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FP学習日誌(21) -ライフステージ別の保険設計

人の一生におけるリスクの種類と大きさはライフステージによって変わり、また、ライフスタイルによっても大きな違いが生じてきます。一般的には、「死亡に伴うリスク」は扶養家族が多いほど、そして子どもが小さいときほど大きくなります。子どもが独立したあとや、わたしのように子どもがいない人は「長生きに伴うリスク」への準備が必要です。そして「病気やケガ」のリスクは、一生を通じて誰にでもあるものですよね。
ここでは、会社員等と自営業(個人事業主)に分けて、それぞれの保険設計についてみていきましょう。今回も「ダイバーシティ」や「多様化」は無視して(笑)、適齢期で結婚して子供を持ち、子育てや家事は奥さん中心、その後子どもは大学を出たら独立していく、というストーリーで進めます。

1.会社員等の保険設計
(1) 独身期(20歳代)
親などの生計を維持している人以外は、原則として高額な死亡保障は不要ですが、病気やケガで入院した場合に備えて医療保険には加入した方がよいでしょう。
(2) 家族形成期(30歳代)
① 世帯主の保険設計
子どもが小さく、「死亡に伴うリスク」が最も大きい時期です。必要保障額も最も大きくなりますが、同時に、子どもの教育費用や住宅費も負担となる時期なので無駄がなく保険料負担の少ない保険設計が必要になります。まずは勤務先にグループ保険があるかどうか確認しましょう。その他、不足分は共済や収入保障保険、(逓減)定期付終身保険、アカウント型保険(利率変動型積立終身保険)などで準備します。生前給付保険も必要かもしれません。
② 配偶者の保険設計
妻が会社を退職して専業主婦になった場合でも、「お母さんには収入がないから保険は不要」ではありません。お母さんに万一のことがあったときには、医療費の他に、ベビーシッターや家政婦さんを雇わないといけないなど、家事育児費用がかかる可能性があります。また、夫婦共働きの場合には、それに見合った妻の死亡保障保険が必要になります。
(3) 家族成熟期(40歳代)
① 世帯主の保険設計
依然として責任の重い時期ですが、子供の成長に伴い必要保障額は減少していきます。しかし、生活習慣病の罹患率が高まるので、入院特約や医療保険の増額など医療保障をさらに充実させることと、生前給付保険への加入が必要となります。老後資金の準備も考え始めた方がよいでしょう。
② 配偶者の保険設計
前記の30代同様に、家事育児労働評価分の死亡保障が必要です。また、持家が夫婦共有名義だけれど妻が団信に加入していないケースがもしあれば、その対策も必要です。
(4) 家族円熟期(50歳代)
子どもが独立し、経済的責任は減少しますが、すべての人に「長生きに伴うリスク」があります。それに加えて一定以上の財産がある人には「相続税支払リスク」が生じます。相続税=お金持ちの税金、だと思っている人も多いと思いますが、少し前に改正があり、免税点がぐっと引き下げられました。家族構成にもよりますが、都内に持家があるレベルの人は要注意かもしれません。相続税リスクについては、一般的に終身保険で準備します。
また、介護への備えとして民間介護保険への加入も検討します。
(5) 中高年の独身者
ここまで人生の流れで説明してきましたが、急に「中高年の独身者」が出てきました。わたしも夫が先に亡くなればこのカテゴリーに入ることになりますね。平均寿命からするとその可能性はかなり高いです。
扶養家族がない場合は、若年独身者と同様に多額の死亡保障は不要ですが、老後保障、医療保障、介護保障の準備の必要性が高くなります。個人年金保険や医療保険、生前給付保険などで準備します。

以上、一般的にはこのようになりますが、ライフスタイルが多様化している今日、それぞれの人生の状況や価値観を考慮したうえで設計・選択することが必要だと思います。

2.個人事業主
わたしも含め個人事業主は、サラリーマンに比べて公的保障が薄いことから、一層の自助努力が必要となります。以下、保障種類ごとのポイントです。
(1) 死亡保障
① 子どもの独立前
万一の場合の公的保障は、遺族基礎年金(一定年齢までの子がある場合)のみとなります。また、銀行から事業資金の借入をしている場合も多いので、必要保障額の目安としては、先にふれた遺族の生活不足額と子供の教育・結婚援助資金、葬儀費用・予備費に借入金を加えた額になります。
遺族補償準備には共済や定期保険、定期付終身保険、利率変動型積立終身保険(アカウント型保険)などが活用できます。事業拡大による事業保障資金準備には逓定期保険、借入金返済準備には逓定期保険などが活用できます。
妻が夫とともに事業に従事している場合でも、世帯主の死亡による収入減など事業への影響は大きいので、保障が不足しないよう考慮する必要があります。
② 子どもの独立後
一定の条件を満たしている場合に、国民年金から寡婦年金が支給されます(60-65歳までの5年間)。寡婦年金は、夫の老齢基礎年金の受給見込額の4分の3で、65歳以降は妻の老齢基礎年金が支給になります。貯蓄その他を充当しても不足する分は、夫の生命保険などで準備する必要があります。
(2) 老後保障
夫婦2人の老後については、65歳から老齢基礎年金が、保険料納付済期間に応じて(40年で満額)支給されます。生活費不足額は、国民年金基金、小規模企業共済、個人型確定拠出年金(401k)などへの加入を検討するほか、個人年金保険などで準備する必要があります。
この点、詳しくは「リタイアメントプランニング」の章でふれます。
(3) 医療保障
個人事業主が加入する国民健康保険においても高額医療費制度はありますが、一方で一般的に傷病手当金*は実施されていません。したがって、家族全員が医療保険へ加入する必要性が高くなります。
また、原則として労働者災害補償保険(労災)の適用もありませんので、就業不能時の補償として就業不能保険や所得補償保険などへの加入も検討します。
* 傷病手当金とは、病気やケガで会社を休んで、会社から報酬を受けることができなくなってから4日目以降支給されるものです。

以上、「ライフステージ別の保険設計」でした。次回は「保障見直しのポイント」と生命保険の最後「法人の人的リスクマネジメント」です。

※画像と本文は関係ありません。

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