見出し画像

変わる時代、変わる党。党改革が描く変革の針路

山道を登りしばらくして後ろを振り返ると、いつの間にかこんなにも登ってきたのかと驚くことがあります。

自民党の党改革実行本部でのこの2年間の取り組みも、まさに険しい山登りの如し。偶然のきっかけで声をかけて頂き、気がつけば本部内のワーキンググループの一員として、ずいぶん多くの党改革の取り組みの具体化に関わらせて頂きました。党役員の多選禁止、ガバナンスコード導入、地方議員センターの創設、全国ウェブキャラバン、外部有識者を入れたガバナンス委員会の設置、女性議員増の数値目標などなど。一旦導入してしまえばどれも当たり前に感じられますが、検討段階ではとてつもなく高い断崖に立ち向かうようでした。茂木敏充本部長、上川陽子座長をはじめ、素晴らしい先輩や本部スタッフの皆さんと一緒に仕事ができたことに感謝すると共に、誇りに思います。

「チーム上川」:ワーキンググループの主要メンバー

この2年間に進めてきた党改革メニューには、今後時間をかけて自民党の党内力学や組織文化を大きく変えていく仕掛けが多く埋め込まれています。ほぼ毎週のように党本部5階の会議室に集まって重ねてきた議論。我々がそれぞれのイニシアチブに込めた思い、託した理想がいつの日か結実することを願い、改めて一連の党改革の意義と狙いを振り返りたいと思います。

この2年間の党改革の歩み

1. 党のアイデンティティの再確認

世界でも珍しい主要政党によるガバナンスコード(統治指針)の策定。参考にすべきサンプルもない中、起草にあたっては自民党の立党宣言や綱領など、55年の結党以来の多くの歴史的な文書を徹底的に読み直し、「自民党とは何か」という問いへの答えをひたすらに追い求めました。

国民政党とは何か。責任政党とは何か。改革政党とは何か。国会議員、地方組織、党職員、外部有識者など内外の多くの意見を聞き、今の時代にあった価値観を抽出しようと格闘を重ねました。苦労して一文字一文字紡ぎ出したのが、党運営の柱となる以下の5つの「基本原則」です。

1:政策立案力の強化
2:多様な人材の育成と登用
3:地方組織との連携強化
4:広く開かれた対話とデジタル技術の活用
5:党運営の新たなルールの確立

結党以来の先人たちが大切にしてきた価値観、そして我々が予見できる未来に伝承していきたいと考える価値観を今改めて言語化し、再定義することを試みました。「変革の時代には地図よりもコンパスが大事」(伊藤穰一氏)と言われます。政治風潮が頻繁に移り変わり、偽情報が溢れる時代だからこそ、組織のアイデンティティと目指すべき改革の針路を再確認し、機関決定しておくことの意義は大きいと考えます。

(ガバナンスコード策定の経緯についてはこちらの過去記事をご覧ください。「日本初、政党のガバナンスコードづくり。半年間の挑戦の軌跡」)

自民党ガバナンスコードの概要

2. 自律航行で党改革を進めていく仕掛け

組織の執行部が入れ替わると、党改革も止まってしまうのではないか。そんな冷めた声を何度も聞きました。

改革の持続性を担保するために導入した仕掛けが、外部有識者を含むガバナンス委員会です。年に一度、党内の各部署から聞き取りを行った上で、党のガバナンスコードの遵守状況を詳細に検証し、報告書を作成することを制度化しました。「去年の報告書で指摘された課題にどう取り組んだか」「来年に向けて課題にどう取り組むか」政務調査会や組織運動本部など、自民党の各部署にとってはガバナンス委員会に対する説明責任を負い、評価されることにより、自主的に改革を進めるインセンティブにもなります。

例えば、今年6月に定めた女性議員の育成・登用に関する基本計画では2030年までに女性国会議員の割合を30%に引き上げる数値目標を定めました。2030年まで今の政権が続いている保証はありません。しかし、ガバナンス委員会が毎年計画の進捗状況を確認し、実現に向けて時の執行部の背中を押し続けることで、たとえ執行部が変わっても改革のバトンがつながっていく事を期待しています。

(基本計画の策定経緯についてはこちらの過去記事をご覧ください。
女性国会議員を10年で30%に。どうすれば実現できるか。」)

党改革実行本部でガバナンス委員会の提言を報告(2023年2月2日)

3. ルールの明確化でより組織的な統治体制へ

組織の規模が大きくなればなるほど、組織統治におけるルールの明確性と意思決定の透明性が重要となります。

「権力の集中と惰性を防ぐ」観点から、党則改正により「1期1年3期まで」という役員の任期制限を導入したのは、広範な人事裁量が権力の源泉となる政治の世界では画期的なことでした。曖昧だった党本部と地方組織の関係性については「地方議員センター」を設置することにより情報共有のルールと手続きを明確化し、地方組織との連携強化の基盤を構築することができました。新人候補選出にあたっての「公募原則の徹底」は、より透明なプロセスで有為な人材が政治の世界に飛び込む扉を開くはずです。そして、コンプライアンス研修の定期的な受講義務を全国会議員に課したことにより、「永田町の常識は世間の非常識」と言われることのないよう、組織文化の変革を着実に進めていく土台ができました。

党運営におけるブラックボックスを一つ一つ取り除いていくことを通じ、より近代的でより組織的な政党への進化を後押しして参ります。

女性議員の育成・登用に関する基本計画の策定PTメンバーの皆さん


国民の期待はもっと先に

岸田総裁からは「国民の期待はもっと先にある。さらに頑張って欲しい。」との有難い叱咤激励を頂きました。

目指す党改革の取り組みはまだ始まったばかりです。ようやく大きな座標軸を定めたに過ぎません。何年かして振り返った時に、「随分景色が変わったなあ」と皆さまに感じて頂けるよう、コンパスを片手に険しい山道への挑戦を続けたいと思います。今後の党改革の取り組みと成果にご期待頂くと共に、これからもご意見を聞かせてください。

WGメンバー一番人気の「党本部メロンソーダ」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?