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ロズタリア大陸『聖魔戦争』その29

その28→https://note.com/akihi_gfl/n/naabfba8c747b

『破壊神を信奉する者達』

「ローザ!!」
勢いよく走り出したシェドに釣られて、シャールヴィも駆け出し、行方不明となった彼女の名前を叫ぶ!

広場は宮殿の大広間ほど、あるだろうか?
黒いローブを着た人間が数十人ほど、ちょこまかと逃げながら、なんか黒いモヤを吐き出し続けている。
モヤはすぐに狼や小鬼の姿、形を成しローザと同じ髪色をした守護者と思わしき人物に向かい襲っていた。
「想像以上に信徒の数が多いぞ!」
わずかに焔を思わせる髪型をしたいかつい体格で斧を振り回し、滅していく逞しい男性。
「確かにこれは……賢者や末裔だけでは到底、無理ですねぇ~!!」
そして中性的な雰囲気を醸し出す長髪の男性が勢い良く信奉者に向かって無数の針らしき物を投げ放っていく。
刺さった人間達は不思議なことに、禍々しい印象を受ける絶叫をしながら、倒れて死ぬのではなく、塵となって消えていった。
「ひとまず雑魚は放置して、妹を!
ローザを助けねぇと!!」
ポニーテールに髪を結い結び留めた女性が長剣を振るって信者達を次々と滅していく。
シェドも良く見れば、先程話した通り、本当にどうにか自分の身を護りながら、地道に信者を扇で気絶させ、具現化した小鬼を打ち倒し、彼ら同様に塵へと帰させていた。

そんな彼らを眺めながら、シャールヴィはローザの姿をきょろきょろと探した。
広場の更に奥深く……祭壇らしき石場で横たわり、手首から、だらだらを血を流し続けていた。
そんなローザの側には黒いローブを深く被った男が二人、彼女に深く口づけて、次々と手に持った短剣で手首や足を切り刻んでいた。
「冥福の扉を開ける乙女よ……我らが主を降臨させ給え」
「異常者だな……」
想像を絶する光景、行為にシャールヴィは思わず一人ごちながら、修理が終わった聖剣を鞘から抜き放つ。
以前、視た時ほど、へにょってはいなかったが、刀身は細くレイピアのようだった。それでも初めて視た時よりは使えそうだった。
『これ、斬る!というより、一撃で突き殺す!!感じだな……
剣としては、若干、心もとないが、彼女はシェドの奴に無断で巻き込まれたようなモンだ!
終わったら思う存分、俺もあいつをぶん殴ろう!!』
そう決意をあらたに固めると祭壇に向かって一直線に走り抜ける。ぶつかりそうになる信徒は容赦なく、蹴り飛ばして、ローザめがけて全力で疾走する。
「ガヴ"ー!」
襲いかかってきた小型な犬?っぽい黒い生き物は、シェドからいわれた通り塵になるイメージをしながら聖剣の切っ先を突きだす。
「ギァウ!!」
とてもこの世の生き物とは思えない。耳に残る不快な鳴き声を上げ、塵となった。
「初めて使うにしては、やるじゃん!借金王!!」
ローザの姉を名乗るポニーテールの剣士が上出来な具合を短く称賛する。
「聞いてたまげろ!なんと金貨一千億枚だ!!」
シャールヴィは声を張り上げ、襲いかかってくる雑魚を突き倒す。
「んなモン、くそ真面目に払う必要ねぇだろ!?」
女性剣士が無意味だと笑い飛ばす。
「返済するのでなく、金塊を生み出す鉱山を捨て値で買い取られてみては?」
中性的な男性が相当する黄金の塊または宝石類で返済する方法を提案しながら、氷の長針を無数に出現させ、信徒達を滅していく。
!?
『あいつ、まさか!?
そこまで予見して、次は工芸都市を目指すのを薦めてきたのか!?』
もし、そうなら見た目はまだ十代の少年だが……本当に賢者なのかもしれない!
末恐ろしさにシャールヴィの背筋がわずかに凍りついた。
ローザの元に辿りついた。逃げようとする信徒の男性二人は即座に聖剣で喉元を突き殺した。
声を上げることもなく、二人の肉体は塵と化して消滅した。
「ローザ!ローザ!!
大丈夫か!?」
ペシペシ、頬を叩き、首の脈を取る。
弱いが確かに生命の鼓動を感じ取れた。
「どうすればいいんだ!?」
ひとまずこの場から彼女を連れ出せばいいのか??
シャールヴィの大声を聞き、シェドが意識を取り戻す回復手段を叫び返す。
「ひとまず、彼女に現実に戻ってくるよう願いながらベロちゅ~!しつつ息を吹きかけ続けてください!」
「ええええ!?
お前、それ婚姻の誓いかなんかなんだろ!?
俺はローザと一緒になる気ないぞ!!」
二度目は流石に本気の婚姻申し込みだと解釈される!と驚愕し、躊躇うシャールヴィに斧を振るう男性が必要な儀式だと信徒に『滅』の刑罰を与えながら伝える。
「聖剣の主よ!
そなたは我ら女神アイラ様より祝福を授かった勇者の末裔!!
ローザの魂魄はいま冥府に捕えられている状態だ。
解放するには賢者の言う通り、祝福の息吹きでもって誘い、呼び戻すしか方法はナイ!!」
「おれは結婚しないぞ!!
絶対にその意思はナイからな!!!」
「いいから、ぶちゅ!とおっぱじめろ!!
さっきまで破壊神に仕える信徒達が散々、口づけてたろうが!!」
女性剣士に言われて、はたと気がついた。
『そういえば、そうだった……』
「俺は好意持ってる訳じゃないからな!!
断じて俺は幼女趣味じゃない!!」
女神に誓って本意でないことを心に誓い、思いっきり人工呼吸を始める。
多分……この後、おっさん達が吹き込んだ黒いモヤっぽいものをどんどん吐き出させたほうが『良い』んじゃないか?
シャールヴィはそう予想して、胸に両手を置き、骨が折れない程度にモヤを吐き出すイメージをしながら懸命に願った。
「戻ってこい!ローザ!!」
そうしては、自分の息を強く吹き込む。黒いモヤを吐き出させる!この行為を何度も、何度も繰り返し続けた。

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