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ロズタリア大陸『聖魔戦争』その21

その20→https://note.com/akihi_gfl/n/n434b8e36f677

『守護者の里』

淡い藤色の髪色の里は、大陸から少し離れた孤島に存在している。
そこで地水火風の四大精霊の長に実力を認められた里人は『女神の守護者』となれる。
主な任務は下界、つまり大陸で冥府に封じている神の復活を企み、実行する組織や人物の特定、殲滅を担当している。
賢者様は表向きは勇者ウィルヘルムの末裔に、正しい政治とはなにか?
民草を護るとはどういう行動なのか?
側近として仕え、導く活動を行う。
そして視えない領域では、自分達『里人』が感知出来ない前段階を察知、調査する役目。
だから、私達の里がある方角に向かい、岬で両手つき、懇願していた。
「俺……その茶番に付き合う必要あったのか?」
りんごを細かく刻み、米と一緒に炊いた粥を食べながら、困惑気味に今まで散々、シェドに振り回され続けている状況を尋ねる。

賢者1人だけでも里は要請に応じはした。
ローザは人差し指を自身の頬に当て、賢者の考えを代弁する。
「でも、賢者様は貴方を同行、真似させることに『意味』を見いだしている……のではないでしょうか?」
勇者の末裔と共に救援を願うことでより緊急性が高い【非常事態】だと私達、里人を守護、導く指導者的な存在である『女王様』がご判断なさった。とローザが微笑みながら、出立前に聞かされた出撃前の【四卓会議】の内容を打ち明ける。
「で、合流するか?どうかは俺次第だったと……」
最初、ローザが老婆に姿を変身させていた背景をシャールヴィ王子がようやく理解する。
『女王様とかやらには結局、疑われていることに変わりなくないか??』
1人、心の中でツッコミいれ、話の続きを促す。
「それで、その邪教集団ってやつは神話の神様とやらを復活させてどうしよう!っていうんだ?」
「ん~……まだハッキリとした理由は私達も分かりません。
でも大陸を滅亡させようとしているのだけは『確か』です」
「破壊が目的の神様なら……
召喚したヤツ自身が真っ先に犠牲にならないか?」
「まぁ……そうですね」
ローザが苦笑混じりに同意する。
シャールヴィ王子は無意味さを推測しつつ、そこまで滅ぼしたい動機はシェドのいう通り、確かに気になる……
『父上が原因で失脚した一族の報復か?
いや、それならもう悲願は達成されているよな……
奴の狙いは、奪った権力の維持か……?』
シャールヴィ王子は空になった器に視線を落とし、考えこんだ。
しばらくすると、顔をローザのほうに見上げて、人間の欲深さを理由とした、ある仮説を提案した。
「なぁ、ローザ……
これはあくまで俺の勝手な推測だが……
その冥府の神様とやらに復活させることを提案しつつ、実際はやらない!
不思議な力だけを一方的に利用する!ってのは、可能……なのか??」
「あっ!!」
ローザは軽くぱちん!と両手を合わせ打つ。
「考えてもいませんでした!!
結論だけ、お伝えすると『可能』です!!」
「もし、ビンゴならクラヴィスとやらの目的は大陸の支配、皇帝となる野望だな」
下界の生き方がまだよく分からないローザが小首を傾げる。
「でも、そうしたら死後は約定を破った罰として魂魄そのものが冥府にいる破壊神にとり殺されますよ??」
「ははっ……祟り!ってやつか?なら、しったこっちゃねぇよ!
今、生きて大陸制覇!!いいね、俺は好きだな。そういう無茶で大それた野望!!」
その為にせっせと自分の代わりに、善政敷いて民の為に今も懸命に働いてくれている。
シャールヴィ王子は快活に、破滅とは真逆の発展させている現状を笑い飛ばした。
そして、とある仮説に辿りついた。
「あ"ぁ"!?
なら、俺が毎晩、死にかける必要なくね!?」
馬鹿げた茶番に、もうこれ以上つきあわない!!
「ご馳走さま、ありがとう!」
お礼を伝えると、シャールヴィ王子は短剣をローザに手渡した。
「俺にとってそいつは聖剣じゃなく、意味不明な魔剣だ!
剣を治すのは鍛冶屋!と相場が決まっている。
そういう摩訶不思議な内容はお前とシェドに任せる!
奴のお陰で、俺は堅苦しい王子の身分から解放される!!
俺は博打にのめり込んで、こさえた借金を返済したら、のんびり大陸を旅でもするかなぁ~?
んじゃ、早速、その借金返済の為に書類仕事を済ませてくる!」
意気揚々と心持ち、浮き足だって寝室を出て行ってしまったのだった。
部屋に1人取り残されたローザは、瞳をぱちくり何度も瞬かせた。
そうして、以前話した王子の言葉を思い出す。
「あっ!だから、私を娶る意思はなかった!!
役目を果たしたら一緒に里に行って『婚姻破棄』を説得する!って仰ってくださったのですね……」
『なるほど~……
そして【女神の剣ガレス・スィード 】は我が里の鍛冶職人が治せ?
その為に私に預けた……と』
1人合点するとローザは早速、行動に移した。
短剣を床に置き、白銀の錫杖を手に持ち、白い光で六芒星を描く。
不可思議なことに短剣は、ふわりふわりと空中に浮かびだす。
転移 フィア・フィギュル
言葉を発すると六芒星はまばゆい光を放った。
次の瞬間、短剣は消失し、床に描かれた魔法陣もすっかりなくなっていた。

後片付けして部屋を出て、自分はいつも通りマリーと合流して治療部屋に向かい、患者の治療に励んだのだった。

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