いちいち「憲法」「民主主義」「人権」とか最前面に持ち出さないと、PTAはまともになれないのか?―その3―
「つながり直し」のタタキ台
なんだかんだでポストコロナに従来どおりのPTAがあるとは全く思えないけどね。わたしの中の何かを成仏させるべく、このシリーズを書いています。
もしかしたら、わたしたちは新しいつながり方をゼロから構築しなきゃいけなくなるかもしれない。そのときのために、今、吐き出しておきたくて。
さて。
その1とその2で、長い長い前振りを経て、ようやく本論に入ります。我ながら何が言いたいのか忘れそうになってきたので、いきなり本論から入ります。
のっけから『憲法』『民主主義』『人権』を掲げるのは、なぜ悪手なのか
はじめにお断りしておきますが、『憲法』『民主主義』『人権』の定義や解釈の議論をしたい人はよそでやってください。
そもそもこれらの言葉の解釈は専門家の間でさえ議論が分かれ、スッゲー分厚い解説本も星の数ほど出てます。一生かかって研究したり、そのために命を賭して戦う人もいらっしゃる。PTAというごくローカルな任意団体を統べるためのキーワードとしては、あまりにも壮大な言葉と言えましょう。
もちろん、そのPTAを主戦場に「お前の憲法解釈は間違ってる!」とか「そのご意見、民主主義を何だと思っておっしゃるの?」とかぶちかましたいのであれば、どうぞご自由に。
たまにいますよね。相手が無知で気弱な一般ピープルであることを大前提に、崇高にして解釈の振れ幅の大きい言葉を持ち出して議論で優位に立ちたがる人。気に入らないと手当たり次第に「おまえは人権侵害してる!」ってなじるけど、そこでいう人権の定義は、もちろん、あっち持ちです。
この腐りはてた世の中に跳梁跋扈するリベラル用語マウント勢のおかげで、ごくごく素朴に「民主主義って大事よね。互いの人権を尊重したいよね」と誠実な今日を歩んでおられる皆さんは大迷惑です。
平座でうっかり「PTAは民主主義のトレーニングの場なんですよ」とかのたまったが最後(うわー、この人、小難しいリクツをつけてアタシの人格否定する気だわ)とか、アクロバティックでネガティブな先入観を惹起するかもしれません。
もっとも、PTAがうまく回るようになった暁にディスカッションのテーマとして『憲法』『民主主義』『人権』を扱ったりするのはすてきなことだと思います。それ見て「ひー、ついていけなーい」とかドン引きしちゃう会員をどうフォローするかとセットで企画してください。
変えたい人の基本の「キ」
誰かを変えるのは非常にパワーのいることです。一朝一夕にはいきません。
PTAの皆さんに民主主義を根付かせたかったら、民主的な態度が大事です。 まず日頃から分け隔てのない、明るい挨拶を心がけましょう。
(あいつは俺のいうことなんてどうせ理解できないだろう)とか(ろくすっぽ本も読まずによう言うわ)とか心の中で毒づかないのよ。声なき声が出てます、顔に。
あと、他人がやってることを「はぁ?それ何の意味があるの?」とか言ってはいけない。絶対に。
あなたからみて無意味に見えるPTAの慣習や、合理性の感じられない様式や作業手順をもし見かけたら、「どうしてこうやってるんですか」って、普通に聞いてみてください。
天皇陛下の即位の礼に対する質問ぐらいのうやうやしさでお願いします。
たとえ無意味でどんくさいやり方であったとしても、その人は、良かれと思ってやってきました。そのお気持ちと労力を、まずは十分ねぎらってあげてください。
わたしの経験上、「どうしてこうやってるんですか。わたしにもやり方を教えてください」というスタンスで聞き続けると、十中八九最後にはあちらから「もっといい方法ないんかね」「めんどくさかったらやめればいいよね」とかいう言葉が出てくるものですよ。
いつの間にやら民主主義を根付かせる方法
【必要なもの】
① 時間
② あなたの存在感
③ 会議を仕切るスキル
④ 気力と体力
【手順】
① あせらない
PTAは路上ナンパじゃありませんので。心のパンツを脱ぐためにアイドリングは必要です。
② 存在感を示す
PTAの会合では、話者の声に耳を傾け、要所要所でしっかりうなずく。
基本的にこれだけやれば、あなたの存在感は一気に準主役級です。みんな話聞いてねーし。
さむいジョークに無理して笑わなくてもいいが、にっこりぐらいはしてあげましょう。コール&レスポンス、あなたの声を響かせるには、まずはあなたのレスポンスから。
③ スキルを磨く
先達の話を聞いて知識を深めると、会合レジュメを作成できるようになります。聞き上手なあなたが司会をやれば、参加者も喜びます。
会合のレジュメと司会の二つを手掛ければ、PTAに民主主義を根付かせるミッションは8割方完成です。
レジュメ作成:議題をつのる、課題解決を提案する、話し合いの時間を設ける、自分だけが感じている課題をさりげなく「みんなの課題」に格上げする。できれば本番前にグループLINEやメールでレジュメを事前に共有する。
会合の司会:担当に説明をしてもらう。発言を促す、できれば事前に質問を集めておく、発言が少なければ「こんなこと気になる人いない?」みたいな振りを入れる、発言者の話をうなずきながら聞く。
発言に対していきなり司会が正論言わない、意見の取りまとめに徹する。
なお、作業手順の質問などは、まずはサクッと答えてあげてください。新たな提案は、先にお手本があった方が出しやすいです。
④ うまいこと仕切る
この一言に尽きます。PTAに民主主義を根付かせるには、実際やってみるのが早く、かつ正確です。
キモは実質ステップ③だけですが、そこに至るまで、そして、それを続けるには、気力・体力・時の運、この3要素が全てです。
一定期間続けさせてもらって、「このやり方がいいな」と感じてくれる人を増やす。後に続く人たちが「まねしてやってみよう」と踏襲してくれて、はじめて根付いたといえましょう。
しれっと人権意識を醸成する魔法の数字
基本的に、幸福な人はイジワルをしません。
みんなにスゴイねと言われるような職業につき、住宅ローン完済、親子ともども健康、老後の備えもまあまあで、旬の食材を三食ガッツリ食って、夜は8時間寝て、余暇にはフィットネス、心に永遠の恋人の一人や二人常駐のどリア充が、PTAでみみっちいイジメに精を出したりするでしょうか。
PTAでややこしい事態を引き起こす人は、たいがいPTAじゃないフィールドでもなんかやらかしていると見て間違いありません。
ええ、これは偏見です。くれぐれも口に出したりせぬように、しっかり胸に畳んでおいてくださいね。
というわけで。
PTAにおける会員各位の人権意識を高めるには、どうしたらいいか。
え、「互いのいいところを認め合う?」
ナメてんの、あんた。いいところを認めてもらうためには知り合いにならなきゃいけないでしょ。何でこのクソ忙しいのにPTAごときのために出張らなくちゃいけないの。おたくのトイレに掛けられた修造カレンダーを今すぐ外してマッキーで書いておきなさい、「貧乏暇なし」って。壁に直接。
PTAでイジメが勃発するのは、PTAがつらいからです。
(1)PTAに参加するための時間と体力を捻出するのがつらい。
(2)PTAの活動がハードすぎてつらい。
(3)PTAの人がワチャワチャしてる中に身を置くのがつらい。
2番はさておき、1・3番目はそれってほんとにPTAのせいかよとか、どうでもいいこと言わないの。ちなみにわたしは慢性的に(3)タイプなので、PTAでは積極的に司令塔を買って出て、見回りと称していつも一人でぶらぶらしてます。
話がそれました。
PTAという団体が、(1)と(3)の人にそれでも何かやらせちゃうのはなぜだろう。(2)の状態がいつまでたっても続くのはなぜだろう。
答えは簡単。数字が見えていないから。
「活動の総量を見積もれ」
新生PTAをつくるに当たって、口を酸っぱくしていったのが、これです。
うちの子供は統合校に通っています。わたしは統合前にPTA役員になり、小学校の統合から開校後のPTA立ち上げまで手掛けた創立メンバーの一人です。
「活動の総量を見積もれ」
大事なことなので二度言いました。
当時は統合校あるあるで、両校の思い出いっぱいの活動を何とか継続させたい。保護者が2倍になったらPTA活動の分担する人数が増えて楽になるかと思いきや、活動2倍って、んなアホな。なにをどんだけやるつもりなの。
1年目はそんなわけでめちゃくちゃでしたけどね。
2年目以降は落ち着いてきたこともあり(前野さんのことを気に入らない役員が全員辞めたともいう)、PTAの全活動を整理して、無理なくできる数字を算出しました。
例えばこんな感じです。
○役員数=6名。おおむね世帯として在学中に1回、全くやらない人がいても立候補者だけで6年回せる。
○各種イベントスタッフ数=ドタキャン率多くて5%を見越して割り付け。
○PTCA(保護者・児童・先生の学年活動)=参加率70~80%。やりたいことより、場所と時間のゆとり優先。1回2時間。
○PTAと町内会役員兼任=年に5~6人。兼任を把握してPTAを休みやすくする(地域団体も同様の配慮あり)
○見守り当番=1世帯1回、見守りポイントの他、自宅付近も可。欠席の連絡不要、幼児連れはお休みください。1回45分。
○委員会活動=総所要時間をチェック。景品の買い出しや写真撮影など計算が難しいものは、手抜きしてくださいと頼む(でもだいたいみんなちゃんとやる)。
資源回収など、思い入れはあれど活動時間の総量が見積もれないものは、町内会、OBなどありとあらゆる方面に根回しをして廃止にしました。
公民館の夏祭りや運動会は、活動の総量は見積もれるが「楽ですよ」というところまでは活動を減らせていない。PTAだけで決められないので。ここは課題であり、いまだにたまにモメる(わたしが怒る)。
「活動の総量を見積もる」とは
活動の総量の見積もりは、毎年やってます。時間、お金、体力がどれくらいかかるのか。イベント前後は、いつも聞きます。
「どれぐらいかかりそう?」「困ってることない?」「やってみて困ったことあった?」「準備に何人、何時間かかった?」「なんか発見あった?」「次年度以降の人にもオススメして大丈夫かな?」
もちろん、これらの質問の一つ一つに「活動ありがとう」を添えて。聞き方が悪いとウザがられますからね。
委員会活動には本部役員がそれぞれ担当を配置します。
具体的には、そばで見ていて質問事項を拾う、活動が長引いたら帰るよううながす、温かいねぎらいの言葉をかける。
担当役員は、委員会さんの苦労をじかに見ています。いちいち言わなくても、いっぱいほめて励まして、「ありがとう」って言いますね。
担当役員が現場に寄り添っているときは、結構な確率で質問が上がってきますから、役員の活動もそこで大体見積もれる。次の役員会は無理せずゆっくり休んでねってなる。
あまりにも質問が多いときは手順とマニュアルの見直しになります。マニュアル、みんな読まんけどね。
唯一、見積もれないのが「会長のお仕事」です。
もうしょうがないから、会長には、原則、実務をさせません。引けないなら足さない。
もっとも、作業のなんたるかを体験してもらうために輪転機ぐらいは回してもらいますけどね。
つまり、PTA活動の総量を見積もれば、自然と配慮が生まれます。
会長はじめ司令塔クラスの役員はいろいろ暗躍していますから、活動量を見積もれないのが実情です。しょうがないから、そこだけは「がんばれよ」で済ませます。プライスレスな感じです。
念のため補足です。
活動の総量を見積もるに当たっては、「理念」「やりがい」「意義」などの気持ちは算定に含めません。所要時間、稼働人数、経費など、あくまでも定量化できる数字の算出のみを対象とします。
PTAで強制のない素敵なルール決めました!って、ほう、それに一体何時間何人費やしたのですか。夜中の1時、2時まで頑張りましたとか、まさか稼働はオレ1人?
PTAを数字で語ることを嫌がる人がたまにいます。
慣れでしょうかね。こういうことは。
「活動の総量を見積もれ」、初年度は大ブーイングでした。そんなの無理だよ、って。
それでもしつこくやってみせたら「いいじゃん、いいじゃん」となりました。見積り2年目以降はカウント方法が定まっているので、数えやすくなるせいもあるかな。
いまでは「数字が見えない成功体験は信用するな」が合言葉です。
憲法を語り合うのなら
中央公園の交番横の信号の下にでも行ったらどうですかね。ちっちゃいデモやってますよ。しょっちゅう。
別にPTAでなくても憲法を考えたり語り合ったりできるでしょ。
それとも何ですか、あれだけさんざん非会員OKだのなんだのと言うといて、いざとなったら自分のお説を広めるためにPTAの集客力をアテこむ算段なのですか。PTAの会費で刷ったチラシを配らせたいですか。
憲法にのっとれば、強制はできないんですよね。
「あのPTAは憲法についての勉強会をしないから極悪非道」って、立憲主義の皆さん的にどうでしょう。
ごめんなさい。
ちょっとめんどくさくなってきました。
各自の宿題でお願いします。
ある集団を変えたいと思ったら、まずそこにいる個々の人を見るところから始めないといけない
自分に対する戒めとして、最後にこれを置いときます。
一つ完全に書き忘れたんだけど、PTAと民主主義といえば政治の話も忘れちゃいけない。書き忘れたことを思い出せてよかったです。
尻切れトンボでまた今度。