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乳白色に沈む窒息

瀬戸際とはこういう感覚か、
なんて間の抜けたことを雨模様に思う、
水無月の暮れのこと。

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仕事をやめようと思った。ずっと思っていた。

自分で選んだ仕事だ。嫌いなわけがない。職場の環境だってすごく良い。
でも、向いていなかった。壊滅的に不得手だったのだ。
やればやるほど。進めば進むほど。
自分の至らなさが心に影を落とし、息が少しずつ、詰まっていく。

それが、ほんの些細なつまづきが、もう合図だった。体から、ふっ、と力が抜けるのを感じた。
心の底に空いた穴から止め処なく流れ出ていくものが、きっとやる気だとか、プライドだとか名前のついたそれで、

からっぽになっていく。視界が色を失っていく。

あぁ、もう限界なんだ。
好きでもなんでも、もう続けられないんだ。

悲しかった。
でも、何が悲しいのか。分からなかった。

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周囲が溺れている自分を、沈めてくれる人たちならまだ良かった。安物の悲劇に酔っていられた。
でも違うのだ。厳しい叱咤も説教も、
そこにはこちらに、
まっすぐ伸ばされた掌がある。

そこに込めた打算が見えないほど子どもでもない。
でも、それを含めた優しさに気づかないくらい鈍感にもなれない。

息苦しさと、優しさ。
たくさんの人たちが照らしてくれる光で暗闇が晴れて、
しかし、そこは出口の無い、
向かう先の見えない霧の真ん中で。

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歩き出さなくてはいけないのに、
灯りも、奈落も、何もかも。
甘い白はただ静かに、何もかもを包み込む。



ヒモ志望です。とっても上手に甘えます。