積み立てられた年金の行方 ~アセットアロケーション~

国民から集められた年金積立金は1兆6000億円と言われている。このお金はそのまま65歳以上の高齢者に渡しているわけではなく、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用していて、累積の運用益は約100兆円にもなる。これは世界の年金基金と比べてもかなり優秀な成績である。年金と聞くと、多くのひとは不安要素を抱いていると思うが、日本の年金機構は他国と比べると優秀なのだ。少子高齢化という人口ピラミッドの影響をカバーしきれているわけではないが。。。それでも、運用面では外資系金融機関で経験を積んだベテランを呼んで、かなりいい成績を上げている。

では、これらの積立金はどのように利益を生んだのだろうか。株式と債券の投資割合の調整(アセットアロケーション)が鍵となる。

一般的に、中期的にみると株式と債券の価格は反比例すると言われている。機関投資家が、限られた資産のうち、株式の占める割合を増やすと必然的に債券の占める割合は減り、株式の占める割合を減らすと必然的に債券の占める割合は増える。その結果、株式と債券の需要は相反するため、それぞれの価格は反比例する。この時、資産における株式と債券の割合が同じになるように調整することで、資産を増やし続けることができる。

わかりやすく説明するために、株価を100円、債券価格を100円とする。資産10,000円の人が50%ずつ株式と債券を保有するように調整する。つまり現時点では株式を5,000円、債券を5,000円保有している。
次に株価が110円に上がり、債券価格が90円に下がったとする。この時、株式を5,500円、債券を4,500円保有している。資産における株式と債券の割合がそれぞれ50%になるように、株式を5,000円、債券を5,000円保有するように調整する。
次に株価が100円に下がり、債券価格が100円に上がったとする。この時、株式を4,545円、債券を5,555円保有している。資産における株式と債券の割合がそれぞれ50%になるように、株式を5,000円、債券を5,000円保有するように調整する。すると、(4,545 - 5,000) + (5,555 - 5,000) = 100円の利益が生まれるのだ。

GPIFはこの手法を駆使し、これまでに多額の利益を生み出してきた。多くの日本国民にとって「年金」というワードは負のイメージを連想させるものになっているが、一方で世界に誇れるレベルで運用を行なっている機関でもあるのだ。

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