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ロズタリア大陸2作目『その21』

『枯れ木に怯えるか?』

『憎らしやぁ~……』
『なぜころしたぁ~!?』
神殿入口に辿り着いた一行は、陰鬱な雰囲気が漂う神殿への参道をおっかなビックリした様子で登っているのだった。
早朝、出立前にアーシュは全員に悪霊が憑依出来ない魔術を施した。そのおかげ?で、不気味な怨霊の姿を眼前で目撃したり!
まるで本当に誰かから話しかけられたような?実感だけで済んでいた。
「アーシュさん……自分、泣いていいですか?」
恐怖から半べそかきはじめたのを聞いて先頭を歩くアーシュが足を止めて、防御魔術の効果が切れ始めた可能性を伝える。
「さてはお前さん、他の連中より感受性が強いな??
大丈夫、泣きたくなったのは恨みや憎しみの感情を向けられたからに過ぎねぇよ。
待ってろ!いま精霊長の加護を増幅させる」
そうして、首飾り紅玉ルビー に触れて、全員に対して魔術を発動させる。
浄化の炎レニング・フェール !!」
青白い炎がたちあがり、今にも泣きそうだった近衛の身体から黒い靄?霧ともいえるモノが
『ぎゃぁ~!!』
絶叫しながら離れて消失していった。
炎がおさまった瞬間、肩をこきこき鳴らして身体が軽くなった!と笑顔で感想を述べる。
「さっきまでめっちゃツラかったんですが、アイリッシュさんの魔術のおかげで、なんだか身体そのものが軽くなりました!」
腰に手をやりつつ、憑依され始めの『目安』だと伝授する。
「今回はこんな感じで不可思議体験のオンパレードだ。
みんな!心してくれ」
一同、心強く返事する。
「おう!!!」

夕刻、登山小屋に到着した一行は、それぞれ携帯食で腹を満たした。
深夜、発生、経験するだろう可能性をアーシュが指摘しておく。
「オバケに理解や耐性がねぇお前らに、先に言っとくわ!
深夜、トイレで起きるヤツいると思う。
あたしが廊下からトイレまでの道のりを明るくしとくから、小屋の玄関先に飾ってある植物やら、小屋の絵画にたまげて悲鳴あげてくれるなよ?」
あたしゃ朝までぐっすり寝たい!
茶化し気味に怯えないよう男集達に頼むのだった。
シェドが予備の護符を持ち、携帯を勧める。
「そんなに怖いなら気休めですけど、こちらを朝まで携帯されてみてください」
アーシュが青筋立てて、不義理だとツッコミを入れる。
護符アミュレット 持ってたんかい!
登山する前に言えよ!
そういう重要なことは!!!」
効果は一度きり故に登山前は申し出なかった。シェドが反論する。
「貴女ならば分かると思いますが、基本護符アミュレット は使い捨てです。
それとも毎晩、人数分の魔力を補充するのですか??」
「う"っ」
「いざ神殿に到着!肝心の貴女が魔力切れでは意味ナイと思うのですが……?」
痛いところをつかれてアーシュが言葉に詰まる。
構わずシェドが恐怖から怯えてトイレすら行けない男性陣に知恵を授ける。
「何事も【怖い】と思えば、木の葉が風に揺れる音ですらオバケの仕業?かと疑いたくもなります。
そもそも一番恐ろしいのは、斬ろうと思えばすぐに首をはね飛ばす事が出来る人間の諸行ではありませんか??」
ごん!
シャールヴィがシェドの脳天に軽く拳骨を振り下ろす。
「だとしても、護衛用の携帯品を持っていたにも関わらず黙っていたお前のやり方が俺は気に入らない!
それこそ首が繋がっている事に感謝するんだな」
自分に返ってきてしまった……
少し反省気味に幼い少年(賢者)は謝罪するのだった。
「配慮が足らず、申し訳ありません……以後は改善を心がけます」

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