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サカモトデイズ

2023/09/06(水)

 鈴木祐斗『サカモトデイズ』13巻を読む。
 この巻も、いろんなアクション映画やマンガが大好きなんだろうなぁという感じの、ケレン味のある(称賛の意味)アイディアが豊富な、複雑な構図の、スピード感あふれるバトルシーンがみっちみちに詰まっている。
「リオンみたいな柄が悪くていい女がリーダーシップを取って、癖のある男たちを繋いで仲間の輪を作っていた過去篇」っていいですよね……。過去篇なので、いまは当然その輪はばらけているのを読者はわかっているから、過去篇が楽しそうであればあるほど切ないのだ……。

 3巻が出たくらいのころに本屋で目に止まって「なんか私が好きそう」と思って買って、やっぱり好みだったので、それ以来読み続けている。
 そのころから、ジャンプからの推しが強い作品という印象がある。
 いい作品だから読んでほしい、さらに売れてほしいという猛烈なプッシュを感じる。雑誌の表紙になっているのもよく見かけるし、単行本にもブックマークなどのグッズがよくついている。ひと言でいえば贔屓されている。ネトフリでドラマ化されて世界中で人気になるとか、そういう大きな可能性がある作品だと期待しているのだろうか。

 元殺し屋のコンビニオーナーが家族と遊園地に行ったりする日常生活の中で、襲い来る敵を通行人に気づかれないようにいろいろ工夫して撃退するのが楽しいコメディマンガだったけど、巻を重ねればきっともう少しシリアスな展開になり、イケメンキャラも増えるのだろうと思っていたらやはりそうなった。
 コメディマンガだから演出としてそんなに違和感がなかった、ほとんどドラゴンボールみたいなノリの痛快アクションを、シリアスな展開になってもそのまま引き継いでいるのが面白い。当初から狙っていたのかどうかわからないけど、すごい手法だと思う。
 ほとんど空を飛んでいるような跳躍や、ビルをひとりで倒壊させるような攻撃も、とくに「異能」や「超能力」じゃないんですよね。あくまでも超人的な個人の身体能力として描いている。今どきのマンガはそういう設定をカチッと作り込むことが多いので『サカモト』は珍しいと思う。
 もし実写化されたら、その辺のバランスはどうするのかが興味深い。安易に再現したら(悪い意味で)ギャグになるから。

 しかし、週刊連載でこれを描くのは大変でしょうね。まぁ今のマンガはみんなそうだけど。「作画カロリー」が高そうな作品ばかりだ。ジャンプコミックスで巻末にアシスタントの名前を載せる作品だと、10人とかいるのは珍しくない。『サカモト』も1日かけてひたすら背景のビルの絵を描いているスタッフとかいるんだろうな……。

 キャラで好きなのはシンと大佛です。
 シンみたいに、慕っている師匠(坂本)にちょっとつれなくされながらも見守られ、大きく成長していく健やかな人が好きなのは私も歳を取ったのだろう……。昔だったらもっとスラーとか好きだったような気がする。
 大佛は「ゴシックな服で天然でぼーっとしてるけどわりと生意気ですごい怪力の女子キャラ」が嫌いな人はいないだろ? いや、いなくはないか。まあまあいるか。でも人気投票で3位だったというから、少なくとも大佛は男女双方の読者に好かれているに違いない。

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