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青い入り江のたもとで

多層化された入り江  鮮やかな桃色を基調とした美しい入り江に、徐々に深いブルーの水中がオーバーラップされ、主人公であるアントニーの姿がゆっくりと表れる。溺れているのか、口からこぼれる空気を掻き分けながら、アントニーは水面へ向かって浮上していく。冒頭のこの映像はオーバーラップで多層に重なり合うことで、アントニー自身の複雑な背景と、アントニーが抱える光と闇の二面性を一気に明示する。  シーンが変わると、新しい職を探すアントニーが写される。傍らには娘のキャシーが居心地の悪さを感じ

    • 佐々木について

      12月は雨から始まった。 日付を越える頃、友達の誕生日をお祝いするために近所のコンビニに。誕生日プレゼントを渡した直後、雨が降り出した。コンビニの軒下にいてもコートが濡れるくらいの雨。すごい、地球もお祝いしてるんだよ~て、その時は盛り上がったけど、今思うと祝福に雨なんて聞いた事ないな。 こんな12月1日、新宿武蔵野館で内山拓也監督の映画『佐々木、イン、マイマイン』を観た。公開から1年を記念した凱旋上映だ。 時々、自分の年齢に気付く瞬間がある。 友達の誕生日を祝ったとき、自

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