「食べること」の楽しさを再発見。80代おばあちゃんの「角材野菜ゴロゴロ芋汁」

日頃は「いちょう切り」にしてしまう人参や大根が、まるで家の柱のような「角材」風に切られていて、お椀の中でゴロゴロと圧倒的な存在感を放つ。
そんな芋汁を、食べた。

同じ具材なのに、形と大きさが違うだけで、切り方が変わっただけで、こんなにも違うものなのか。
いちょう切りだと流すように胃の中に送り込んでしまうけど、角材カットされた根菜達はそうはいかない。

一口では食べ切れないので、半分かじって断面を眺めたりする。
少し硬さが残っているので、根菜の歯応えを楽しんだりする。

そうかあ、野菜を大きくカットすることは、「わ!具材がゴロゴロ入ってる!」と視覚的に食欲を刺激するだけでなく、ゆっくり味わうように促す工夫でもあるんですね。

特に美味しかったのが、サツマイモだ。
まな板に横たえたサツマイモを6〜7センチ幅くらいにスパスパ切ったのだろうか、大胆にも程がある、っていうくらい大きくて、2回か3回に分けて「フハフハ、フーフー」してやっと1つを食べきれるほどだった。
早く食べたいのに、大きいからなかなか冷めず、口にお迎えできない。
「ああ、あなたを食べたいのに…熱い!」

必死に「フーフー」して、ようやく熱さが和らいだサツマイモは、焦らされた分だけ美味しさ倍増。かみしめるたびに、サツマイモの甘みが口の中に広がって、美味しいという以上に「し・あ・わ・せ」💕

焦らされただけでなく、家族みんなで「美味しいねえ」「大きく切ってあるだけで、こんなに変わるんだねえ」なんて話していたから、1杯平らげるのにやたら時間がかかってしまった。

具材が「大きい」というだけで、満足度、しあわせ度が格段に上がるということを知りました。

この幸せな芋汁、実はいただきものである。届けてくださったのは、園芸ボランティアを一緒にしている80歳代のおばあちゃんMさんだ。

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その日その時、私は外にいて、人と会っていた。
唐突にスマホが鳴り出す。ママ友からだ。
電話に出ると、「アッコさん、いまから、芋汁が行くよ!」とのこと。

い、いも?
芋汁? 芋汁が来るって?

「Mさんから電話があってね、いまからアッコさんとこに芋汁持って行くって!」

Mさんは時々こうして「弾丸差し入れ」をしてくださるのだが、芋汁とは!
新たなフェーズを上がった感がある。
残念ながら私は間に合いそうになかったので、娘に電話をして受け取ってもらうようにした。
家に帰ると、芋汁がどっさり入ったタッパーが置かれてあった。直径が30センチはある円筒型の大きなタッパー。電話をくれたママ友が分けてくれたらしい。
ありがたや。

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後日、園芸ボランティアでMさんにあったときにお礼を伝えると、
「よそのうちのご飯は、美味しいやろ」とニコニコ。
「はい、野菜を大きく切るだけで、あんなにおいしさが変わるんですね。びっくりしました。家族みんなでおいしくいただきました」と伝えると、
ふんふん、とまなじりを下げて、さも満足そうに微笑んだ。

Mさんは地域のお祭りに参加しては、寸胴鍋いっぱいに芋汁を作ったり、カレーを作ったりして、地域の人に「野外メシ」をふるまってきたそう。
自身のお子さんはもちろん、お孫さんにもしょっちゅう美味しいご飯を用意し、お腹いっぱい食べさせてあげたとか。

80歳代、「昭和のおっかさん」がつくる「角材カット野菜がゴロゴロ入った芋汁」。
栄養をとるためだけじゃない、「食べること」の大切さ、楽しさを教えてもらった一品でした。

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↓ 以前の「弾丸差し入れ」


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