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ロズタリア大陸『聖魔戦争』その27

その26→https://note.com/akihi_gfl/n/n0abb3a4c9bb4

『蘇る神話生物達』

「うそだろ……おい」
グォ~~ン!!
聞いたことがない大きな雄叫びが商業都市から少し離れた場所から発せられた。
かがり火に照らされ、倒壊した家屋の下敷きになっている住民を救助すべく、警備隊達が懸命な活動を行っている。
「なんだよ……アレ……」
都市の城壁からでも、月明かりに照らされ、ぼんやりと大きな巨体、そしてギラリと光る一つの目玉らしき物体を目撃して、警備兵の一人が呆然と呟く。

都市や宮殿内が慌ただしく状況を把握するために、深夜にも関わらず様々な人達が忙しく行き交う。
その中で一人だけ、自身の仕事部屋で冷静に大陸地図を眺め、自身の密偵からの報告を淡々と聞いている人物がいた。
「仰せの通り、ローザ様のドレスに隠し糸を仕込み、敵の拠点まで運び込まれるのを確認、致しました」
『彼女には申し訳ないが、わざと動きにくいドレスそして靴を履いて咄嗟に逃げたり、避けられないよう取り計らわせてもらった……』
こうでもしなければ、シャールヴィ王子をはじめ、人々は邪教集団の存在を信じなかっただろう……
『あとはシャールヴィ王子を現場に連れていき、守護者と合流、拠点を壊滅。
彼女を救出すればいい』
「どういうつもりです!?」
壁にかけたろうそくの炎が一瞬で大きくなり、一人の髪の長い水晶で造られた冠を被った女性が抗議の声をあげてきた。
「まさかローザすら囮にした!というのですか?
返答次第ではシェド、貴方ですら容赦しませんよ?」
「答えはYESです。
大陸の存亡を賭けた聖戦から既に二千年もの長い年月……
人々は当時の出来事すら忘却の彼方においやり、末裔本人ですら、おとぎ話だと信じて疑いすらしなかった。
責任は戦後、全て私の『滅』をもってしてお詫び致します。
ごく短期間的にでも直接、目撃!経験させる必要がある!!
そのほうが分かりやすく、皆さんの同意が得やすい!と考えました」
そしてシェドは醜く口元を歪め、予想通りに食いついた敵の短慮さに感謝した。
「信じておりましたよ、クラヴィス殿下……
貴方ならば絶対に彼女をさらって邪神復活の儀を早々に執り行ってくださる……と!!」
「ひとまずローザの救出、儀式の中断が先決です。貴方の処遇はその後とします!!」
一方的にろうそくの炎が通常に戻って、再び仕事部屋には静寂が訪れる。
するとシェドは、もうこの部屋に用はない!とばかりに予め済ませて置いた皮袋だけ持って、シャールヴィ王子の元へと走り出したのだった。

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