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「辛口って辛いですか?」問題

先日Twitterでサムネにある投稿をしたところ、様々な意見が寄せられました。

乱暴にざっくりまとめると、店舗サイドからの意見として多かったのが「その通り!」という肯定的なもので、ユーザー、客サイドからの意見として多かったのは「何で聞いちゃいけないの?」という疑問、あるいは否定的なものでした。
この結果からして、この問題を見事に表しており、だからこそ問題提起したわけです。

何も店は「辛いかどうか聞くな」と言っているわけではなく、聞いても良いけど具体的な例を挙げて比べる形で聞いてくれないと答えにくいよという話なんです。
何しろ辛さ耐性というのは本当に人によって千差万別であり、美味しいかどうかということと比べると圧倒的に振り幅が大きいものです。

ちなみに僕は完全に客側の人間ですが、多くのカレー情報を発信しているので「それ辛いですか?」と聞かれた経験が結構あります。
「お前の辛さ耐性知らんがな」と答えたいところを、大人なので「僕にはちょうど良い辛さでしたが辛さ耐性は人によるので何とも言えません」的に優しく答えていたのですが、こう答えられたところでモヤモヤしません?
結果「わからない」と答えているのですから。
でもこれはね、わからないが唯一の正解なので、質問の仕方が間違っているんです。でも多くの人はそれに気づいていない。だからこそ本件のような問題が多発するわけです。
これ、聞かれた方もモヤるし聞いた方も大抵モヤるんですよ。
お店の中には「辛口は市販の〇〇のルウより少し辛いくらいです」など明確な答えを用意しているところもあり、素晴らしいなと思うのですが、この「少し辛いくらい」というのも厳密に言えば人によりますよね。

Twitter上で僕はこの質問がどういう質問と同様なのかいくつか例を出しました。

「北海道って寒いですか?」とか(場所と時期と寒さ耐性による)、「お化け屋敷って怖いですか?」とか(場所と客の性質による)、「ベンチプレス40kgって重いですか?」とか(鍛え方次第)、「アイドルって可愛いですか?」とか(そもそも好みの問題)と同じくらい答えようがない困った質問なのですよ。

と。
これで伝わってくれれば良いと思っていたのですが、どうやら伝わらなかった方が少なからずいたようで、だからこその賛否両論様々な意見だったのでしょう。

そしてこれは辛さについてのみならず、美味しさについても言えることです。
僕は時折「それ美味しいですか?」とSNS上で見ず知らずの方に聞かれることがあります。
「文章読めや」と思いながらスルーするようにしています。
僕は文章を読めば美味しかったのかそうではないのかできるだけわかるように文字数制限ある中で書いているつもりです。
それなのにそういう質問をしてくるということは読む気が無いのか読解力が無いのかどちらかなので、リプしたところでそれを理解できるか怪しいと思うのでスルーなのです。

僕はまだ良いです。
お店にとって辛さ問題同様困るのは「おすすめはどれですか?」という質問だと思います。
おすすめできないものをメニューに載せないでしょう。
また、目線を変えればお店のおすすめというのは味のおすすめとは限らず、食材余りそうで早く使い切りたいから今日はこれがおすすめですよと言っている場合も少なからずあるわけで、そのようなお店がおすすめ表記あるからと言ってうちもそれと同じに考えないでほしいというお店の気持ちもとてもわかります。また、クセのある食材や攻めたメニューをおすすめしたくとも、ある程度理解力がないとわからない美味しさのものだったりすると、質問者がどれだけ理解力があるかがわからないので無難な方を答えるべきか本当のおすすめを答えるべきか迷うなど、とにかくおすすめについて聞かれても真剣に作っているシェフほど答えにくいものなのです。
が、わからずに聞いてしまうお客さんの多いこと。

飲食業に携わったことが無いならわからなくて当然だとも思います。
そして自分でお金を払って食事をとるのだから、できるだけ美味しいものを食べたくて聞く気持ちもわかります。
だからこそ、

大事なのは聞き方なのです。

「辛口って辛いですか?」
ではなく、
「ここの辛口はCoCo壱で言うと何辛くらいですか?」
と聞けば、そこの店主がCoCo壱に詳しければ答えやすいでしょう。
ちなみに僕はCoCo壱行っても辛さ指定せず卓上のスパイスで調整するので2辛だの3辛だの言われてもピンときません。エチオピアの20くらいですと言われるた方が的確なイメージができます。同様のお店もあるかと思います。

「おすすめはどれですか?」
ではなく、
「シェフがご自分で今日食べたいメニューはどれですか?」
と聞けば、相手の感覚は関係なく自分の感覚を言えば良いので答えやすいでしょう。

結局はそういう気遣いが大事なのです。
お店によっては辛さについてもおすすめについても明確な答えを予め用意しているところもあり、それはそれで素晴らしいのですが、こと、カレー関係のシェフにはめちゃめちゃ美味しいものを作るけど接客が苦手という方も少なからずいて、そういう方ほど上記の質問には困ってしまうのだと思います。
僕自身の感覚になりますが、一番大事なのは味です。だから接客を得意としないお店も味の好みが合えば通います。同時に、接客が良いお店の素晴らしさも理解しています。味はぼちぼちまぁまぁでも接客が気持ち良いので通うお店も同様にあります。

お店を選ぶのは客側ですが、客を選ぶのは店側だということも忘れてはいけません。
常に言っていることですがお客様は神様ではなく、お客様以上でも以下でもないのです。
そして、店と客は完全に対等です。
金を払っているから偉いわけではありません。その金額以上の味なりサービスなりを提供してくれているからこそまた行きたくなるわけで、そうなるとこれは完全に対等なわけです。

だからこそ、客と店はお互いリスペクトの精神を忘れずにいたいものです。
とうわけで「辛口って辛いですか?」問題。
改めて色々なことが見えて個人的に興味深い物となりました。

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