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FP学習日誌(22) -保障見直しのポイントと法人の人的リスクマネジメント

今回は生命保険の最後、「保障見直しのポイント」と「法人の人的リスクマネジメント」です。

保障見直しのポイント
1.見直しタイミング
長い人生では、人のライフステージも経済環境も変化します。家族構成や暮らしが年々変化し、保険期間の途中で加入済みの保障内容に過不足が生じてきた場合には見直しが必要になります。
また、加入している保険が適正かどうかを定期的に再確認することも必要です。さらに、社会環境の変化などによる収入減から家計の見直しをする必要性が生じたときに、保険料負担を低減するための「保障の見直し」を行うこともあります。
2.一般的な保険見直しのステップ
次の(1)から(4)のステップで進めましょう。まずは、
(1) ライフプランを確認して必要保障額を把握する
家族構成や収支、資産・負債など、必要保障額を算出する前提条件が変わると、必要保障額も変わります。例えば住宅を購入して団信に加入すると、世帯主死亡後の住宅費は維持費等を除いて不要となり、大幅に必要保障額を引き下げる効果があります。わが家では、結婚数年後に住宅を購入しましたが、結婚の際には夫婦そろって生命保険の大幅な見直しをしたものの、住宅購入時には何もしませんでした。住宅は共有名義で、2人とも団信に入っているので、早急に見直した方が良いのでしょうね。
また、逆に必要保障額の増加要因としては、扶養家族の増加による基本生活費・教育費等の増加や、転退職に伴う収入の減少が挙げられます。「扶養家族の増加」といえば子どもが増えることを想像すると思いますが、昨今の高齢化社会では、両親を扶養にするというケースも少なくないと思います。両親の生活費や介護費のことも、場合によっては組み込む必要があるでしょう。
さらに、国の社会保障制度が変わると、個人で準備しなければならない保障が増えることもあります。わたしの若いころは、公的年金支給は60歳からでしたが、いまは65歳、そのうち70歳になる日も近いのではないでしょうか。それまで働き続けるとしても、いくらかは保険でカバーすることを検討してもよいかもしれませんね。
(2) 既加入保険の分析
次のポイントで分析してみましょう。
① 加入目的に合っているか?
「死亡」「医療」「老後」、それぞれのリスクに合わせたものに加入していますか?
② 保障期間は適切か?
末子の独立時期までカバーできていればよいでしょう。
③ 保障額は適切か?
一般的には、末子誕生時に必要保障額は最大となるので、そのままにしておくと保証の無駄が生じることがあります。定期的に見直しが必要です。
④ 病気やケガに対する保障は十分か?
入院給付金日額のほか、保障期間がいつまでかという点も重要です。また、生前給付保険などの検討も適宜行いましょう。
⑤ 保険料負担に無理はないか、また、保険料の払込はいつまでか?
現在だけでなく将来にわたって払込が継続できるかどうかを確認してください。定年後も払い続けるプランはおそらく見直した方が良いでしょう。
(3) 上記のステップ(1)と(2)の結果を比較し、修正が必要な点を確認します。
(4) そして「見直しの実行」です。
① 加入目的に合っていない場合
新規に加入し直す、契約転換により保険種類を変更する、などを検討します。
② 保障が不足している場合
中途増額、特約の付加、追加加入などを検討します。
③ 保障が過大な場合
減額(定期保険特約の一部解約など)、複数加入のときは不要な契約の解約、払済保険への変更、などを検討します。
④ 保険料負担が重い場合
勤務先のグループ保険(任意加入団体定期保険)、共済、ダイレクト販売商品、リスク細分型保険(非喫煙など健康体は保険料割引)などの利用を検討します。また、保険金が年金形式で支払われる収入保障保険は、受取総額が同じ定期保険に比べて保険料が安くなります。

以上で「見直し」のパートが終わったので、次は「法人の人的リスクマネジメント」です。主に中小企業の社長さんのためのリスクマネジメントですが、まずはその利用目的から。
1.経営者のリスクマネジメント
中小企業の場合、ほとんどが「経営者=会社」というのが実態です。経営者に万一のときも円滑に事業承継していくためには多額の準備資金が必要になります。
また、無事に勇退時期を迎えた場合の老後生活資金および相続対策として、経営者自身の退職金準備も考えておかなければなりません。そのいずれに対しても、生命保険が活用できます。
2.役員に対するリスクマネジメント
役員の死亡等は、経営者と並んで、経営上の損失が大きく、関連企業に与える信用上の損失も生じる場合があります。また、役員自身に対しては、万一の場合の遺族保障や退職慰労金が必要です。それらの準備に、生命保険が活用可能です。
3.従業員の福利厚生
従業員に対する福利厚生制度の一環として、従業員に万一の場合の遺族保障および従業員の退職金の確保のために、生命保険が活用できます。

そして企業向けの商品としては、具体的には次のようなものがあります。
1.経営者・役員向け保険
(1) 終身保険
発生時期が予測できない死亡や相続に対しては、満期のない終身保険が適しています。また、終身保険は保障機能とともに貯蓄機能もあるので、退職時には解約返戻金を退職金として支給することができます。この場合、契約者及び保険金受取人を法人から個人へ名義変更して生命保険契約自体を交付すれば、個人の相続対策としても利用できます。
(2) 定期保険特約付終身保険
事業保障資金については、相続対策資金と異なり、ある一定期間中準備しておけばリスクを回避できることが多いので、その分を割安の定期保険特約で充当して終身保険に上乗せする方法を利用することができます。
(3) 養老保険
養老保険には保障機能と貯蓄機能があるので、満期を定年時期に合わせた死亡保障と退職金準備には適していますが、保険期間が一定期間に限定されるので相続対策には不十分です。
(4) 定期保険
一定期間の保障のみを準備するには最適の商品です。貯蓄性はありませんが、その分保険料負担が少なく、最小のコストですみます。
(5) その他
長期平準定期保険、逓減定期保険、逓増定期保険、個人年金保険があります。目的に合わせて検討しましょう。

2.従業員向け保険
(1) 総合福祉団体定期保険
役員・従業員の死亡退職金・弔慰金を準備する1年更新の定期保険です。
・契約者=法人
・被保険者=原則として役員・従業員全員
・死亡保険金受取人=被保険者の遺族または法人
として、従業員等の福利厚生を目的として加入します。保険料は企業が負担し、被保険者が死亡したときは、死亡原因が業務上・業務外にかかわらず死亡保険金が支払われます
加入に際しては、被保険者の健康状態に関する告知および被保険者となることについての同意が必要です。
なお、「災害総合保障特約」を付加すると、不慮の事故による障害・入院に対して給付金が支払われます。この特約の保険金受取人は、被保険者(役員や従業員)ですが、被保険者の同意があれば、法人とすることもできます。また、経営上の損失補填分として、一定範囲内で設定する「ヒューマン・ヴァリュー特約」を付加することもできますが、この特約の保険金受取人は、法人に限定されています。
(2) 団体就業不能保障保険
役員・従業員の就業不能時の休業補償に充てることができる1年更新の定期保険です。企業が実施する休業補償給付の原資となるもので、保険料は企業が負担し、被保険者が就業不能となったときに保険金が支払われます。
(3) 養老保険
従業員等の福利厚生目的で企業が加入した場合には、定年退職金と死亡退職金を同時に準備することができます。また一定の場合には、法人にとって税制上のメリットが設けられています。
(4) 医療保障保険(団体型)
健康保険の本人一部負担制の導入や健康保険対象外費用の増加などに対応して、公的医療保険制度の補完を目的とするものです。治療給付金、入院給付金および死亡保険金があります。

今回はちょっと長くなってしまいましたが、生命保険に関しては以上です。お付き合いありがとうございました。
次回からは、「損害保険」が始まります。

※画像と本文は関係ありません。

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