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木こり2年目。ちょいと楽しくなってきたぞい。

 裏山の伐採作業に参加するようになって一年と数ヶ月が経ちました。もともと山歩きが好きで、琵琶湖周辺の山々をトレッキングしたり、犬の散歩ついでに近所の山に歩きにいったりしていたのですが、ここ数年の台風被害や土砂崩れを見るにつけ、せめて登山道とその周辺だけでも整備したいなと思っていました。

 手の入っていない山の斜面には杉や檜が密集していて、それら一本一本は細く、根も浅いためか、台風で軒並みなぎ倒されて山は荒れ放題でした。倒木が登山道をふさいでしまうだけでなく、根こそぎ倒され地肌ごとえぐられた斜面が土砂崩れを起こしていたり……。そういう場所がいくつもあって、放っておくとさらに次の台風で荒地が広がるという具合でした。それで個人的な興味から、時間がある時にでも倒木の撤去や間伐の手伝いをやりたいなと思っていたわけです。

 そんなことを考えて暮らしていたら、不思議なものですね、ちゃんと出会うことができました。『山守の会』。去年の夏頃に手伝っていた近くの美術館を経由して、地域の山林整備をしているグループのリーダーと知り合うことができました。

 とは言え私は、自分自身がチェーンソーを使ってバシバシ木を伐るようなイメージはしてなかったんです。ベテランさんとかが伐った木を片付けたり、雑木をノコギリやナタで整理して登山道を確保するような感じ、そんな「山のお掃除係」的なものをイメージをしていたんです。それでまあ、足腰にはそこそこ自信はあったので、雑用ならできるだろうと思って参加してみたら、初日にヘルメットとグローブと重た〜いチェーンソーを渡されまして・・・。

「はい、じゃあ伐ってみて」

 みたいな。笑。いきなり!なスタートでした。

 「ガソリンがここで、オイルがこっちで・・・」

 と、さらっと説明を受けましたが、機械の動かし方に関しては「茶刈り機」と全く同じ構造なので、すぐに理解できました。ただ、木を伐り倒すというのは、茶を刈るのとは全然違うわけで・・・。

「で、倒したい方向に受け口を作って、はい、こんな感じで、で、反対側からこう伐って。この辺をね。はい、じゃあやってみて」

 と、再びさらっとご説明いただいて、いちおう理屈としては理解できたんですが、いざ伐ってみると想像以上にチェーンソーが重く、加えて足元は急斜面。積み重なった枯葉や腐葉土が崩れてくるので、足場がずるずる滑っておっかない。なんとか受け口は付いたものの、セオリー通りに倒れてくれるほど自然の木々は単純ではなく、幹の途中から曲がっていたり、二股、三股に分かれていたり、密集しているからすぐに他の木に引っかかってしまったり、一本倒すだけでコップ3杯分くらいの冷や汗が顔面を流れ落ちていきました。汗が目に沁みるだけでなく、木屑もペシペシ顔に飛んでくるし・・、初日はどろどろ、ヘトヘト、ひやっとする危ない場面もありつつ、なんとか終わりました。

「辞めるときは返却してね」

 と言われていた新しいヘルメットを抱えて、いや、どうしようか、どうなるのかなと、帰宅後にはちょっと考えてしまいましたね。続けられるだろうか・・と。

 他の男性メンバーたちとは違い、自分には腕力がないですから、とにかくチェーンソーが重くて思い通りに扱えない・・・という大きな悩みがありました。チェーンソーの重みに負けるから、周辺の状況や次の展開などを冷静に観察することができず、ずっと余裕がない状態で、ただただ冷や汗をかくばかり。上達も何もなく、チェーンソーが木に挟まれる度に、

「すみません!挟まって抜けません!助けてください!」

 と、ベテランさんを煩わせておりました。ほんと、私が行くと作業の邪魔になる感じでしたから。もしこのままずっとチェーンソーの重みに負けてチームの足を引っ張るだけだったら続けられないなと思ってました。ただ、チームの方から「もう辞めてくれんか?」と言われることはなく、春先には私用に新しいチェーンソー(リーダー曰く、女性用のチェーンソー。たぶん違うけど。笑)も買ってもらって、なんとか少しでも伐れるようになりたい、迷惑がかからない程度にやれるようになりたいという思いで続けてきました。

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 あれから一年が経過して、なんとか細々とですが続けさせてもらって、最近ようやく木を伐る面白さが分かり始めてきたように思います。「今日はまずまず伐れたな」と思える日も出てきました。なんとか一年続いたので、かねてから「買っていいよ」と言ってもらっていた「木こりブーツ」と「ロガーパンツ」も新しく買ってもらいました。足裏のグリップも効くし、パンツのおかげで安心感を持って動き回れるようにもなりましたし、すごく作業がしやすいです。チェーンソーは相変わらず重いですが、「チェーンソーが挟まって抜けません問題」は、技術的な理解が進んで以前ほどは頻発しなくなりましたし、挟まっても自分でなんとかできるようになりつつあります。木を倒す方向だったり、枝のかかり方や、引っかかった木の落ちる方向など、いろいろ予測をつけて、ロープやテコを使えるようにもなりました(まだまだ勉強中ですけど・・・)。

 木と向き合った時に、木の状態や周辺の状況を冷静に観察してから取り掛かれるようになってきた。気持ちにもちょっと余裕が出てきたと思うんですね。まだまだ下手ですが、こうしたい、次はああしよう、こんな風にしたら効率がいいんじゃないか、など、頭を動かせるようになってきたことが、やっぱりすごく嬉しいです。それで最近は俄然やる気が出てきて、これから枝打ち(木登りの技術が要りますが・・)だったり、いろいろな技術についても自分なりに勉強して、ちょっとでもチームの役に立てたらいいなと思っています。

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 木こり2年目。ちょいと楽しくなってきました。もうちょっと腕の力をつけて、しっかりと伐れるようになりたいです。そしてつくづく思うのは、自分には知的労働よりも肉体労働が向いているということ。笑。やっぱりね、体を動かすのは気持ちいいですよ。特にこんな森の中で、自然の中で働くというのは。知的労働vs肉体労働という対立軸を作って、格差だ格差だと騒ぐのは、いかにも都会的インテリのものの見方だよなぁって、ここ数年はそんなことについて考えています。また書きますよ、木こりの合間に、茶刈りの合間に、鹿の解体が終わったついでに。笑。ではね。

安希



 

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