サザン早繰り銀の研究
プロ棋戦で「サザン早繰り銀(▽33金型早繰り銀)」があった。
服部慎一郎 六段 vs. 木村一基 九段 第83期順位戦B級2組3回戦(2024-08-07)
この戦法は、後手の戦法で、角換わりで先手から手損で角交換をさせることで、▽33金といびつな悪形の自玉になる代わりに、後手ながら先攻できる、という作戦だ。
通常の角換わり早繰り銀と同じく、サザン早繰り銀にも、先手は腰掛銀で応戦するのがセオリー。
先手は早繰り銀に対し、2通りの応戦がある。
1)腰掛銀を急いで、早繰り銀を受ける。
2)▲37桂馬を優先して、▽33金の悪形にプレッシャーをかける。
がある。
ソフトの最善は 2)。受けに回るよりも、反撃狙いの方がいいというのはいかにもソフトだ。
本譜も 2)の進行だ。
桂馬を跳ねるための▲36歩には、▽44歩がセット。▲45桂と跳ねさせてはいけないからだ。
ただし、▽44歩とすることで、21の浮いた桂馬を狙われる展開が出てしまうのだが、これはあとで述べる。
なお、1)の腰掛銀を急いで受ける、のは、あらきっぺさんの記事があったので載せておく。
☖3三金型早繰り銀をお手軽に対処する方法
では、さっそく本譜をみていこう。
後手は▽42玉・▽52金 で仕掛けた。
サザン早繰りは先攻するのが目的なので、「深く囲う前(つまり深く囲われる前)に仕掛ける」のは理にかなっている。
ソフト的には、▽42玉・▽52金で攻めるのが最善のようで、ソフト一致。
離れ駒がない状態なので、これがベストなのだろう。
後手の早繰り銀に対し、銀が▽75銀と5段目に出た時に、▲24歩、▽同歩、▲25歩と 継ぎ歩をするのは、通常の早繰り銀と同じ。
▽同歩は十字飛車が決まってしまうので、後手はここで▽86歩と攻める。
▲同歩、▽86銀に、▲83歩と叩くのがポイント。
▽同飛に ▲65角 で、飛・桂の両取りだ。サザン早繰りにはつねにこの反撃筋がある。
飛車を逃げて、▲86銀、▽同飛、▲87銀。
また飛車を逃げて、▲21角成と桂馬を取る。
ここで本譜は▽32銀と上がったが、これは疑問手だった。
▲11馬で香車を取られてしまう。
正着は▽32角だった。
87の銀を睨んで攻めにも利いている。
▲11馬、▽22銀打、▲12馬 がこの後の一例か。
いかがだっただろうか。
今回は後手ながら先攻できるサザン早繰り銀。
私はまだ指したことがないので、いつかやってみたいと思う。