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ロズタリア大陸『聖魔戦争』その32

終章『あらたな旅立ち』

ものすごく納得いかない……!
シャールヴィは憮然と下唇を突き出して、黙って馬に跨がり街道を進んでいく。
シェドに「商業都市に戻っても地震の後始末を周囲から押しつけられる無意味さ」を説かれ、ならば……次の宿場町まで進んでしまい、そこで旅支度を整え直せばいい。そう提案されたのだった。
『なんか俺……借金返し終わるまで、ずっとこのクソガキに振り回される気がする……』
なんだかんだ良いように、コキ使われている気がしてならない。
とはいえ、自力で残りの借金【金貨数千枚】完済する案など、まるで思いつかない!
黙ってこっそり逃げだせば大陸中に指名手配される……!
八方塞がりの状況に陥った自分自身が許せない!!そんな理不尽で複雑な心境に陥っていた。

『守護者の隠れ里』

「ローザの様子は……?」
端正な顔立ちをして、凛とした雰囲気を放つ女王がほんの少しだけ眉間に眉を寄せ、大地の巫女である彼女を案じる。
黒い肌をした誠実そうな青年、大地を守護する精霊長が女王の問いかけに応える。
『現在、癒しの間にて我ら四精霊の長が魂魄に染み付いた常闇の穢れを祓い浄め続けている。
あと数日もすれば、里に戻すことも可能だろう』
毛髪を真っ赤に燃え盛らせた火の精霊長が腕組みしつつ、ローザの様子を話す。
『加えて女神アイラ様の浄化の光を浴び続け、そして我が焔による祓い落としも行い続けている。特に問題ないように思う』
母性を感じさせる水の精霊長が心配そうに愛し子の今後を懸念する
『下界がわからず屋ばかり!だからって冥府に落としかけることなくない!?
賢者の考えや理屈からすると、女神の守護者が禁忌破って下界に興味持った罰ってコト!?』
緑色の髪をした風の精霊長が邪推を指摘する。
『ミューズ、それは考えすぎなのではないか?
それに賢者は確かに申した。
「全てが終わり次第、即ち邪教集団の全滅、冥府に封じた神の処遇を最終決定次第、魂魄の滅をもってして謝罪する」と……』
二度と同じ行為を繰り返さない決意を高く評価した。
「全ては邪教集団を束ねる首領、そして志を継ぐ者達を全員、始末してからですね」
女王がまだ戦いは始まったばかりだと表情険しく答える。
「今回の首謀者は人間としても決して侮れぬ存在、そして何より賢者自身、我らと盟約を結びながら此度の大それた行動……場合によっては、敵とみなすことすら予測して対応する必要があるやもしれません。
二千年前の聖戦再来の危険すらありえるでしょう!
みな、無理することなく任務に励み続けてください」
女王はそのように告げ、四卓会議を締めくくったのだった。
水の神官、炎の戦士、風の剣士、それぞれ頭を垂れ役目に応える。
「承知、致しました」

『ローズテリア宮殿内のとある一室』

「ひとまず計画の成功に乾杯!」
クラヴィスと深緑色の髪をした青年ヒューゲルはお互いにワイングラスを持ち、冥府に封じ込められている神の一部復活を祝った。
「して、殿下……この後はどちらの扉を破壊、致しますか?」
貴族に成り済ましたヒューゲルが心底、愉快そうに次の標的はどこか?尋ねる。
「クク……人とは、かくも愚かな者よなぁ~……
愛する者との死別を嘆き悲しむ者を助けるも良し。
我こそは真の支配者と自認する魔道の者達に『正義』と援助するも良し!だ」
「殿下、では……次なる困窮者を救う術を今宵はゆるり詳しく話して参りましょう」
「あぁ……無論だとも!!」
二人はソファに深く座りながら、ほくそ笑みあったのだった。

ーー終わりーー

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