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ロズタリア大陸『聖魔戦争』その31


黄泉がえりよみがえり

「シャールヴィ……様??」
うっすらと紫水晶の瞳をぼんやり開ける。
「気がついたか、ローザ!
良かった……」
シャールヴィは安堵した様子で軽く吐息を吐く。
ローザもうっすら微笑み、感謝を告げる。
「私……冥府の底にひきずり落とされかけていたんです。
けれど、貴方のおかげで戻ってこれました……ありがとうございます」
以前、無断で自分に口づけした理由に思い至る。
「そういえば……あの時はショックでしたが……無事に女神のもとに、こちらに戻れました。
シェド様はこんな事態を予見されていたのでしょうか?」
疑問を抱くローザの近くに信奉者達を全員、闇へと還し終わったのだろう。
気がつけば、シャールヴィの後ろに神官のような中世的な男性が立っていた。
「里に戻る前に傷の手当てをしないとですね」
ローザが水の精霊長の加護を受けている男性の名前を呼ぶ。
「リュミエール様……」
快癒パラネ・ミーシャ!!
瞬く間に全身、切り刻まれ血を流していたローザの身体の傷が塞がっていく。
リュミエールがもう大丈夫な様子に安堵の吐息を漏らす。
残り二名は大陸の外側に出現した闇の生物を殲滅しに行ったことを伝える。
「リーザとエイリークの二人は、既に洞窟の外に出て、出現中の魔物を殲滅しに行きました」
そして、いつの間にか申し訳なさそうにシャールヴィの隣に立っているシェドを鋭く睨みつける。
「ひとまず急ぎ、私はローザを抱えて里に帰ります。
察するに、大陸中に信奉者が散らばって各都市で活動している!と仰りたいのでしょう?
二人が帰還次第、四卓会議を開き今後の対策を話し合います」
「やりすぎだったのは自覚しています。弁明も致しません。全ては根本を解決した後に私の肉体、魂魄、共に自由に処分なさってください」
シェドが頭を下げて謝罪の意思を伝える。
転移 フィア・フィギュル
リュミエールは返答を待たずに、一方的にローザを身体を軽々と抱えてみせると、地面に六芒星の光り輝く魔法陣を出現させ、呪文を唱えてあっという間に消えてしまった。
『また俺……置いてかれた……』
どこか衝撃を受けた様子でシャールヴィが心なしかしょんぼりしてみせる。
諦めのため息を一つだけ漏らして、聖剣を鞘に戻す。そしてトコトコ入ってきた方向に歩き始める。
「はぁ~……」
あることに気がついて大きな声をあげる!
「あ"ぁ"!?
俺、気が付いたら寝間着のままじゃん!!」
大きな地震に目が覚めて取り急ぎ、大広間に走り向かった。
怪我人が出ていないか?叫び、確認していたら、いつの間にか、人だかりができて陣頭指揮を執っていた。
「シャールヴィ様、一旦、商業都市に戻るんですか?」
「当たり前だ!!
寝間着姿のままで出歩けるか!」
シェドの問いかけに強く抗議する。
よく見たら、シェドは既に旅支度の格好だった。
予めこういう展開が起こることを予測していた!
確信したシャールヴィが起こり始める。
「お前、ふざけるな、よ!!」
どさくさに紛れてこのまま逃亡劇に持っていこう!
そう判断したシェドがものすごい勢いで走って逃げ始めた。
「待て、こら!!」
ちょこまか、うまい具合に身長差を活かして、ひょいひょい身を交わして馬を待機させていた場所までシャールヴィを誘導してみせるのだった。
「私は以前、こうもお話しました!
敵が一方的に巻き込んできた際は【ご容赦】くださいね?とも……」
「あ"ぁ"!?
敵は家屋倒壊させるほどの地震を意図的に引き起こしてみせた!?とでも言うのか!?」
「それは貴方が、ご自身で判断なさることです」
シェドの髪を掴んだ!!と、思った瞬間、ひょい。咄嗟に屈んで避けてみせた。
『ぐぬぬぬ……!』
ますます、ムキになって右往左往!
幼い賢者に振り回されるシャールヴィだった。

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