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ロズタリア大陸『聖魔戦争』その25

その24→https://note.com/akihi_gfl/n/ncfe9252cf62c

『一般人となった後の予定』

翌朝……顔やらひっかかれたり、ビンタされたりしたシャールヴィ王子がげんなりした様子で執務室にやってきた。
『あいつ……俺が美形だから文なし!でもいい!!絶対、俺と一緒になる!
そのかわり賭博なし!!一生、私の飼い犬として養い続けてやる!!ってなんだよ……
訳わかんねぇよ……』
などと喚き散らして本気で好意を抱いているのを伝えてきたのだった。
試しに「王妃として打診されてるだろう?
相手が変わるだけだ!お前は安泰だろ?」と提案もした。
素直に頷くかと思いきや顔を上げて「絶対イヤ!!」即答して、なんか嫌な感じがする。絶対に近づいてはイケナイ。関わりすら持ってはいけない!!女のカンが囁いている。
根拠なく自信たっぷりに却下されてしまった。ちなみに父親もなぜか同意してくれ、既に断りの返事はしてあると教えてきた。
「どぉ~やったら、あいつから逃げられるんだ、俺は……??」
ローザは違う!彼女は単に薬剤師として来て貰ってるだけ!!役目が終わったら故郷にかえってもらう!!
彼女は寵姫でもなんでもない!
巻き込まないようアンジェリカを一晩中、説得し続けた。
「おはようございます、シャールヴィ様
そのご様子だと……さしずめ死神も乙女の涙には敵わなかった、といった所でしょうか?」
目の下にクマをつくった主の様子を若干、気の毒そうに声をかける。
「あいつは良くても俺がイヤなんだよ……」
『頼むから別れてくれ……』
心の底から、そう願い顔を両手ですっぽり覆い隠して絶望する。
シェドは扇子を取り出し、そう悪い話ではない。と意見する。
「考えようによっては顔と血筋だけの種馬と思えば、将来どぉ~化けるか?分かりませんから、そりゃアンジェリカ様は手放さないと思いますよ??」
「まさかお前がアンジェの奴に事前に入れ知恵つけたんじゃないだろうな!?」
疑う主人に対してシェドが呆れがちに否定する。
「まさか!
僕はそこまで暇人じゃないですよ……
アンジェリカ様ご自身のお考えだと思います」
【疑心暗鬼】と書いた扇子を開き、信じるか?微妙な説を冷やかし気味に教える。
「もしかしたら、女のカンは当たっているやもしれませんよ?
有事となった際、芸術は戦闘からきし!です。
そのまま壊滅の危険性すら秘めています。
それを脈々と受け継がれる公女の血筋が早めに貴方との間に子供、作っとけ~!
破邪の力、目覚めさせとけ~!!と掻き立てさせたのやもしれませんね」
「なんだよ……それ」
不可思議なおとぎ話は懲りた!
興味なさげに片手を振り、今日も山積みされた制度改革への書類に署名し始めていく。

「では、現実的な今後をお話して参りましょう」
シェドが扇子を閉じ、軽くペシペシ自身の手で叩く。
人身売買やら麻薬、密輸、窃盗品の転売など非人道的な手口で私腹を肥やした商人達、及び加担した従業員一同に【死】という刑罰を与え、借金返済や制度改革の資金源に回させて貰っている。
王太子の権利を永久に放棄する宣言後は商業都市の統治は、今まで冷遇され続けてきた、とある商人の息子に譲渡。都市運営を依頼する予定であることを話していく。
「つまり廃太子宣言後の俺自身どうするか?だな」
「ええ。
都市を実力行使で奪還、占拠してる状態ですが、それは皆さん今まで無法者達が好き放題、貯まったツケを払わなかったり、我々が代わりに支払ったり、制度改革して住みやすく変更したからに過ぎません」
一時的に友好的に受け入れられている。長く留まれば反発は必須!とシェドが説く。
「まぁ……俺自身、このままここに留まるつもりもないしなぁ~……」
署名する手を止め、両手で頭の後ろで組む。
「一応、お尋ねしますが、こさえた借金はまだ数千枚残っています。これからはお一人で地道に返済なさると仮定して……どのような方法をお考えか?お尋ねしてもよろしいですか?」
「う"っ……」
痛いトコロを突かれてシャールヴィ王子が言葉を詰まらせる。
『バックレ……ちゃおうかなぁ~?』
到底、払いきれない!宣言パーティー後は闇夜に紛れて1人、旅に出てしまおうか?ぼんやりとそんな風に考えていたりする。
予め想定していたのだろう。
自分の人相や身長、特徴が書かれた指名手配の羊皮紙をシェドが執務机の上に広げてみせた。
「断っておきますが、私に無断で逃走した際は大陸中にこちらの指名手配を配布、捕縛させて頂きますからね??」
ん?
若干の違和感を抱く。
「お前、いま無断で?と言ったか?」
「ええ、私を同行させるならば不問。むしろ引き続き返済のお手伝いをさせて頂きますよ」
ふむ……
考え込みはじめるシャールヴィ王子にシェドが言葉を続ける。
「パーティー後は、一旦ローザ様を里に送り届けた後は、さしあたって工芸都市を目指すことを提案させて頂きます」
「まぁ、叔父から正式に縁切られてるしな……」
旅すがらまだ1度も訪ねたことのない国に行ってみるのも悪くないかもしれない……!
「お前に首輪つけられてるが不満だが、こればっかりは仕方ないな」
ただし!と強く前置いた。
「訳わからん不可思議現象はコリゴリだ!
俺を巻き込むな!!」
シャールヴィ王子はシェドをビシっと指さし、警告したのだった。
微笑浮かべて「善処はさせて頂きます。が、不可抗力的に敵が巻き込んできた際はどうかご容赦くださいね?」
そう返したのだった。

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