見出し画像

「宇宙×〇〇」の時代がやってくる

 フィンランド発の企業ICEYE(アイスアイ)と東京海上ホールディングスが資本業務提携を結んだ。
 気候変動に伴った自然災害や異常気象がグローバルな社会課題となっている。その解決に向けさまざまなデータ、AI、IoTと言ったテクノロジーが果たす役割に対する期待は大きくなっている。
 ICEYEは、SAR衛星の製造から保守・運用、衛星画像の高度な解析などを一貫して行う技術を持った企業だ。民間では世界最多となる計16機の自社SAR衛星を打ち上げており、天候や昼夜を問わず高精度のデータを高頻度で取得し、世界各地の政府や企業に提供している。
 東京海上グループの東京会場日動火災保険株式会社とICEYEは、2020年12月から水災発生時の保険金支払い迅速化に向けた取り組みや、災害発生時における自治体・ボランティア団体の支援といった分野で協業を進めてきた。

 SAR(合成開口レーダー)衛星は太陽光を光源として撮影する。通常の撮影原理とは異なり、自ら電波を照射し、その反射情報から地表面を観測する。このため天候の影響を受けにくく、悪天候時や夜間においても地表面の情報を取得できる。

 東京海上グループとICEYEは、ICEYEが持つ「Daily Coherent Group Track Repeat」に代表される高精度かつ高頻度に地球を観測する技術と、保険業界に特化した技術開発体制を活用し、自然災害に関する損害サービスのDXや新たな商品・サービスの共同開発などを進め、さまざまな社会課題の解決に貢献していく。
 主な取り組みとしては、風災発生時の損害サービス高度化・海外グループ会社における各種サービスの高度化・衛星データを活用した事故予兆サービスの開発が挙げられる。

風災発生時の損害サービス高度化
 風災が発生した際、特に屋根の被害は写真撮影が難しく、被害状況の把握や修理業者の手配に時間を要する。今後ICEYEと連携し、衛星データや風速などの各種データを組み合わせて解析することで、屋根被害の有無や程度を推定する仕組みを構築。衛星データをもとに風災による屋根被害発生を能動的に保険会社が把握することで、修理業者の早期手配や修理着工の早期化を実現する。

海外グループ会社における各種サービスの高度化
 衛星データを活用し広大な農園における災害被害を把握するなど、海外の農業保険の保険金支払いプロセスを迅速化する取り組みや、自然災害等で観測された指標に基づき定額の保険金を支払う保険(インデックス保険)の開発などを、海外グループ会社で進めていく。また、日本で衛星データを活用してきた知見を活かし、海外グループ会社における自然災害発生時の対応に展開していく。

衛星データを活用した事故予兆サービスの開発
 衛星の強みである広域性や、災害・天候等の外部環境に左右されないなどの特徴を活かし、地盤変化や施設の状態変化のモニタリングを通じて事故の予兆を検知し、アラートを発信するサービス等の開発を進めていく。

 このニュースは、宇宙産業があらゆる業界にとって必要不可欠な存在となる未来を示している。今ではあらゆる著名人が宇宙産業に投資をしている。イーロン・マスクが創業したスペースXは、再利用可能な大型ロケットの開発を進めている。アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスが保有するブルー・オリジンも有人飛行に成功した。ホリエモンが創業したインターステラテクノロジズも国が打ち上げる費用から1桁安いコストで小型ロケットを宇宙へ飛ばしている。
 このような企業はロケット開発を目標に掲げているわけではない。その先にある衛星データの活用を目指している。衛星は地球上にある全てのモノのデータを取得することができ、それが実現すればあらゆる新規ビジネスが生まれる。そして、今回のICEYEの取り組みはそれが可能であることを示した。今は「IT×〇〇」が当たり前の時代だが、将来的には「宇宙×〇〇」が当たり前になる時代が来るだろう。

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/viewer.html?pdfurl=https%3A%2F%2Fwww.tokiomarinehd.com%2Frelease_topics%2Frelease%2Fl6guv3000000dqd9-att%2F20220208_j.pdf&clen=157053&chunk=true


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?