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「野又 穫Continuum 想像の語彙」 @東京オペラシティ アートギャラリー_20230905

東京初台のオペラシティーアートギャラリーで開催されている野又穫の個展(2023/7/6 - 9/24)に行ってきました。本当はこの前にSOMPO美術館「生誕100年 山下清展ー百年目の大回想」(2023/6/24 - 9/10)(2023/7/6 - 9/24)に行って美術館のはしごをする予定でしたが、10時開館に到着したところ長蛇の列で諦めました。

さて、野又穫作品を鑑賞するのは今回で2回目です。1回目は2018年松濤美術館で開催された「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」で、ひどく印象に残っていたので今回個展を見つけて是非行かなくてはと思っていました。(廃墟の美術史の当時の感想は最後に載せておきます、それはもうとても良い美術展でした)

11時開館で5,6人のお客さん

さて、野又穫さんは1955年生まれで東京藝術大学卒業後に広告代理店に勤めながら制作を続け、その後個展を開催しつつ作家に専念。2014年から2022年まで女子美術大学の教授をされていたそうです。

あまりそれ以上の情報がないのと、特段絵画を見る上で社会的状況や生い立ちが関わるような感じもなかったので、そのまま作品行きましょう。

まずバベルの塔を思わせるような、佇まい。

Land- Escape1 1992


こちらは自然と非自然的なものの調和というか、非自然的なものが自然的なものへ変化していくような不思議な感じ

Nowhere-1 1993

直線なのに丸みを帯びてる感じが気持ち悪いって言ってた

Subline-23 1990

植物園?ドバイにありそうな感じ

Nowhere-2 1993

同じ感じに見えるけど、こちらは下の球体にお魚が泳いでる水族館と植物園の融合的な

Forthcoming Places-5 1996

エッシャー感ある、ここから入ったらどこに出るんだろうという不思議。でも題名がアルカディアだから古代の理想郷?

Arcadia-24 1988

忘れ去られた遺跡に手を加えているような。哀愁漂う色合い。

Arcadia-15 1988

こちらは松濤美術館で見た作品。廃墟と化した渋谷の様子。右の絵の日本語題名は「交差点で待つ間に」だった。

Bubble Flowers 2013 / Listen to the tales 2013

近づくと、この子たちはハチ公の末裔のほうな面持ち。

listen to the tale(部分)

下絵も展示されていました。色々なところから着想を得て構築されていく一つの芸術ってすごい。

こまかいことはよくわかんないですが、とにかくなんか見ていると勝手に自分の中の(たぶんあるはずの)クリエイティビティみたいなものが湧き出てくる感覚を覚えました。

なにより、かっこいい!



(こちらは、廃墟の美術史に行った際の当時の感想です。個人的備忘として。)


ルネサンスを代表するダヴィンチが、翌1520年ラファエロが死去したことによりルネサンスが終わり終末的な失望感が漂う中で生まれた「廃墟」というテーマ。

廃墟の中に理想郷(アルカディア)やかつての栄光を映し出し、18世紀に流行した「グランド・ツアー」やポンペイなどの遺跡発掘により歴史を振り返ることで引き継がれていった。それらは江戸時代の浮世絵師や無意識下の世界として廃墟を使うシュルレアリスムに形を変えていく。

再開発で変わりゆく渋谷で観るからこそ意味がある廃墟をテーマにした美術史、とてもおもしろかったです。(なにより2019年一発目に終わりのむこうへというテーマが秀逸)

廃墟の定型はこれらの要素を含んでいる

1. 廃墟:死、崩壊の象徴、高く積み上げられた所から崩れていく(上から下へ)
2. 木、植物:生の象徴、育ち上へ伸びていく(下から上へ)
3. 河、海、水
4. 圧倒的な青空

個人的には今井憲一《バベルの幻想》1955年は心に残りました。
青空に同化した建物はバベルの塔を表し、奥の空か手前の青空が反射している。周りには瓦礫が散乱し、バベルの塔で神の怒りを買った後の姿かもしれない。という、旧約聖書と廃墟とシュルレアリスムの要素が混ざったような作品でした。


おしまい

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