アンジェリークルミナライズ 全体のまとめと感想

個人の感想です。
※歴代作とのシステム上の比較あり。

守護聖との会話や関係性など、キャラやストーリーのネタバレ、イベントのネタバレはしていませんが、それでもネタバレだと感じる範囲は人それぞれなので自己判断で閲覧してください。
まだイベントコンプしてないから色々勘違いがあったらごめんね。


アンジェリークルミナライズはアンジェリークシリーズ待望の最新作である。
女王候補として選ばれたヒロインがライバルと競い合い、守護聖たちの協力のもと女王を目指す。
前作までと大きく違うのはやはりヒロインの年齢だろう。それまでのヒロインは17歳だが、今回のヒロインは25歳の社会人なのだ。ネオロマに限らず25歳という年齢は乙女ゲーのヒロインとしてはかなり高い。ライバル候補も同じ年齢である。
そして、歴代アンジェと違って、ヒロインたちの出身地「バース」には女王信仰が根付いていない。おとぎ話のような形でちらりと守護聖の存在は出てくるのだが、リモージュやロザリアの通っていた女王養成学校のようなものが普通に存在する世界ではない。
故に今回の女王候補は、女王に選ばれることが名誉だという考えなど抱きようがないし、私なんかが宇宙を支える存在になるなんて…という畏怖や戸惑いの気持ちすら起こらない。アンジュが守護聖を敬称なしで呼ぶ事に抵抗感がないのはそのためだろうと思う。
レイナが彼らに敬称をつけて呼ぶのは、彼女の性格からというよりも「推し作品の登場人物にはつい敬称をつけてしまう」という感覚によるものだ。

アンジュが女王候補となって聖地に来たのは「契約」という、私のような古参リーカーには耳慣れない手段による。アンジュが酔っ払って契約書にサインしたことから物語がスタートするのだが、当初このノリに頭を抱えた古参も多いのではないだろうか。
ただ、もしかしたらリモージュもコレットも実は契約書を交わしているのかもしれない。スモルニィに入学する時に「在学中、女王候補として聖地またはそれに準ずる場所に赴き、そのまま帰還できない場合があります」みたいなやつを書いてるかもしれない。しかし、その場合彼女たちは未成年だから保護者がサインしたんだろうと思う。
なんにせよ、今回のヒロインは自分で契約書がかける年齢なのである。

どんなヒロインであっても「ヒロインは私の化身」として愛せる夢女と違って、俯瞰型プレイヤーである私の場合、アンジュに限らずゲーム開始直後ヒロインに向ける目は厳しい。
ヒロインに嫉妬してるのではない。私にとって乙女ゲームは少女漫画を読んでいる感覚に近いので、そのヒロインが好みかどうかはかなり重要なのだ。誰だって好きな漫画のヒロインが全然好みじゃなかったら嫌だろう。
だから私のようなプレイヤーにとって、自棄になり酔っ払って契約書にサインしたこのアンジュは冒頭の時点でかなりマイナスである。
だが結論としてはこのアンジュ、思っていたよりも断然いい。というか、公式に出ている設定以上の事を彼女はゲーム内で主張してこないので強い好悪の感情を抱きようがない。ネオロマンスシリーズのヒロインの良いところは、ゲーム内ではあまり人格がはっきりしていないところだ(コミカライズやCDドラマなどは除く)。ゲーム内でヒロインのセリフが多ければ多いほど個性が出るが、その分俯瞰型に嫌われるリスクも上がるし、夢女は自己投影しづらくなる。
しかしアンミナは他のシリーズ同様、ヒロインの性格がそれほどはっきりしていないので、出てくる選択肢によってある程度自分好みのヒロイン像に出来る。
ただ、アンジュはコルダ無印ほどの無個性ヒロインではなく、どちらかといえば遙かシリーズのヒロインくらいの個性だと私は判断した。
ヒロインのキャラデザは可愛いし、嫌いになるほど個性も強くないので、契約書云々で若干引いたプレイヤーであってもゲームを始めてみれば「ヒロインが好きじゃないからこのゲームは無理」というほどの気持ちは起こらないと思う。
まあそれでも彼女が酔って契約書にサインしてしまった事実は変わらないし、もしその契約書が「女王と守護聖」というタイトルのAV出演契約だったらどうするつもりだったんだろうとは思う。その部分に軽率さを感じてモヤモヤする人もいるだろうが、聖地では塩対応担当の守護聖たちがその点について一喝してくれるので、だいぶ溜飲が下がった状態で進められると思う。また、手段はアレだが適当に選ばれたわけではなく、ちゃんと彼女には女王の素質があって選ばれたとわかってほっとした。
ライバル候補のレイナはバリキャリの美人。
ただ、ロザリアやレイチェルのように最初にこちらを馬鹿にしてくるようなタイプではない。ヒロインの同年代らしい大人の女の対応をしてくる。かといって甘いわけではなく、育成も恋愛もライバルとして手は抜かない。このキャラを嫌いなプレイヤーはあんまりいないのではないだろうか。
こんなに仕事のできるタイプだが実は…みたいなギャップがあって彼女との友情イベントもおすすめだ。酔っていたとはいえこんなにしっかりした女にも契約書にサインさせているあたり、サイラスは相当なやり手なのではないだろうか。

ゲームとしてのアンミナは初期から変わらぬ育成シミュレーションである。ノベル形式よりもゲーム要素がある乙女ゲーが好きな人にはたまらないだろうと思う。難易度も三段階から選ぶことができる。
さらに、そのシミュレーションがめんどくさいという人向けには、週の初めに執事ポジションのサイラスに指示して任せるオート操作も出来る。ノベルゲーム育ちの、自分でシミュレーションを考えるのがめんどくさい人にも対応してあるのだ。
細かくデータをにらめっこしながらやりたい人はもちろん、シミュレーションなんてしゃらくせえ!デートだけさせろ!みたいな人もこれならやりやすいのではないだろうか。

守護聖に育成か妨害を頼み大陸に建物を建てる。守護聖に仕事を頼んだりデートしたりすると親密度が上がりイベントが起きる。
その流れは歴代アンジェリークそのままなので古参も安心だが、色々とパワーアップしてもいる。
まずは育成だが、まあ真面目に毎日一回くらい力を送っておけば勝てる。ただ、守護聖に構う回数(デートとか)を調整して育成に精を出さないと最高難易度でレイナに勝つのは苦労するだろう。
親密度が上がれば、あとは頼まなくても仲良しの守護聖が勝手に育成して建物を建ててくれるのも歴代作と同じ。だが、このプレゼント育成の開始時期がかなり早い。難易度によるのかもしれないが、親密度100に乗る前からルトゥールなみにバンバンプレゼントされる。
だが、それだと建物の種類が偏ってしまうのだ。アンミナではまんべんなく育成することによって、そこにデートができるポイントが出来る。これはアンジェリークトロワ形式であるが、そのデートスポットをつくるためにもいろんなサクリアを満遍なく送る必要があるのだ。
また、送る力が偏りすぎると現地に問題が起きるようになっている。あんまり同じ力ばかりだとトラブルが起きて結局育成が進まくなるようになっているのだ。これは歴代作との大きな違いではないかと思う。
だが、厄介なプレゼント育成やライバルの妨害を阻止する便利アイテムがポイント交換で手に入るので、本当に困ったらそれを使えばいい。
月イチの定期審査では守護聖からの評価と、大陸育成状況のどちらかで勝ち負けが決まるのだが、これも歴代作と少し違う。歴代作では、プレゼント育成でいくらサクリアが偏っても数さえ勝っていればよかったし、デートしかしていなくても親密度さえ勝っていれば人気投票のように「女王としてふさわしい」と評価された。しかしアンミナでは、いくら親密度でレイナに勝っていても「女王にはふさわしくない」との評価を受ける場合があるのだ。つまりアンミナでは、ある程度真面目に育成をしないと評価されないシステムになっている。
また毎日育成したり、女王候補らしい行動をすることでサイラスがポイントをくれる。そのポイントは他にも便利なアイテム(守護聖の訪問を阻止したり、誘いたい相手が動き回らないようにしたりとかゆいところに手が届くアイテムたちだ)やプレゼントと交換できる。ソシャゲのミッションのようなシステムだ。
これらのシステムにより、プレイヤーは歴代作よりもかなり真面目な女王候補としてゲームをプレイしているのではないかと思う。

また大陸の視察はルトゥールの良さを踏襲している。
マメに大陸に行けばそこでアイテムが手に入るし、視察と称したデートも出来る。なんと「夜の大陸視察」まで可能である。恋人状態で夜にそこに行くと、期待通りの素敵なイベストが起こるのだ。
そして、余った体力を外出などで有効活用できるようになった事も有り難い。
アンジェリークを嗜んだ人なら誰もが、半端に余った体力を持て余したことがあるだろう(ハートが一個余ってもったいないから、昨日したばかりの占いを連日やるなど)。
ハートが4つの段階だとあまり実感はないのだが、ハートが増えるにつれて必ず体力が半端に残ったことを嘆く日が来る。
平日に守護聖と部屋デートした後でも育成などの行動が可能になるなど、アンミナでは、体力勿体ない問題がかなり解消されたと思う。
私は、部屋で一言二言会話しただけでその日の行動力がゼロになるのはあんまりだと常々思っていたのでこれは助かる。

占いや相性操作は健在だが、アンミナには占い師も女王補佐官も出てこないので全部自分でやることになる。
だが、人にやってもらうのも自分でやるのも結局体力が減るのは同じだし、どこかの建物に移動しなくても占いや相性操作ができるようになったのでかなり楽だ。
また前述したサイラスのポイントを貯めると、体力消費ゼロで相性を上げることもできる。とりあえず「ラブラブフラッシュ!」という言葉を無くしてはならないというスタッフの強い意志を感じた。
旧作では、守護聖同士を相性操作して仲良くさせる目的がいまいちわからなかった(彼らの関係性の変化を楽しむためかな)。だが、アンミナでは守護聖同士の親密度(信頼関係)の上昇にはちゃんとゲーム上の意味が持たせてある。

公園や森の湖は健在で、公園でも質問やチャット形式の会話が楽しめる。ちなみに公園デートではセーブができない。古参には懐かしい例の質問タイムがちゃんとあるのだ。だが、前よりもずっと質問が易しいので、何度もロードを繰り返すような事にはならない。
また、森の湖でも滝に祈ったら必ず目当ての男が来るというアイテムがあるので、そこは本当に楽になった。
デート場所は育成や大陸視察次第で増え、会話の種類も多いので、攻略対象を一人にしぼったとしても一周だけでは絶対に全ての会話を見ることはできない。それほど種類が多いので、スタンダードに全キャラのエンディングを見たい人だけでなく、「このキャラ以外そんなに興味ない。このキャラだけ攻略すればいいや」という一点突破型の人でもやりこめる作りになっている。

そしてなんと言っても、従来との違いは森の湖で恋愛成就した後だ。従来の告白後は、そこで女王の資格を放棄しなくてはならなかった。女王の座を選ぶか、恋を選ぶかの2つに1つだったのだが、アンミナでは条件を満たせば守護聖と秘密の恋人関係になったまま女王になり、恋人も女王の座もゲット!みたいなエンディング(最良エンディング)を迎えられる。
そ、そんな…じゃあ今までの女王候補たちの苦労は一体…。っていうかクラヴィスそれ知ってるのかな…?などと考えた古参は多いと思う。
そのへんについては、エンディングでサイラスが、うまいこと納得できるようなできないようないい感じのことを言ってくれている。私がこんな薄ぼんやりしたことしか言えないのも、最良エンディングに萌えつつ「…いいのかな」と頭をよぎる人が未だにいそうだからだ。
最良エンディングがすごく良かったのは間違いない。だが、その良し悪しではなく、そこは女王か恋かの二択であって欲しかった!という気持ちが、私の中にもやっぱりあるのだ。
ただ、神鳥の守護聖と比べると令梟の守護聖たちは「女王」という地位に対する敬意というか、尊崇というか、そういうものが圧倒的に少ない。
女王=至高の存在であり、その地位に登ってしまったら手出しできない、恋人になるなんて恐れ多い!みたいな気持ちがゲーム内ではほとんど伝わってこないのだ。だから守護聖であっても、女王と恋人になる事にそれほど葛藤がないんだろうなと思うし、女王システムが長く続いてきた神鳥の宇宙とはまた少し意識が違うのかなと思う。
だから令梟宇宙という舞台で最良エンディングがあるのは納得だし、「令梟で許されるなら神鳥と聖獣にも最良エンディングを寄越せ」とは私はあんまり思わない。
恋愛面はそれでいいのだが、私は即位する時に守護聖が一人ずつ口上を述べるあのシーンにはちょっと違和感があった。それまで女王すごい、みたいな事を言わなかった奴らがいきなり忠誠?という気持ちになったからだ。
ただ、ゲーム上、女王と恋人関係になっていいという感覚と、至高の女王陛下にこの忠誠を捧げますという感覚をすり合わせる演出はなかなか難しかったのだろうな、と思ってはいる。
そこは不満というほどではないし、気にならない人も多いと思う。
あとは、歴代作に比べて守護聖の過去の話がシナリオにかなり盛り込まれているのが特徴だと思う。ヒロインの年齢が高いこと、社会人経験があることで、シナリオの幅がかなり広くなっていて、ノベルゲーム好きの人も楽しめる内容になっていたと思う。

このキャラデザがよほど好きじゃないという人、やっぱりシミュレーションは性に合わないという人、歴代作品を愛しすぎてて新しいキャラデザも新しいシステムも受け入れられんという人、25歳のヒロインがやっぱり無理だという人以外で、このゲームをやってつまらんと思う人はあんまりいないんじゃないかと思う。
それだけバランスの取れた良いゲームだった。
アンミナからは、歴代アンジェリークシリーズの良さを残したい、でも新しいものを作りたいという意気を感じる。
私はイマイチならはっきりイマイチだと言うタイプだ(怖いから「※個人の感想です」という注付きで)。
だが、このアンミナはとても面白かった。
乙女ゲーとしてというより「ゲームとして」面白い。
ネオロマンス一強だった昔と違って、今は乙女ゲームが沢山ある。
ネオロマンス以外にも良作はあるし、選び放題だ。
だが、なんだかんだ言ってもここが老舗、乙女ゲームの原点だというプライドが感じられる良いゲームだったと思う。

この記事が参加している募集

全力で推したいゲーム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?