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ダウンサイズ的人生ノススメ

新しいフラットの大家さんから、入居前の光熱費の請求書を取りに行きたいので夕方家行ってもいい?との連絡があった。大家さん、ポルトガルの農家出身でロンドン郊外の自宅で子供と野菜も育てているらしく、手作りのプラムジャムを持ってきてくれるみたい。やることかわいすぎ…。

今年6月に転職した会社でも上司が「人事担当のAが採用決めた中で君がお気に入り!って書いてた」とスクショを送ってくれた。人事のAはオフィスに週一で飼い犬を連れてくる。動物嫌い歴=年齢に近い自分が信じられないけど、最近人生で初めてペットを撫でさせてもらった。

沸き起こるほんのり温かい感情…。探偵ナイトスクープに出てた保育士の人みたいな荒療治しなくても、少しずつ苦手が克服できそう(靖の「一番動物っぽいで!」がツボ)。

半年前はこんなにガラッと人生が変わるなんて思いもしなかった

4月まで在籍していた会社の元上司にはやることなすこと失敗する、メチャクチャにすると言われ、うまくプロジェクトが進んでいても茶々を入れられ、生産性ゼロの雑用も課された。変な指示を受け、別チームの知らんカナダ人女性(ヘッド)を激昂させ、濡れ衣を着させられ八つ裂きにもされた。的外れな発言も多く「あなたの上司、大丈夫?」と同僚にも心配された。

文化の違いでは片付けられないぐらい呆気に取られるような発言も受けた。我慢も限界にきたある日慎重に言葉を選んで直訴したら、本人は意図していなかったと弁明され改善はあったが、根底は一切変わらなかった。

でもやっぱり人生というのは悪いことが続くものではなくて、絶妙なタイミングで救世主は現れる。以前の会社でお世話になったSさんがその人だった。ある日栄転したSさんに祝福メッセージを送ったら、すぐ返信をもらったので上司と上手く行っていないとSOSを送ったら、あきさんがこんなことをいうのは珍しいから話を聞きますよ、と深夜の日本から緊急Zoomコールして下った。

比べ物にならないぐらいの辛いSさんの話を耳にして、大人になって初めてワーンと泣いた。ちょうど浴室を修理しに若いイギリス人の子が家にいたけどお構いなしで泣いた。

パワハラ対象であり続け、不安の中で仕事を続けると精神に支障をきたすと判断し、セラピーも受けた。セラピスト曰く「残念ながらGoogle、Facebook、Twitterでも同じ境遇のクライアントがいます。職場いじめです」。

元上司に「この会社のスピードについて行けていない、この会社に見合った仕事ができていない」と散々批判を受けたけど、社員より尊い「会社」って一体何だろう?私を退職まで追い込んだ張本人は、その後リストラ対象となり、私を辞めさせてわずか3ヶ月足らずで会社を去ることになったらしい。

かくかくしかじかありまして

転職した今の会社は、スタートアップなので規模は断然小さい。でもセラピストの一言もあり規模にはこだわらずにダウンサイズを決めた。和気藹々としたなんでも話せる雰囲気とインターナショナル多数派で心地の良い緊張感が漂う。

入社当日の全体会議で爆笑が巻き起こっていてリモート漬けで一年を過ごしていた私は衝撃を受けたが、社員一人ひとりを大切にしている会社だと現在進行形で伝わってくる。

入社一週目の社長面談で「なんで起業したんですか」と聞くと「この会社に勤めて、働いてて気分がいいなと誰もが感じる職場環境を作りかったから」と回答があった。社長が有言実行の人だと身に染みて感じるぐらい職場に行くのが楽しい。今年上半期は夜寝るのにも朝起き上がるのにも嫌気がさし、月曜日から負の感情に苛まれていたことを思うと、本当に嘘みたいである。

何よりも今の上司がめっちゃくちゃ面白くて、笑いのセンスが絶妙。新婚旅行に日本を選ぶほどの親日家で、仕事に関する指摘はストレートに的を得ていて、さらに褒め上手で清々しい。面接時にも思ったけどいい意味で人間味溢れる人だ。Sさんにも教えてもらったけど「仕事は結局、人」だと思う。

前のネガティブ上司には一度も褒められなかったし、一緒に笑った記憶すらない。余裕のないおもろない堅物とは私は至極相性が悪い。人生短いねんから、仕事といえど嫌いな人間と顔つき合わせるほど無駄な時間はないわ。

テック企業の相次ぐリストラや採用ストップのニュースを聞くと、会社の規模と従業員満足度って関係ないとつくづく感じる。自分にあったサイズ感を見つけて懸命に働くのが大切だ。まさに里帰り時に自分を鼓舞するため日本で買った渡辺和子さんの本のタイトルが「置かれた場所で咲きなさい」。

ついでに家もダウンサイズ

今の家は前の家に比べるとちょっと小さくて古め。前のフラットは築10年以下だったので内装も綺麗で、最上階だったのでベランダまで広々していて即決したけど一人暮らしにはいささか広すぎたし、駅から離れた僻地にあったので夜道、何度も背後を確認するほど治安が心配な場所だった。

新居へ転居後「家具の後ろに髪の毛残ってた」「蛇口も君が壊した」とイチャモンを付けられ前の大家から法外的な敷金を踏んだくられそうになったが、全面戦争を決め込み不当を主張してなんとか最小限に抑えた。巻き上げられるだけ巻き上げたろう精神の大家なんか消えていなくなればいいのに。

今の家はとにかく立地がいい。ダウンサイズしたけど主要駅へ自転車10分で、テムズ川を眺めつつ自転車に乗って通勤していると、世界で一番大好きな街の空気を胸いっぱいに吸って朝をスタートできる(公害すごいけどw)

立地の良さは梅田から10分の実家と似ており、自転車がロンドンブリッジに差し掛かるころ、溢れかえる通勤ラッシュを目の当たりにすると、異国でもノスタルジアすら感じる。都市はそれぞれ違えどパワーが地面からズンズン伝わってくるみたい。橋までの坂道も相まって、体中にアドレナリンがみなぎってくる。

里帰り時に母と夕食後ぶらっと近所のイズミヤや商店街にあてもなく買い物に行くのが好きな私にはぴったりの大型スーパーも徒歩3分にある。大きな街、特にロンドンは一本道が違うだけで雰囲気がガラリと変わる気がする。幸運にも、大家さんもご近所さんも今のところ人懐っこい人たちばかりだ。

仕事も家もダウンサイズしたが、おかげで楽しくポジティブな毎日に方向転換できた。2022年初めに、同じくパワハラを受けてリストラされた友人と「いつかあんな年もあったな〜と笑えるようにしよう」とパブで誓いあった。いい仕事や引っ越し先に出会えるかは運とタイミングだ。ダウンサイズして足元に目を向けると、見えてくる幸せがあったりもする。

おわり

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