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3/19(土)社説

 イランとサウジアラビアが中国の仲介により外交関係の正常化に合意した。長年、イスラム教シーア派を国教とするイランと、スンニ派が多数派を占めるサウジアラビアはライバル関係にあった。7年前、サウジアラビアがシーア派の宗教指導者を処刑したことをきっかけに両国は断交し、中東全体が不安定化する要因となっていた。
 今回の合意をきっかけに、イエメン内戦が終息に向かい、暗礁に乗り上げているイラン核合意が修復へ動き出すかが注目されている。特筆すべきは、中東外交で目立った存在ではなかった中国が重要な橋渡し役を果たしたことである。一方で浮き彫りとなったのは米国の影響力低下である。米国が中国との競争に重点を置き中東との関与を減らしたことや、ロシアのウクライナ侵攻による対米不信が背景にあると見られている。石油輸入の半分を中東に依存する中国にとって、有力な産油国である両国との関係正常化は、資源確保の観点から国益に直結する。また、中国にとっては、米主導の秩序に対抗するために新興・途上国を味方につける戦略においても重要な意味を持つ。
 今後の中東の持続的安定のためには、米国の役割が依然として重要である。米中には競争意識を持ち込まず協力を模索する姿勢が求められる。日本には中東の構造変化に直面する状況の中での外交戦略が問われる。

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