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昔読んだときより面白い

2023/07/13

 お風呂から上がって、洗面台の鏡に映る自分に驚愕した。
 左右の肩にひとつずつ、変なものが生えている。
 木の芽のような、ゴジラの背びれのような、大きな突起物。肌の色が透けていて、内部が禍々しい赤色に光っているのが見える。触るとピリピリと痛い。神経がむき出しになっている感じだ。
「あぁ、肩が凝ってるんだなぁ」と苦笑いし、すぐに「いやいやいや、肩凝りとかいうレベルの話じゃない!」と思い直したところで、これが夢であることを認識し、急速に意識が覚醒に向かっていった。
 目覚めて、いちおう両肩を触ってみた。
 もちろんそんなものは生えていなかった。
 分析するまでもなく「肩が凝っている」という内容の夢だった。

 いい夢って、ほとんど見たことがない。
 95%は悪夢。自分の悲鳴で目を覚ますこともときどきある。
 あと、夢に色がついていない。だいたいモノクロです。だから今朝は珍しかった。

 終日、やるべきことを淡々とこなす。
 人間~~~どうして君たち人間はそうなんだい〜〜〜???という気持ちになるが、私もどうしようもなく人間だ。

 明日から公開の『君たちはどう生きるか』の予約が、あまりにも宣伝をしないせいでガラガラだとTwitterで言っている人がいる。
 まさかジブリの、しかも宮崎駿監督の新作が、いちおう平日とはいえ初日にそんなわけが……と思って映画館のサイトを見たら、ガラガラとまではいわないけどいっぱい空席が残っていたので、吸いこまれるように予約してしまった。そんなつもりはなかったのに初日勢になってしまった。
 でも、勢いで観に行くのはいいかもしれない。
 最近は楽しみにしていた映画も、次に余裕ができた日に観よう……などと考えていたらたちまち2週間経ち、上映が1日1回になり、時間が合わなくて観に行けないまま終わる、というのが多いので。
 瞬発力、大事である。


2023/07/14

 
 書くべきものも、読むべきものも多いのだけど、なかなか集中して取り組めないことが続いている。
 どうしたらいいのだろう、いつかパフォーマンスが回復するものなのか、もはやこれが常態なのか、ならばそれは「能力がない」というのと同一ではないのか……ということをずっと言っている気がする。
 あまり同じ本を何度も読むほうではないんだけど、ここ2、3年、新しい本が読めないときは、昔読んだ本を読み返すことにしている。

 いまは花村萬月『渋谷ルシファー』を読んでいる。渋谷のバーを舞台に、そこに集うやさぐれたミュージシャンやアウトローたちの愛と暴力の人生を描いた連作短篇集。
 初期作品なので、描写が簡潔だ。
 そして、視点がびゅんびゅん飛ぶ。
 一般的な小説作法では安っぽく読みづらくなるとされる、同じ場面で複数の登場人物の主観を並べて書くことを平気で行っている。
 萬月先生は「視点の固定や統一」という概念がなかったらしく、デビューして2、3年経って、編集者から「あの、花村さん、もしかして……」と教わって初めて知ったというのをエッセイか何かで読んだことがある。
 いまどきの作家志望の人なら「それで新人賞を受賞して作家になれるのか」と驚くかもしれない。
 なれるんだよね。書くべきことが、すごい鋭さで書かれていれば。
 実際『渋谷ルシファー』は面白い。
 昔読んだときより面白い。これが再読のいちばんの喜びだ。
 私も少しは人の心や人生の哀歓のことがわかるようになったのか、シンプルな文章の行間から、身悶えするような切実な感情が伝わってくる。

『君たちはどう生きるか』を観る。
 感想は明日の日記に回しますが、私は面白いと思ったし、観た人と感想を交わしたいと思った。
 よいものを観た興奮のまま、外で晩酌する。 

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