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FP学習日誌(25) -損害保険の制度と仕組み その3「自動車保険」

3.自動車保険
自動車保険は、強制加入の「自賠責保険」と「任意保険」との二重構造の補償システムとなっており、自賠責でカバーできない部分を任意保険で補います。

自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)
(1) 特徴
自賠責保険は、自賠法(自動車損害賠償保障法)によって加入が義務付けられた自動車保険です。人身事故の被害者救済を目的とした強制保険で、原則として原付を含むすべての自動車を対象としています。
(2) 補償内容
被保険者が自動車の運行によって他人を死傷させ、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われます。保障される損害は、死亡の場合は「逸失利益・葬儀費用・慰謝料」、後遺障害の場合は「逸失利益・慰謝料」、傷害の場合は「治療関係費・休業損害・慰謝料」です。
契約者・被保険者の悪意による損害は免責ですが、被害者救済の見地から、運転者の法令違反である「無免許運転・酒酔い運転・麻薬等を使用しての運転」による事故の場合でも保険金が支払われます。また、自賠責保険では救済されないひき逃げや無保険者による被害に対して、政府は自動車損害賠償保障事業を行っています。
(3) 保険料
さきに記した火災保険と同様、どの保険会社で加入しても自賠責保険の保険料は同じです。
(4) 保険金の支払限度額
保険金の支払限度額は、1事故ではなく被害者1名ごとに定められています(死亡=3千万円、後遺障害による損害=最大4千万円、傷害による損害=120万円)。そのため、1つの事故で複数の被害者がいる場合でも、被害者1名あたりの支払限度額が減らされることはありません。
また、任意保険のような過失相殺制度はありませんが、被害者に7割以上の重大な過失があった場合には、重過失減額制度により支払額が減額されます。なお、賠償額の確定までに時間がかかるような場合、治療費など当面の出費に充てるため、被害者に対する仮渡金制度もあります。
(5) 保険金の自動復元
自賠責保険の場合には、保険金が支払われても保険金額は減額された残存保険金額が保障額となるのではなく、自動的に契約時の保険金額に復元します。
(6) 保険金の請求
保険金の請求は、通常、加害者が保険会社に対して行いますが、被害者が直接保険会社に請求することもできます。また、ひき逃げや無保険車による被害者救済のための自動車損害賠償保障事業でも、被害者が直接請求することによって、自賠責保険と同じ補償を受けることができます。
(7) 被保険者の範囲
被保険者は、自動車の保有者と運転者です。
・保有者・・・自動車の所有者その他使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運転の用に供する者
・運転者・・・他人のために自動車の運転または運転の補助に従事する者

任意保険
(1) 担保種目
任意の自動車保険には、賠償リスクに備える「対人賠償保険」「対物賠償保険」、傷害リスクに備える「自損事故保険」「無保険車傷害保険」「搭乗者傷害保険」「人身傷害補償保険」、物リスクに備える「車両保険」があります。
① 対人賠償保険
事故により、他人*を死傷させ、法律上の損害賠償責任を負うことによって生じた損害のうち、自賠責保険で支払われる金額を超える部分に対して、保険金が支払われます。自賠責保険の上乗せ保険として位置づけられます。被害者1名当たりの保険金額を決めて契約しますが、保険金額の上限はなく無制限での契約も可能です。
被害者救済の見地から、運転者の法令違反である「無免許運転・酒酔い運転等」による事故の場合でも保険金が支払われます。
* 「他人」の定義は、父母・配偶者等の家族について、自賠責と任意保険の対人・対物では異なります。
② 対物賠償保険
事故により、他人の財物に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負うことによって生じた損害に対して、保険金が支払われます。対人賠償保険と同様に、被害者救済の見地から、運転者の法令違反による事故の場合でも保険金が支払われます。
③ 自損事故保険
ガードレールへの衝突や崖からの転落などの単独事故により、自動車の運転者・保有者その他の搭乗者が死傷し、それによって生じた損害に対して、自賠責保険および自動車損害賠償保障事業のいずれによっても支払が受けられない場合に保険金が支払われます。
④ 無保険車傷害保険
対人賠償保険をつけていないなど賠償資力が十分でない他の自動車との事故によって、死亡または後遺障害を被り、法律上の損害賠償請求権が発生した場合、自身の保険から本来相手側から支払われるべき保険金が支払われます。
⑤ 搭乗者傷害保険
事故により、運転者を含む搭乗者が死傷した場合に保険金が支払われます。搭乗者傷害保険金は、加害者からの賠償金・自損事故保険金・無保険車傷害保険金と関係なく支払われます
⑥ 人身傷害補償保険
契約した自動車または他の自動車に乗車中などに、自動車事故(単独事故を含む)で死傷したり後遺障害を被った場合に、実際の損害額が保険金額の範囲内で支払われます。過失割合に関係なく、示談成立を待たずに、損額額の全額が支払われるのが特徴です。
⑦ 車両保険
衝突・接触・墜落・転覆・物の飛来・物の落下・火災・爆発・盗難・台風・洪水・高潮その他偶然な事故によって自動車に生じた損害に対して、保険金が支払われます。他の車との衝突・接触において相手方の確認ができる損害のみを補償する「エコノミー車両保険」、単独事故や当て逃げによる損害まで幅広く補償する「一般車両保険」があります。
また、地震・噴火・津波による損害は免責となりますが、別途特約を付加することもできます。
(2) リスク細分型自動車保険
従来の自動車保険は、主なリスク要因を「車種・運転者の年齢・事故歴」として保険料が決められていましたが、リスクをもっと細分化して保険料に差を設けたのが「リスク細分型自動車保険」です。金融庁のガイドラインでは、「性別・運転歴・使用目的・使用状況・安全装置・所有台数・地域」がリスク要因として挙げられていますが、各保険会社によってリスク要因の選択および区分方法は異なります。算出方法によっては、必ずしも保険料が安くなるわけではないことに注意が必要です。(つづく)

※画像と本文は関係ありません。

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