】に対する抗体を作り出しますが、これは病原体の一部の【A】しか認識していないということです。

これがもし、【A】が【B】の抗原に形を変えてしまったら、【A】に対する抗体しか持たない人は【B】を認識することができずに免疫細胞が上手く働かなくなります。

これが変異です。
この変異は、ウイルスであれば、とくにRNAウイルスなどで起こりやすいです。RNAウイルスにはインフルエンザウイルスなどがあります。

インフルエンザウイルスはとても変異が起こりやすく、予防接種でワクチンを打ったとしても、インフルエンザの流行期にインフルエンザが変異してワクチンが無効になってしまう場合があります。

それなら、色んな種類の抗原に反応する抗体を作り出して、体に打つことが出来れば、例えインフルエンザウイルスが変異したとしても、予防できる確率はグッと高くなります。これが抗体カクテル療法です。

免疫システム

だいたいどんなものがか分かったところで、免疫システムについてお話していきましょう。

専門書を参考にはしていますが、免疫システムは非常に複雑で厄介な領域なので、本当に触り程度に理解出来ればと思います。

さて、まず
【免疫】ですね。
冒頭から当たり前のようにこの言葉を使っていますが、いったいどういうものでしょうか
それは、
細菌やウイルスといった外敵などから体を守るための機能です。

この機能があるから、世界に非常にたくさん存在する病原体から身を守ることができ、また、一度病気にかかったとしても治癒を早くしていくことができます。

インフルエンザウイルスなどのように病気として症状が出るもの以外にも、”日和見感染症”というものがあります。
帯状疱疹やAIDSなどがありますが、これは体の免疫機能が低下した時に症状として出てくるものです。

帯状疱疹やAIDSを起こすウイルスは、一度症状が収まったとしても体から消えたわけじゃなく、体の中に居続けます。免疫機能が正常に働いているうちはその力によって抑えられていますが、免疫機能が落ちた時に暴れだします。


このように、もし体に【免疫機能】なかったら外敵だらけの世の中では生きていくことはとても難しいことです。

この免疫機能を持つのが
血液中やリンパ液などに含まれている【白血球】です。
正確には
好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球(大きく分けてTリンパ球、Bリンパ球がある。※Tリンパ球は更にその機能から沢山の種類がある)、単球があります。

単球の仲間である樹状細胞というものが体に入ってきた病原体などの異物などを食べて、これを消化しその一部を他の免疫細胞に見せることで、免疫反応が始まっていきます。

ここからはとっても複雑なので、免疫学者さんたちに怒られるかもしれませんが、かなり割愛します。

この病原体の一部に反応するBリンパ球が、その病原体の一部(抗原)に対する【抗体】をたくさん作り出していきます。
この抗体が病原体などにくっつくことで、それを目印として他の免疫細胞が病原体をやっつける力を強くしたり、抗体自身が引き金となって病原体をやっつける効果を発揮したりします。

変異と免疫システム

このように抗体が作られていくわけですが、完璧ではありません。
冒頭でも言いましたが、病原体の”一部”と反応するというのがポイントです。インフルエンザウイルスなら、インフルエンザウイルスそのものと判断できる抗体を作り出すのではなく、あくまで【インフルエンザウイルス】の一部と反応できる抗体なのです。

なので、もし、インフルエンザウイルスが抗原の形を変えてしまったら、せっかくBリンパ球が作った抗体とは反応することができずに、感染してしまうというわけです

この変異はランダムで起こると言われています。
ウイルスは体にある遺伝子を複製するシステムを使って自分自身を増やしていきますが、この複製するシステムというのは実は完璧ではありません。

遺伝子を複製し、その遺伝子の情報からタンパク質を作ることにより、生物の体は維持されています。
 ですが、物の模写を書く時に、ちょこっと違う書き方をしてしまうように、複製された遺伝子の情報が変わってしまうことがあります。

この遺伝子の情報が変わってしまったことにより、作られるタンパク質(正確にはアミノ酸配列)が変わってしまい、違うものに変わってしまうことがあります。

これは狙ってやっているわけではありません。
この変異はランダムでおこっており、それによりたまたま毒性が強くなるか弱くなるか、免疫細胞に見つかりにくくなったり、見つかりやすくなったりいろいろな効果が出てきます。

当然何も起こらない変異もあります。

しかし、その中で、より”効率よく感染しやすい体の構造”を作ることができたウイルスなどの病原体というのは、より感染しやすくなり、ワッとたくさんの人や動物に感染することができてたくさん子孫を増やす事ができるようになります。

こういった感染力が強いウイルスというのは生き残っていく可能性が高くなります。

抗体カクテル療法

変異をしてしまい、以前より感染しやすくなり、免疫細胞に見つかりにくいような変異ができた病原体というのは、例えワクチンにより抗体ができていたとしても、体の免疫機能をすり抜けて感染することができます。

その問題を解決した方法が【抗体カクテル療法】というわけです

ウイルスなどの病原体に一度感染した人はその病原体に対する抗体をたくさん作ることができます。その中でも、特にたくさん抗体を作ることができる人を探して、その人の血液を取り、Bリンパ球を取り出します。


そして、そのBリンパ球が持っている、抗体を作る遺伝子部分をクローン(複製)し、永久に増え続ける能力を持つ細胞に取り付けます。そうすれば、その細胞はとてもたくさんの抗体を作ることができるようになります。

ここで、Aという抗原に反応できる抗体をつくるBリンパ球、Bという抗原に反応できる抗体を作るBリンパ球、Cという抗原に反応できる抗体を作るBリンパ球からそれぞれ遺伝子を取り出して抗体をたくさん作り出し、それを混ぜ合わせて人体に入れれば、その人はAとBとCに対する免疫力をつけることができたことになります。

つまり、ウイルスの抗原がAに変異してもBに変異してもCに変異したとしても、抗体カクテル療法をうけた患者さんはAとBとCに反応できるため、ウイルスをやっつけることができるというわけです。

まとめ

それではまとめていきます。
抗体カクテル療法は、複数の抗原に対する抗体を人工で精製して混ぜ合わせて患者さんに打つ方法です。

これを使えば、例えウイルスのようにたくさん変異をする病原体であっても免疫力を維持することができます

免疫というのは、体がウイルスや細菌などの病原体から体を守る防衛システムです。
この免疫というシステムは非常に複雑で難しい勉強となりますが
今回は白血球の一部である【Bリンパ球が抗体を作る】と覚えておきます
この抗体があることで、他の免疫細胞が活性化したりして病原体をやっつける力が上がります

このBリンパ球が作る抗体は、病原体の一部(抗原)にしか反応できません。なので、もし病原体側が抗原を変更してしまったら、Bリンパ球が作った抗体が病原体に対して反応しなくなり、免疫細胞が上手く働いてくれなくなります。

これは、例えば「インフルエンザウイルスのワクチンを接種したのに、インフルエンザウイルスにかかってしまった」という例がこれによるものです。

抗体カクテル療法は、たくさん抗体を作る事ができるBリンパ球の遺伝子を取り出し、抗体をたくさん作ります。

この抗体を例えばAに反応する抗体、Bに反応する抗体、Cに反応する抗体など、複数の種類の抗体を人工的に作り出し、混ぜ合わせて患者さんの体に入れれば、たとえウイルスが変異したとしても、その患者さんはAとBとCであれば免疫反応を起こすことができるため、ウイルスなどの病原体をやっつけることができる

というものです

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