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こういうときが来ると知っていたのに

詩的なタイトルですね(自分で言うな)。いつもの近況報告です。二回目なのにいつもとはどういうことだ、前回からかなり時間があいてるだろう、本当に恒例になったのか、これからも書くつもりはあるのか、そもそも9月はどうした、そういう疑問もたくさん浮かんでると思いますが、まあ、あれですよ。気が向いたら書きます(適当すぎるw)。いや、実は9月分も途中までは書いてあるんです。日記形式で毎日つづっていたら、とある時点でとある理由で書く気がなくなりましてね。でも、せっかく8000字以上書いたので、本当にそのうち、12月ぐらいにこそっと出します。

はい、本題。

ロジャー・フェデラーが引退しました。

ロジャーが引退宣言をした、あの日、私は宝塚を見にいっていました。月組の「グレートギャッツビー」。私は嘘をつけないのではっきり言いますけど、これ再演するほどおもしろい…? と思いながら見てました。ありちゃんがいなくなって、お芝居という面ではトップコンビ、二番手、三番手とみんなおなじぐらいのレベルでうまく、とてもバランスがとれてる。

ですが! 華が消えたあああああ!

ありちゃんの華って本当にすごかったんだなあ、としみじみ思いました。内容がつまらないのはイケコのせいなので、生徒さんは何も悪くない。ただ、本当に地味。こういうつまらない演目のときに救いになるフィナーレすら地味。男役群舞がかっこよくないのは致命的だと思う。ありちゃん、どうにか戻ってきて! お芝居がちょっとアレでも、あなたの華は月組に必要なのよ! これまで男役群舞はありちゃんを見てたし、それだけで、いやー、満足だわー、と思えてた。デュエダンもさ、もうちょっとどうにかならないのかねえ。博多座から全部見てるけど、毎回似たような感じで、はっきり言ってしまうと単調でつまらない。海ちゃん踊れるのに、もったいない。フィナーレがよければすべてが許せるんだけど(直近だとネバセイ。男役群舞ですべて許した。あれはいまでもまた見たい)、フィナーレがつまらないと本編のだめさがますます際立つ。れいこちゃんの歌も演技もすばらしいし、相変わらずめちゃめちゃ美人さんでうっとりするし、ちなっちゃんもおだちんも、もちろん、海ちゃんも大好きですよ。ただお芝居に全フリしてる組は個人的にそんなに魅かれない。ロマ劇がものすごくよかったから、あのレベルを求めてしまうんだけど、あれもありちゃんの華あってこそ、みたいな部分もあったからな。ショーは壊滅的につまんなかったし。あ、でも、舞浜の別箱はとってもよかったので、明るい演目やればいいかもしれない。真ん中がみんな陽よりは陰なイメージだから、暗い演目されると見てる方もどんよりするわ。
芝居上手の中に、きらっきらしてるありちゃんがいるの、とってもバランスいいと思うんだけどな。演目としては大っきらいだったオーストリアのやつ(タイトルぐらい書け)、ありちゃんが歌いながら出てくるところだけは死ぬほど好きだった。ライトのおかげももちろんあるんだけど、本人も発光してた。華って生まれもったものだから、あとからどうにかなるものではなくて、だからこそ、ありちゃんはお芝居という弱点がありながらも、ずっと抜擢されてきたんでしょう。長い間、宝塚に関わってきた人たちがあの華に気づかないわけないもんね。
私はありれいこが見たかったし、月組でトップになるありちゃんも見たかったよ。ありちゃんがトップになったら、もう一度宝塚に熱心になろうと思うぐらいにはありちゃんが好きなのです。そのときまでずっと月組贔屓なんだなあ、と喜んでたのに、このままだと星組贔屓になってしまう。
いや、まあね、最初に好きになったのがシメさんだから、星組に戻ってくるだけなんですけどね。なんか納得いかんw
だいたい、いまの星組なんてトップコンビがものすごくきらきらしてるんだから(たぶん。こっちゃんになってから行ったことないけど←おい)、ありちゃん連れていく必要あった? きらきらにきらきらをぶつけなくていいじゃん。正反対な個性って大事よ。踊れる歌えるトップに、踊れる歌えるありちゃんつけてどうするの? 星組だけ、とんでもない高速踊りでもするの? こっちゃんとありちゃん、くるくる回すの?

ちょっと見たいわw

星組は昔から華しかない、というか、何もできなくても華さえあればトップにする組ではあったし(私と同時期に星組贔屓だった人は何人か浮かぶでしょうw)、ありちゃんが星組に似合ってるのはわかる。わかるよ! わかるんだけど、月組でコツコツ努力しつつお芝居を磨いてきたありちゃんを知ってるので、月組にいてほしかったな…。

なんてことを観劇後、友達と飲みながら話して、電車なくなるー! と急いで駅に向かい、無事に座れて、この数時間に何か起こったかな、とニュースを見たんです。

はい、ここまで前置きでした。なんだろうね、さっさと本題に入らないの。そういう病にかかってるのね、と温かく見守ってください。もしくは飛ばしてください(だから、言うのが遅いってば)。

フェデラー引退。

その文字を信じられない気持ちで眺めました。ロジャーは今年のバーゼルに出ると言ってたし、そのバーゼルはもっと先。なのに、どうして引退?

インスタでロジャーは自分の言葉で引退を伝えていて、それを聞いてしまったら電車の中で泣いてしまうと思ったので、文章に起こしてあるのを読んだんです。

膝が悪いこと、がんばってきたけどあきらめること、家族やファンへの感謝。途中から無理でした。涙がとまらず、英語なんて読めなければよかった、そうしたら、電車でぼろぼろ泣く怪しい人にならずにすんだのに、とぼんやりと考えてました。少し時間がたって気持ちが落ちつきはじめてから周りを見ると、終電が近い電車内はそこそこ混んでいたものの、ハンカチで涙をぬぐいながら鼻をすすりつつ電子機器の画面から目を離さない私を特にだれも気にしていなくて、よかった、とほっとしたものです。

まあ、私でも隣の人がしくしく泣いてたら知らんふりするけどさ! 席には座ってたいし、泣いてるぐらいで特に害はないしね。

家について、ロジャーの声明を聞きました。泣き虫なあの人が泣かないでやさしい声で伝えてくれる、そのことにもう耐えられず、床につっぷせて大声で泣きました。ここ1ヶ月、個人的にとても悲しいことがあり、でも、それについてはいまになっても泣けてないのですが、ロジャーの件では、鼻がつまって呼吸困難になるほど泣きました。

正直なことを言ってしまえば、ロジャーは一番好きな選手ではないです。私はラファエル・ナダルが大好きで、そのはるか前を走るロジャーが、邪魔だなあ、と思ったこともあります。ロジャーがいなければラファがトップになれるのに、と。

2005年ぐらいから2010年ぐらいまで、テニス界を引っ張っていたのはたしかにロジャーとラファで、5歳というスポーツにおいては大きすぎる差があるにも関わらず、二人は対等なライバルでした。普通の人が登れない高みにテニスのレベルを押しあげて、そこに到達できた二人だけが真剣に戦う姿は、見ている人たちを夢中にさせました。男子テニスを人気にしたのはまちがいなくこの二人です。
特にロジャーの人気は絶大で、ATPの人気選手ファン投票1位は十何年もずっとロジャーでしたし、ここ数年はケガの影響で試合に出られる機会も減ったのにスポンサー料はほかのどんなスポーツ選手よりも高く、一度も試合に出てない年でも全スポーツ選手の中で収入が1位でした。毎年スポンサー料が100億とかですからね。どれだけロジャーの影響力が大きいのかわかります。
テニスの試合は世界中で行われていて、当たり前ですが地元の選手が応援される。グランドスラムとなるとそれはもうとんでもなくて、私がいまでもフランスが大っきらいなのは全仏でラファがまったく応援されないどころかブーイングされまくった過去があるからです。フランスの選手がラファに負けるのはラファより弱いからで、ラファに悪いところなんか何もないのに、頭おかしいの? と思ってたし、いまでも思ってる。ラファが一時期ケガして戦線離脱して、しばらくして戻ってきたら、これまでのことなど忘れたかのように、待ってたよ! これまでも応援してたよ! みたいな空気だしたのすら許してないからね! 手のひら返ししてんじゃないよ! って。
あ、ラファのことはどうでもよかったわ。
そのぐらい、グランドスラムではその国の人が応援されるんですよ。もうね、95対5ぐらい。画面から目を離しても歓声でどっちがポイント取ったかわかる。
そんな中、唯一、半々もしくは六四ぐらいで応援されるのがロジャーなんです。グランドスラムだけじゃなくて、どんな大会でもそう。なんなら、スペインでラファとやっても三七ぐらいで応援される。
これは本当にすごいことで、ラファのスペイン人気ってとんでもないんです。全スペイン人を対象にした人気投票でサッカー選手や皇室(この人たちもめちゃくちゃ人気あります)を差し置いて、圧倒的に1位ですからね。スペイン国内でテニスやったら、ほぼ百パーセントラファが応援される。
それでもロジャーが相手だとロジャーへの声援がちゃんと聞こえるぐらいある。すごいことなんです、本当に。

ロジャーが引退についてのインタビューで、引退しても放っておいてくれるなら前もって発表しなくてもいいんだけど、騒ぎになることがわかってたからしょうがなく、みたいなことを言ってて、自分の影響力を正しく理解してるんだなあ、と少し切なくなりました。ロジャーもラファも、引退宣言しないで辞めたい、とずっと言ってたし、実際、ラファは、今年の全豪の結果次第では引退してた、と全豪優勝したあとで爆弾発言をしたぐらいですからね。

二人ともある日突然いなくなるかもしれない。

その怖さは最近はずっとありました。年齢も年齢だし、ケガも抱えてる。だから、ロジャーがバーゼルで復帰するとなったとき嬉しかったです。まだ大丈夫だって。

ねえ、それなのに発表して一週間後に引退するって急すぎない?

ここで少しロジャーとラファの話をします。ラファがデビューしたとき、もうすでにロジャーは世界1位でした。初対戦は2004年のマイアミ。ラファの勝利。それから何年もつづくライバル関係の始まりです。
ラファが左利きでスピン過多、ロジャーがシングルバックハンドでスピンが効いた高いボールをバック側に打たれるのが苦手という点で、初期はラファのが有利でした。ほかのグランドスラムはすべて持っていて全仏が欲しいロジャーに、決勝戦で立ちはだかり一度も勝たせてもらえない。とんでもなく負けずぎらいなロジャーが(もちろん、ラファもです)、どうにもできずに遠い目になったのは全仏決勝ぐらいでした。
ライバルなんかいらない、ライバルなんかじゃない。
ラファのことを聞かれるたびにロジャーはそう答えてたし、見てるこっちにもわかるぐらいラファのことをわずらわしく思ってる時期が結構長くありました。
ラファはそんなロジャーの機微には一切気づかず、ロジャーが大好きで尊敬してる、とずっと言いつづけてたし、態度でもそれを表してました。ラファは若いころは英語がほとんど話せず、ロジャーのちょっといやみめいた言動が理解できなかったのもよかったのかもしれません。でも、理解していても、変わらずロジャーのことが好きだっただろう、という確信めいたものもあります。
2009年にロジャーがようやく全仏を取り、そこから少しずつラファへの態度も軟化し、いつの間にか、おたがいになんでも話せるライバル兼友達になりました。
こうなるとおもしろいもので、ロジャーはラファのことを友達だと言うのに、ラファはかたくなにfriendという言葉を使わず、いい関係だよ、でも友達じゃないんだよ、と逆転現象が起きました。いや、どう考えても友達でしょう? と思うのに、友達はスペイン語話せないとね、などと言ったりして、でも、スペイン語話さないロジャー以外の選手にはmy friendと呼びかけてみるし、設定ちゃんとして! と何度思ったことかw なぜ、あんなにかたくなにfriendって言いたくなかったのか、いまでも謎のままです。

ロジャーの引退宣言に即座に反応したラファはロジャーのことをfriendと呼びました。いまなんだね…? とそこでも号泣しました。ずっとfriendとは思ってただろうに、言うのはいまなんだね。

ロジャーが最後の試合と決めたのはラファとのダブルスでした。

ライバルなんかじゃない、むかつく、から始まった関係が、最後の瞬間は隣にいてほしい、で終わるなんて、どこの壮大なブロマンスなんだろう。

ラファは全米後でそんなに調子もよくなくて(全米中もよくなかったけど)、ラファの奥さんははじめての子供を妊娠中で臨月で、ロジャーの引退がなかったらラファは絶対に参加しなかった。それでも、ロジャーから公式発表の10日前に連絡を受けたときに、いいよ、そばにいるよ、と躊躇なく引き受けた、その関係性は友達という言葉でおさまるようなものじゃない気がして、ラファの、friendじゃない、はもしかして正しいのかなと改めて思い直したりしてます。

最後のダブルスは勝てませんでした。マッチポイントもあったけど負けました。それでよかったんだと思います。負けて終わるのが引退試合だから。でも、勝って喜んでるところは、とてもとても見たかったよ。マッチポイントでロジャーのサーブ。サービスエースでビシッと決めてくれたら、すごくかっこよかったんだけどね。テニスの神様って甘くないね。悲しいね。

引退セレモニーでラファは子供のように泣きじゃくり、ロジャーの引退とともに自分の大事な一部が永遠になくなってしまう、とまで言いました。あんなに泣いているラファははじめて見たし、たぶん、自分の引退でもそこまで泣かないんじゃないかな。

ロジャーは泣き虫さんで、そこがとても愛しい。でも、そんなに泣かなかったし、すごく我慢しているのがわかりました。思い切り泣いてもよかったのにね。

ラファはギリギリに来て、ダブルスが終わるとすぐに帰りました。そのぐらい時間がなくて時期も悪かったのに、ロジャーの最後のパートナーになるのはとても特別では光栄なことだとずっと言ってた。嘘のつき方を知らないんじゃないのか、と思うほど正直なラファの本音。

ロジャーの最後の試合から二週間(もう1か月になってしまいました)がたちますが、いまだに引退した実感がないです。来年のウィンブルドンに出るんじゃないか、なんて考えたりします。

そんなことありえない、と知ってるのに。

ラファが大好きで、ラファとロジャーの関係性も大好きで、二人の本気のテニスに魅せられて、十年以上幸せな観戦体験をさせてもらいました。もう二人の試合が見られないと思うととても寂しいし悲しい。

いつか来る日。

それがわかっていても納得なんてできなくて、一生テニスをやっててほしいと思ってしまう。

あなたの華麗なテニスがとても好きでした。過去形にしなければいけないことに胸が痛むけれど、あなたの人生はつづいていくから、テニス選手じゃなくなったこれからも心から応援しています。

あなたの全盛期をリアルタイムで見られて幸せでした。あなたは、負けたのに、といやがるだろうけれど、2008年ウィンブルドン決勝はこれまでもこれからも最高の試合です。あの試合で最高のショットは第三セットタイブレーク、ラファのマッチポイントで放たれたあなたのバックハンドのストレートパッシングショットです。きれいな軌道でラファの横を抜けていくあれは、敵ながらあっぱれ! でした。

言いたくないです。本当に本当に言いたくないですけど。

お疲れさまでした。ゆっくり休んでください。

これからのロジャーの人生にたくさんの幸せが降り注ぎますように!

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