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映画の時間 第二回 「ゴーストバスターズ アフターライフ」

ニューヨークを魔神から救ったゴーストバスターズの活躍から40年弱が過ぎた現代。子供の頃に父親に勧められて借りてきたビデオで見た「ゴーストバスターズ」の続編がついに公開されました。
「ゴーストバスターズ2」?まあヴィーゴの御大将のことは忘れましょう。「2」の話はするだけ野暮ってもんです。映画の中で一ミリも触れられていませんでしたから。

今回は若干のネタバレを含むので、その点についてご了承ください。


いやあ、まず最初に敗北宣言をさせていただきます。

この映画にはしてやられました。「ザ・プレデター」の悲劇から「過去の名作の続編映画は一切期待しないぞ!!」と決意した自分でしたが、ものの見事にその決意を揺るがすような良策でした。

監督はあの「ゴーストバスターズ」を撮ったアイヴァン・ライトマンの実の息子ジェイソン・ライトマンが任されています。

結論から言えば、「ゴーストバスターズ」の続編は何とジュブナイル映画に仕上げられていました。ジュブナイル映画としても続編映画としても高い水準で仕上げられていますし、キャラクターも一切無駄がありません。俳優陣も演技力が高く、特に主人公の中でも八面六臂の活躍を見せるフィービーは、新進気鋭の子役マッケナ・グレイス、思春期真っ盛りの兄に「ストレンジャーシングス」フィン・ウルフハードといった今をときめく若者を使っているのも好印象。


話の大筋としては、ゴーストバスターズの活躍が過去のものとなった現在、そのメンバーの一人だったイゴンがアメリカの片田舎のサマーヴィルで変死ししてしまい、それに重なって住んでいる家を家賃滞納で追い出された彼の娘と孫達が彼の家を訪ねると、その家には不思議な現象や不気味な地下室が隠されていて・‥


物語のプロットも、若者達が青春を懸けたもので大いなる存在と戦っていく、という旧作の構造はしっかりと今作にも受け継がれていました。


その一方で、旧作とのつなぎ方のテンポがラストにかけて急ぎ足になったのが残念な点です。具体的に言うと、窮地に陥った主人公達をいきなり現れた旧ゴーストバスターズのメンバーが助太刀をするというシーン。その急すぎる登場のおかげで、何故彼らが突然サマーヴィルに現れたのか、その理由が分からず見ている人たちを置いてきぼりにしてしまった感が否めません。
もちろん旧メンバーが集まった理由などは想像することは出来るし、それをいちいち映像化していては、それこそ長尺になりテンポもクソもなくなる恐れもあったので仕方のないことかも・‥



とでも言うと思ったのか!!

そんな懐かしのキャラを出すことがファンサービスとでも言いたげなその安直な発想で無理にキャラを出そうとする、その根性は正直寒いぞ!

はっきり言わせて貰うなら、このシナリオの粗は全部旧作のメンバーに集中してしまっていると言っても過言じゃないからな?少しでも旧メンバーの描写を入れてさえすれば、彼等の登場シーンも意味のあるものになったかも知れないのに!

それにシガニー!お前どうしちゃったんだよ!七十過ぎてるくせに何であんなに綺麗なんだ?マギースミスと同じ年の取り方してるじゃねえか!老いたりとはいえますます美しさに磨きがかかる彼女を見れたのはうれしいポイント。(とはいえ役どころとしては、ゲスト出演のかかし以上の意味はないんですけどね)


とまあ口汚いことを言ってしまいましたが、微妙に感じた点はそこだけであり、全体を通してとても完成度の高い作品でした。

アクションも派手ながらも丁寧に描かれていたため、目が滑ってどこに注目したら良いのか分からない、ということもありませんでしたし、ゴースト達の造形も、CGにプラスして旧作の正当なブラッシュアップとでもいうようなパペットの質感を大切にした通好みのクオリティでした。


本作は全編通してジュブナイルの要素が強く、自分の好きなものに正直で、ひたむきにそれと向き合う姿勢をとり続けるフィービーやポッドキャスト、親の愛を感じたことのない母、思春期真っ盛りで背伸びして気になるあの子に振り向いて貰おうとする兄、そしてそんな彼等を突き放していたものの、優しく見守っていたイゴン。全編を通して描かれる、そこはかとない家族愛と絆と青春の一幕はとても温かく爽やかに感じました。
見て損はない、とても楽しいゴーストバスターズの正当な続編です。

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