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炭素税はカーボンニュートラル実現を可能にする

炭素税とは企業や家庭が排出する二酸化炭素量に対して課される税金のことで、気候変動の原因である温室効果ガス使用削減を目指す経済的な施策だ。北欧などの環境先進国をはじめとして世界各地で導入されており、日本での本格導入も検討されている。

消費者にとって価格は商品を選ぶ際の重要な指標で、炭素税が導入されればCO2排出が少ない製品・サービスが優先的に選ばれることになる。企業側も消費者に選ばれる環境に優しい製品の開発に力を入れたり、自然エネルギーに切り替えるなどのCO2排出削減をより推進するだろう。

一方、炭素税の負担を避けコスト競争力を確保するために、国内企業が生産拠点を海外に移すなど、産業の空洞化が起こる可能性もある。世界各国が足並みを揃えて導入しなければ、炭素税を取り入れている国の企業だけが不利になってしまう。

国内企業が炭素税を課税されても競争力を失わないよう、国境炭素税も検討されている。「国境炭素税」とは、多くのCO2を排出している輸入品に対して税金を課す仕組みだ。これにより、国内市場、外国市場における競走条件を均等化し、気候変動対策をしている企業が不利になることを防ぐ。国境炭素税は関税なので、多国間の合意は必要なく、その国の判断で課税することができる。一方で、貿易戦争などの新たな火種となることも懸念される。

炭素税は、1990年初頭、北欧を中心に導入が始まった。その後2000年代には欧州や北米が、2010年代以降は日本をはじめとしたアジアや南米などで炭素税が導入された。世界で2番目に炭素税を導入したスウェーデンは、2017年の時点で世界最高の税率となっている。スウェーデンは、炭素税を導入した結果、CO2排出量の削減とGDPの成長を料率し、環境と経済成長のデカップリングに成功している。

普段の生活ではあまり感じることはないが、日本でも2012年に炭素税に相当する「地球温暖化対策のための税」が導入されている。しかし、その税率は諸外国と比較して極めて低い水準となっている。税率が低い理由は、そもそもの目的が異なるからだ。諸外国は炭素税の導入によってCO2の排出量削減を狙っており、税収の使用用途は様々だ。一方、日本の場合、地球温暖化対策税の税収はCO2削減のために使われる。海外では税率の引き上げにより省エネ行動を促す「価格効果」を目指しているのに対し、日本は炭素税の「財源効果」によるCO2削減を主軸としている。炭素税によって確保された財源を自然エネルギー導入拡大や低炭素技術の開発支援に活用し、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す。

炭素税によって本当にカーボンニュートラルの実現は可能なのだろうか。炭素税が直接的にカーボンニュートラルの実現に貢献することはないだろう。そもそも炭素税は経済学者によって提唱された仕組みであり、地球環境学の観点からカーボンニュートラルへの実現可能性は説明されていない。環境科学者の意見を交えて、カーボンニュートラル実現のための現実的な方法を模索する必要がある。

一方、炭素税が間接的にカーボンニュートラルを実現させる可能性はある。炭素税による負担を避けるため、企業はCO2を排出しない組織づくりをしていくだろう。また、炭素税がESG投資を促進させている側面もあり、ESG投資は企業のSDGsを加速させる。このように炭素税は企業の環境配慮の意識を高めており、これはカーボンニュートラル実現の可能性を大きくしている。


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