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アンソロピックの創業者、AWSサミットでClaudeを語る

Amazonが展開するクラウドサービスの見本市「AWS Summit」が6月20~21日に幕張メッセで開かれました。20日に、「ChatGPTやGoogle GEMINIの性能を超えた生成AIClaude 3.5を発表したアンソロピックの共同創業者ジャレッド・カプラン氏も登壇し、テレビ東京のWBS鵜飼氏が単独インタビューを実施した動画が上がっていましたので深掘りしていきます。なお、鵜飼氏はOpenAIのサム・アルトマンCEOへのリモートインタビュー、また東京来日時のインタヴューもしており、AIといえばこの人というイメージがついています。

AI技術全般の進化と未来について

AIの定義と進化

ジョン・マッカーシー(注01)の言葉を引用すると、「うまく機能すると、もはやAIとは呼ばれなくなる」というものがあります。大規模言語モデルは最終段階ではなく、むしろマラソンの最初の数歩に過ぎません。今後数年で技術は急速に変化していくでしょう。

今後のAI技術

具体的な未来像は予測できませんが、エキサイティングな技術がすぐそこまで来ています。現在存在する問題や、すぐに直面する問題に対して、私たち技術者は責任を持って解決に取り組む必要があります。AIはそのための重要なツールとなるでしょう。

※注01;ジョン・マッカーシーは、人工知能(AI)という用語を考案し、その研究分野を確立した計算機科学の先駆者です。1927年生まれのアメリカ人で、AIの基礎を築くとともに、LISPプログラミング言語の開発やタイムシェアリングシステムの概念提唱など、幅広い貢献をしました。論理的AIアプローチを提唱し、状況計算を開発するなど、AIの理論的基盤も構築しました。チューリング賞をはじめとする数々の栄誉を受け、2011年に他界するまで、計算機科学とAI分野に多大な影響を与え続けました。彼の洞察は現代のAI技術の発展にも大きな示唆を与えています。

アンソロピックの戦略と特徴

効率的なAIモデル開発

AIの能力向上には、モデルの訓練に使用するコンピューティングパワーと、コスト効率を高めるアルゴリズムの進歩という2つの重要な要素があります。アンソロピックは、競合他社の5分の1程度の予算で世界最高レベルの知的モデルを開発しました。

競合他社との差別化

アンソロピックの創設者たちは、スケーリング則(注02)を発見しGPT-3を開発した人々です。彼らはAIシステムがスケーリングによってより強力になることを予見し、AIの安全性と信頼性に強い関心を持っていました。そのため、アンソロピックは安全性を中心に据えて設立されました。

情報セキュリティへの取り組み

アンソロピックは、モデルの情報セキュリティ保護において業界をリードすることを目指しています。ハッキングから守るための対策を講じています。

責任あるスケーリングポリシー

AIシステムがより強力になっても、常に安全対策を講じてから公開するという方針を持っています。これにより、問題や事故を未然に防ぐことができます。

憲法的AI

現在展開しているモデルでは、「憲法的AI」という概念を用いています。これは、透明性のある原則(憲法)に基づいてAIシステムが自身を監督する方法です。人間による直接的なテストなしに、モデルをより信頼性が高く安全なものにすることができます。

※注02:スケーリング則とはAIモデルの性能とそのトレーニングに使用されるデータ量や計算リソースとの関係を説明する原理です。ジャレッド・カプラン氏は「アンソロピックの創設者たちは、スケーリング則を発見しGPT-3を開発した人々」と言っていますが実は、スケーリング則は、OpenAIの研究者たちが重要な役割を果たしました。2020年に発表された論文「Scaling Laws for Neural Language Models」は、この分野で重要な貢献となりました。この研究では、Jared Kaplan、Sam McCandlish、Tom Henighan、Tom B. Brown、Benjamin Chess、Rewon Child、Scott Gray、Alec Radford、Jeffrey Wu、と並び、のちにアンソロピック社を設立したDario Amodeiも著者として名を連ねています。

この法則によると、モデルのサイズ、トレーニングデータ量、計算能力を増やすことで、AIの性能が予測可能な方法で向上することが示されています。特に大規模言語モデルの分野で重要な役割を果たし、GPT-3のような大規模モデルの開発を導きました。スケーリング則の発見により、AIの能力向上の道筋が明確になり、現在のAI革命の基盤となっています。

AIの課題と対策

動画生成AIの危険性

動画生成AIには、特に誤情報や選挙に関連して独自の課題があります。アンソロピックは現在、動画生成モデルを展開していませんが、この分野で直面する可能性のある課題を認識しています。

モデルの命名と特徴

アンソロピックのモデルは、詩の形式にちなんで命名されています。例えば、「俳句(Haiku)」は、非常にコンパクトで簡潔なモデルを表現するのにふさわしい名前だと考えています。

多言語対応

英語だけでなく、他の言語、特に日本語でも高い能力を発揮するようモデルを設計しています。

エージェント型AIの台頭

今後10年間で、AIモデルはより「エージェント的」になると予想されています。つまり、単なるチャットボットとしてではなく、長期的な一連の行動を取り、非常に複雑なタスクを実行できるようになるでしょう。

このように、AIの急速な進化と、それに伴う課題や可能性について、アンソロピックの共同創設者は深い洞察を提供しています。安全性と効率性を重視しながら、AIの未来を形作ろうとする彼らの取り組みは、今後のAI技術の発展に大きな影響を与えるでしょう。

AWSとClaudeの連携

AWSでのClaudeの利用については、以下のような使用方法があります。

開発者向けの機能:AIをアプリに組み込む

AWSの開発ツールを使って、プログラマーは自分のアプリケーションにClaudeの機能を簡単に追加できるようになります。例えば、チャットボット機能や文章要約機能などを自社のアプリに組み込むことができます。

APIを通じたWebサービスへの組み込み

  1. 機能統合

    • ユーザーは自社のWebサービスやアプリケーションにClaudeのAI機能を直接組み込むことができます。

    • 例えば、チャットボット、文章生成、データ分析などの機能をAPIを通じて利用できます。

  2. カスタマイズの柔軟性

    • 開発者は自社のニーズに合わせてClaudeの機能をカスタマイズし、独自のサービスを構築できます。

  3. スケーラビリティ

    • AWSのインフラを活用することで、需要に応じて柔軟にリソースを調整できます。

GitHub Copilotのようなユーザーサポート

  1. 開発支援ツール

    • AWSの開発環境内でClaudeを統合し、コード補完や提案を行うツールとして機能する可能性があります。

  2. ドキュメント作成支援

    • AWSサービスの使用方法や設定に関する質問に答え、ドキュメント作成を支援する可能性があります。

  3. トラブルシューティング

    • AWSの各種サービスに関する問題解決や最適化の提案を行うことができます。

Claudeの牽引でAWSのシェアに迫るAzureに水を開けられるか?

現在AzureはChatGPT(Copilot)の導入で一強だったAWSの牙城を崩しに来ています。

AWSとしてはGPT-4oよりもスペックの高いAIを導入し、再びクラウドのシェアに水を開けたいはずです。ちなみに2019年のクラウドシェアではAWSがぶっちぎりです。

AGIは10年以内に来る

ジャレッド・カプラン氏は、このインタヴューの続き(テレ東サイトで視聴可能)でAGIは10年以内に来ると言っています。方やイーロン・マスクはAGIが来年に来ると言っています。この相違について、アンソロピックの最高モデル、Claude3.5 Sonnetに聞いてみました。

イーロン・マスクのAGI(Artificial General Intelligence、汎用人工知能)が来年来るという予測については、以下の点に注意が必要です:

  1. 根拠の不明確さ: イーロン・マスクは具体的な科学的根拠を公開せずに、このような予測を行うことがあります。彼の発言は時に個人的な見解や楽観的な予測であることが多いです。

  2. 定義の問題: AGIの定義自体が研究者間で完全に一致しているわけではありません。マスクが言う「AGI」が、一般的に研究者が想定するAGIと同じものを指しているかは不明確です。

  3. 技術的課題: 現在のAI技術と真のAGIの間には依然として大きなギャップがあります。自己意識や一般的な問題解決能力など、AGIに必要とされる多くの要素はまだ実現されていません。

  4. 予測の性質: マスクの発言は、技術の進歩を促進するための意欲的な目標設定や、公衆の関心を集めるための戦略的な発言である可能性があります。

  5. 過去の予測: マスクは過去にも同様の予測を行っていますが、そのタイムラインは実現せずに延期されてきた経緯があります。

  6. 専門家の見解: 多くのAI研究者や専門家は、AGIの実現にはまだ相当な時間がかかると考えています。ジャレッド・カプラン氏の10年という予測でさえ、比較的楽観的な見方とされています。

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