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ロズタリア大陸『聖魔戦争』その20

その19→https://note.com/akihi_gfl/n/n1712d022fee5

第四章 『生贄の花嫁』

倒錯する現世うつしよ 幽世かくりよ

シャールヴィ王子は、まるで三日三晩ずっと全力で走り続けたか?のような疲弊感や脱力感に襲われ息も絶え絶えな状態に陥っていた。

シェドに言われ、早速、その夜、肌身離さず就寝中すら携帯したのだった。

そうしたら、なんか夜?
あるいは明け方だったろうか?
聖剣っぽい姿がぼんやり自分の夢に出てきて問いかけてきた。
『汝、我の主となるか?』
『なりたくて、なる訳じゃねぇよ!
お前を元の状態に戻したら、結構なカネになるって聞いたからだ』
『ふむ……ならば理由はどうあれ契約成立だ。
お前の生命力、存分に頂かせてもらう!』

目が覚めたら……ベッドから起き上がることすら困難なほど、全身ごっそり!まるで約数十年分ほどの若さとか生命力そのものを誰かに吸い取られた……
あるいは『老衰で死ぬ寸前ってこんな感じかな??』
シャールヴィ王子はぼんやりと思ったのだった。
「だ、だ……れ……か」
声すら満足に出せないほど、衰弱していた。
こんな状況になるのをシェドは既に見越していたのだろう。
ローザに彼の寝室に行き、介抱するようお願いしていた。
「分かりましたか?
これが『聖剣女神の剣 ガレス・スィード』の威力です」
気分は絶賛、干からびたミイラ寸前になっているシャールヴィ王子の身体を少しだけ起こして、唇に優しく水を飲ませる。
なにか不思議な成分でも含まれていたのだろう……爽快感を覚える口当たり、ゴクゴクと飲み干せば、みるみる活力が湧いてきたのだった。
「し、死ぬかと思った……」
全身汗びっしょりに濡れたシャールヴィ王子が肩で荒く息をする。
現実で力を失った聖剣が生命力を糧に若干、力を取り戻した。これを約半月ほど寝ずに続ければ、魔を祓う威力を取り戻せるはずだ。とローザが呆れ気味に説明していく。
一通り、視えない世界や事情、聖剣の取り扱い方などシャールヴィ王子は話を黙って聞き続けた。
『また、まんまとシェドの思惑に乗せられた気がする……』
「はぁ~……」
くそ深い溜め息をひとつ漏らす。
ボリボリ頭をかき、この後の予定をどうするか?思案する。
『んなふざけた茶番付き合い続けられるか!どあほう!!』
一蹴するのは簡単だ。だが、シェドの奴はこうも言っていた。
「見事な簒奪劇をやってのけたクラヴィスの本当の狙い、知りたくはありませんか?」とも……
ふいに疑問が浮かんだ。
「なぁ、ローザ……その、お前はシェドの奴から訊いてるのか?
現在、ローズテリア王国の宮殿に居るクラヴィスが何者なのか?
そして、俺や父はどういう存在なのか?
知っているなら……頼む!
教えてくれ!!」
唐突な頼みにローザは一瞬だけ、きょとんとする。
「私が知っている程度で良ければ構いませんよ」
微笑み、汗まみれのままは身体に良くない点を指摘する。
「でも、その前に湯浴みと着替えですね。
あと身体に優しい食事も持ってきます」
小一時間後……
軽く湯浴みを済ませ、着替え終えたシャールヴィ王子の所にローザが配膳を持ち、戻ってきた。
そして、ローゼンハイム王家と里の関係など語り始めるのだった。


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