アフターコロナ2「9月入学」について考える

コロナが始まってからもうすでに2ヶ月が経とうとしている。われわれはこの生活にすっかり慣れてしまった。
今回は、「学校の9月入学」について考察してみたいと思う。

まず、このコロナ騒動は1ヵ月2ヶ月で終わるようなものではない。つまりこれから先ずっと付き合っていかなければならない。これは自分の体に起こった持病と同じように、特効薬ができるまでしばらくの間は共に付き合っていかなければならないのである。

さて、ここ数日で、学校の9月入学について議論が突然始まった。。

日本では現在4月が普通である。そしてそれと連動するように、就職も4月採用が当たり前であり、人生のライフイベントはほとんど 4月に始まって3月に終わる。
 学校への入学、卒業、就職、退職、引っ越し、大会社の決算、地方公共団体の事業年度など、我々にとって4月に始まるのは何よりも自然な姿である。さらに日本の桜の姿はこの時期にとてもマッチしており、我々が心理的に新しい気持ちを持って迎えようと言うのに一役添えている。正しく日本的である。

さて、これが欧米と同じように9月になったらどうなるか。
いろいろな影響について深く考えてみる。

まずメリットについてであるが、9月入学は世界的には一般的であるので、日本人の留学や、帰国子女、海外に就職しようとする人にとってみれば全く時間を無駄に過ごすことがなくなるのでとても効率的である。これに伴い、多くの人は日本の大学進学や留学などに足踏みすることなく、積極的に海外に出ていくことが考えられる。現在では、9月から1年間の留学をしようとした場合留学する前の半年、留学を終えてからの半年、合計3年間がかかってしまうのである。また、9月卒業で来年4月に新就職すると言う場合も、その半年間が無駄である(もちろん9月入社は最近増えてきた)。
これらが切れ目なく行えることが一番のメリットである。

 また、その一方で浪人生のことも考えてあげなければならない。彼らに半年間余分に勉強させるだけではなく、中にはアルバイトをしながら浪人してる人もいるので、彼らには重い授業料負担や生活費負担がのしかかる。これは保護者も同様である。
 子供が4月から就職するだろうと思っている生活の苦しい親御さんにとってはもう半年間学費や生活費がかかることになり、マイナスの側面も否定できない。これに関しては、何らかのセーフティーネットや政府の助成金などで対応は可能ではあるが。

 次に大学側であるが、授業料はどうするか、入学金はどうするか、学校の維持費はどうするかと言う問題がある。資金が潤沢にある大学が大丈夫だろうが、資金が乏しい地方の大学などではこれが死活問題となる。

 次に、学生以外の目線で考えてみると、1番影響が出るのは「就職」だろう。新卒一括採用と言うのはだいぶ廃れてきているものの、高校生はじめ、まだまだ多くの会社は4月採用が軸となっている。これについては定年延長もしくは雇用調整などで9月入社に統一するといるのは現実的には容易であろう。また、「医師国家試験・看護師試験」をはじめとする各種国家試験のスケジュールも卒業・採用時期と合わせて見直されるだろう。

 実は民間はかなり弾力的にルールを変えることについては優れており、実際に、会社の決算期変更等は思っているより簡単に行われており、3月決算を9月決算にする事もそれほど大きな問題や混乱を起きないものと考える。

 つまり、本当に問題なのは、民間ではなくむしろ「公的機関」である。国や自治体、公的機関では現在4月から3月を1事業年度として予算を組んでやっている。そして採用も人事異動も含めて「4月採用で3月退職」と言うのが恒例になっており、これは組織を維持する上での重要なファクターである。ここを組み替えることになると、まず予算を変えなければならない。そのためには現在国会で予算が編成されているように、予算編成を夏に行い9月から始動する仕組みに変えなければならない。これは通常国会を今の1月開催から半年程度ずらす必要がある。後は税金の問題である。日本では現在個人事業主を始めとする個人は3月15日が確定申告の期限である。またこれは住民税についても同じである。
 つまり3月までに集めた税金を4月以降に予算を組んで5月から本格的に使い始めるというようなイメージだ。これが半年ずれたらどうなるか。つまり半年と言うところを1つ作るのか、1年半と言う器を1つ作るのか、どちらにするかによって予算や調整もかなり変わってくる。予算や調整の仕組みをそのままにしておいて、他のルールを一切変えずに学校の入学だけ翌月にすると言うのならこれはこれで現実的かもしれない。

 次に問題になるのは、これをいつから実施するかと言うことである。今年の9月からこれを実行しようと思うと、あと4ヶ月しかないので、相当な行政手続の変更が必要となる。当然、法律を相当数変えなければならないだろう。
 また、今現在通っている大学生を例にとれば、3年半で短縮して卒業させるのか、4年半として半年伸ばすのか、これによりまた今該当している人の扱いは変わってくるのではないだろうか。

仮に時間的に間に合わないからと言って、これを来年の9月から適用しようと思った場合、その時まで9月入学が議論できるだけのポテンシャル、悪い言い方をすればコロナの猛威が今回の発想を生んでいるので、コロナウイルスが落ち着いた後には、あえて9月入学にする必要性も正義もなくなってしまう。

 つまり、現在叫ばれている9月入学のシステムについては、あくまで学校が9月にスタートすると言うことで、その他のルール、経済や雇用、国家システムにおいてはあくまで事業年度4月から3月のままで固定するのか、それともそれも含めて9月スタートにするのかということによってスタンスが変わってくる。このような議論はこれから国会で活発化されると思うが、現実問題として今年の9月からスタートすることは難しいと思う。今年の9月からスタートできなければ来年6月からと言うことになるが、それはあくまでコロナの状況次第であり、これらが収束している場合その主張は後ろ盾を失い、議論は失速すると思われる。また、この議論が来年の9月まで伸びる場合は、それまでにコロナウイルスを征服できていないと言うことであり、そもそもそんな悠長なことを言ってられないような状態である。

いずれにせよ私は個人的には実現可能性は低いものであるとみている。

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